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2-37・・・放棄

先ほどのスキンシップ?から数分、もしかしたら数十秒〜10分経っているかもしれない、彼女達の母国語で何か言われていたけれど、あまり耳に入って来なかった。

顔を見ると笑顔だったから喜んでくれたのだろうけど。

マイナスだらけの評価に、ちょっとだけ上方修正が加えられたと思いたい、総合はまだマイナスと思うけど。


落ち着いたところで昼食となった。

和風のものが食べたいという事なのでお寿司の店に、もちろん回転する方ね。

3人とも皿が廻っているのが珍しいらしく、はしゃいでいた。

しばらくすると、西洋の人が珍しい事、見た目が良い事が相乗効果となり周りから視線を集め始めた。

ヴェンダーは気さくに手を振っているんだけど姉妹はうんざりした顔だ。

こういう時は気にしないのが一番なんだが。


昼食が終わり、服等見たいという事でお店回りが始まった。

ペアとなっているため別行動をする訳にもいかず・・・

長い午後が始まる。

ここからは俺ら2人はイエスマンに。

不意打ちに稀に選択問題が振られてくるため、意識集中。

ここら辺は楓先生にダメ出しを食らっているので、慣れたものだけれど相手は別次元の強者である。

最後まで気を抜いてはダメだ!

俺らの集中力見せてやる!


と思っていた時期がありました。

「俺らダメだったな〜」

横で優二が同意している。

女性の相手は無理だな、全く解らんし選択肢多すぎる。

今後も諦めよう、うん、それがいい。

ヴェンダーはベテランらしく、ドヤ顔でエスコート。

楓はまんざらでもない顔だ。

その姉妹も一緒に相手してくれると助かるんだけど。


居心地が悪い状態が1時間程続いた頃、後方が騒がしくなった。

なんだろ?誰か有名な人でも来たのか?

そんな事考えていると、そのうち悲鳴的な声まで聴こえてこっちに人の流れが変わった、それも我先へと。

「楓・優二、なんかあったみたいだ、ガードを」

2人とも素早く3人を壁の方へ移動させて、その前を護るように固める。

「何が起こっているんだ?」

「誰かに聴こうにもみんなそれどころじゃないみたいだし、警備員もまだみたいだしね」

「さすがに今動くとマズイよね」

なんて事を話しながら注意深く観察する。

SPもすぐ近くに来ていると思いたい。

「どうなってるの?」

エレナが聴いてくる。

「ゴメン、今しばらく待ってくれ情報が足りない」

「ちゃんと護ってよね」

強気に語尾を強めながら言うエレナは少し震えている。

エリーサも同様で優二にしがみ付いている。

「もちろんだ、男は女を護るものだからな」


しかし、情報が足りない。

もうそろそろ動きがあるはずだけどな。

しばらくすると人がハケてきて少し見やすくなって来たところ、10数メートルの距離に今回の主役がいた。

通路の真ん中、道でいうとちょうど交差点の真ん中辺りで暴れているのが1人。

2・3階が吹き抜けとなっている場所で、上から何事かと覗き込むお客が多数。

周りの客は取り囲むように様子を見ている。

「何やってんだ?」

呑気につぶやいた次の瞬間、そいつがこちらに向いた。

そこには小さい娘の首を腕で締め付けて離さない男が。

すぐ近くで母親らしき人が泣きながら助けを求めているが、近付けない状態。

ポケットに何を入れているか判らないからだ。

ここで楓が気付いた。

「あの娘、さっき一緒に写真を撮った女の子だ。

助けなきゃ・・・」

フラフラと前に歩き出す。

「ダメだ!」

俺と優二が制止する。

「でも!あんな小さな子が・・・・」

いつもの楓らしくない、動揺しているのだろうか?それとも・・・


「ちょっと!貴方達は私達の護衛なんだから!」

「そうよ!どこの娘か判らない他人の事なんてほっときなさいよ」

エレナ・エリーサ姉妹が当たり前のごとく非難して来た。

ヴェンダーは様子見のようで静観中。

楓は任務という仕事を理解しているため反論出来ない。

護衛は護衛、目の前に困っている人がいるからって手を差し伸べている間に死角から刺客に襲われました、じゃ、本末顛倒である。

「剣真、優二もそう思うでしょ?

どこの馬の骨かわからない娘よりも、私たちの方が高貴なんだからね!」

「当然よね、だからあの娘は怪我しても運が悪いって事」

貴族ってのはこういうものなのだろうか、ちょっと悲しくそして冷めていった。


俺と優二はうなずき合い決意し護衛対象の3人に向き合う。

そして、懐より手の平に収まるカプセルを握りつぶした。

すると、ソフトボールくらいの風船となり空へ飛んで行った。

護衛の講習にて、任務続行不可能・放棄・その他緊急事態になった場合に使えと言われていた行為である。

これ以降はSPへ任務移行となるのだ。

『なっ!何をしてるの?

せっかくの高額バイトを放棄するつもり?

赤の他人なのに?!』

興奮し過ぎて母国語に戻っているのに気付いていない。

だけど、雰囲気で何を言っているか、は優二でも何とか理解できると思う。

俺と優二は直立不動となり敬礼する。

「俺たちは護衛以前に日本人であります。

困っている人を助けられる可能性があるのに、無視は出来ません、俺の両親でも同じ事したはずです」

「でも、あんた達は信用を無くすのよ?理解してるの?」

それに対しては優二が答える。

「惚れた女の為ならこのくらいの事なんて大したことじゃ無いから」

そう言っている顔は笑顔であった。


その後、SPと入れ替わった事で護衛任務が終了。

残った楓にこの後の接待を任せて、その場を離れる前にエレナ・エリーサ姉妹に向き合う。

『今日は下手なエスコートでごめんなさい。

でも、日本人が俺たちみたいなエスコート下手な奴ばかりじゃないって事は解って欲しいです。

もう会う事は無いと思うけど、日本人を嫌いにならないで欲しいです』

それからヴェンダーと向き合い

『こんな事になってゴメン、君とは良き友達になれると思ってたけど。

講義楽しかった』

そう言って優二と共に通り魔の方に向かって行った。


3人は剣真が自分達の言葉を理解している事に気づくのは数分後の事だった。



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