2-32・・・テスト
初めての日・・・ではなく、初能力発動から一夜明け、母さんから冷やかしを受けて耐えた。
何とか宿題を完了させ、午後より出かける。
今日は楓達と待ち合わせをしているのだ。
優二に知美を会わせる日でもある。
学校の近くのモールに行くと既に2人が待っていた。
「数日ぶり〜」
軽く挨拶をする。
楓は既に知美にロックオンし捕捉中。
優二は初めて会う知美に緊張しながらも挨拶をしている。
知美はそれどころじゃなく、ちゃんと挨拶は出来ていないが。
「あんな可愛い娘、よく見つけたな。
ほぼ100%好みだろ?」
「父さんの知り合いの娘さんなんだ、仕事の関係上一緒に住めなくなって数年預かることになった。
そんなことより、何故俺の好みを知っている?」
「何言ってんだよ、日頃からの言動で推理出来るだろ?
それに、楓にアタックしない時点である程度絞り込める」
なるほど、日頃からヒントを与えていたか・・・
それを差し引いても良く観察してるな。
そろそろ知美を解放してやらなきゃかわいそうだな。
楓達を見ると、知美に引っ付いて離れない状態で固まっていた。
本当は妖精サイズになって欲しいんだろうけど。
「はいはい、そこら辺で離してやってくれ、知美が窒息状態だぞ」
真正面から抱きついているので、顔が胸の辺りに埋まってしまってジタバタしているのだ。
「ごめんなさい!思わず抱きしめちゃった。
本当に小ちゃくて可愛いわね〜」
エネルギー補給後、いつもの楓に戻ってくれた。
「ねえ、夏休み補習も受けずに何やってんの?」
「特には何も、宿題終わらせて、道場行ってぶらぶらとしてる」
楓は呆れ顔だ。
「バイト探さないの?」
「探したんだけど、スタート遅れちゃってさ、もう無かったというオチなんだ」
聴いていた2人は更に呆れ顔。
「まだ探せばあると思うけどな、人気がある職種はもう無いと思うけど」
「ああ、そこはいいんだ。
何というか職人っぽい仕事が良かったんだけどさ、夏休み終わっても土日バイト出来る所あったらなぁって考えてたから」
「そりゃ探しても無いな・・・」
「楓の親父さんにバイトの伝手があるらしいから、その連絡を待っているんだよ、今」
そういう訳だから焦らずのんびりしているという事を説明しておいた。
バイト一回するだけで潤うからな、全く依頼無いってことはないだろう・・・多分。
最後に笑うのは俺だよ、ふふふ。
「剣真さん、顔がなっちゃいけない表情になってますよ」
知美からの指摘で我にかえる。
いかんいかん、気を引き締めないと。
それからダブルデートと称して4人で街中をぶらぶらと。
楓は知美と歩きたがっていたが、それじゃ意味ねえ〜って事で男女ペアに戻した。
何が楽しくて男同士で歩かにゃならんのだ、そこは優二も同意見らしく抗議の声を上げた為、回避出来たというわけだ。
といっても4人固まっているから、厳密に言うとペアと言えるかは微妙だけど。
「優二はどう?」
楓にそれとなく聴いてみた。
「どうとは?」
「どのくらい差が埋まったかという事だけど」
「う〜ん、そうねぇ狼くらいにはなったと思う」
「そうか・・・」
楓の素直な評価に、安心したというか寂しいというかちょっと複雑な感情になってしまった。
「どうしたの?ちょっと嫉妬した?」
それに対して俺は無言で微笑んだだけだった。
ショッピングしながら軽く買い食いしながら歩いているうち、ちょうど公園に差し掛かった。
日陰もあり、長椅子もある場所だったのでちょっと休憩することに。
しばらく雑談しているとテンプレな展開が。
チャラそうな4人組が近づいて来たのだ。
はぁ〜〜、思わずため息が出た。
「そこの彼氏〜〜、可愛い娘連れてんじゃんか?
俺たちも混ぜてくれよ〜」
「男は邪魔だろ?
女の娘だけでいいだろ、おいそこの彼氏達どっか行ってくれね〜か?
帰りは俺たちが送って行ってやっから!」
残りの2人はニヤニヤ笑っているだけだ。
俺と優二はため息をつきながら、どう対処しようかと思っていた所、4人組が動いた。
楓の腕を1人の男が掴んで引き寄せたのだ。
いつもなら相手はそのまま投げられて地面に叩きつけられる筈なのだが、楓は掴まれたままだ。
当人が一番驚いているようでちょっと焦っているのが解る。
俺は優二に目配せしながら適当なポジションに付こうとすると先回りされてしまった。
このままでは知美がマズい、楓は・・・優二に任せよう。
1対2の状態になってしまったが落ち着け!俺!
「俺たちの彼女なんですよね〜、遠慮してもらえません?お兄さん方」
「お前達高校生だろ?ガキが粋がるんじゃね〜よ。
俺達の方が金も持ってるし、色んな遊び知ってるんだぜ?」
全く聴く耳持ってなさそうだ。
「じゃあ・・・仕方ないっすね〜」
この一言で戦いが始まった。
俺のパンチと相手のパンチが交差する。
相手の方が一瞬だが早くヒットし、俺の身体がバランスを崩す。
そのまま右からパンチが飛んでくると同時に、視界に知美が乱暴に連れ去られようとするのが見えた。
その瞬間、何かギヤのようなものがシフトチェンジしたような感覚になり、思わず左足で相手の鳩尾へ蹴り込む。
明らかに間に合わないはずだったが、何故か俺の方が先に届いて相手を戦闘不能と出来た。
そのまま知美に襲いかかっている男に、空拳を繰り出した所、何故か吹き飛んでいった。
普段、10センチ程しか範囲が無い気功が届いたのだ。
「えっ?」
繰り出した本人が一番驚いている所に、外野から声が響いた。
「そこまで!」
その場にいた全員時が止まったように硬直した。