2-28・・・バイト
今は知美と帰路についている。
あれから楓が中々知美を離してくれなくて困った。
これから知美とは一緒に通学するから、いつでも会えると説得し何とか解放。
あいつあんなに可愛いモノ好きだったんだなと改めて思った、女の娘なんだから当たり前か。
強いイメージしかなかったから新鮮だった。
「これである程度は自由に動けますね、休みの日くらいは可視化OKですよね?」
何か期待を込めて問いかけてくる。
監視役だけじゃ退屈なのだろうか、常時待機で黙って無いといけないからかな。
「小っちゃい方が楽なんじゃないのか?
今みたいに歩かなくてもいいんだぞ?
それに念話は出来るんだし」
これに知美はすかさず反論する。
「一緒に歩きたいんですよ!
それに、デートみたいな事も経験無いんで雰囲気を味わいたいし・・・」
・・・その上目遣いやめて。
「うーん、そういう事ならいいけど、そんなに楽しくないと思うぞ?」
「雰囲気ですって!同じ年頃の男の子と歩くなんて今まで無かったですから」
そういう事ならと了承した。
俺も異性と歩くのは楓くらいしかいないし、新鮮かもな。
明後日には終業式だからそのあとは自由行動になる。
進学はしないから補習等は受けないつもりだ。
あとは・・・バイトの事忘れてた・・・今から探しても・・・無理か。
ダメ元で検索してみよう。
夏休みに入って数日後、意外なところからバイトの話が来た。
補習科目を選択していないのは3人で俺だけだったから、暇つぶしと鍛錬を兼ねて昼間から道場へ行った時の事。
ユウヤオジさんがいて声を掛けて来た。
「おう、剣真、休みになったのに鍛錬か?」
「バイト探すの遅れちゃって・・・無職なだけ」
「そうか、バイトしてないのか。
それならバイト紹介してやるが、やってみるか?
お前向きなのがあるんだよ」
地獄に仏って訳じゃないけど、助かった。
即答で飛び付こうと思ったけど、内容を聴かないとダメだろって思い直し、一呼吸置いて返事をする。
「おじさん、どんなバイト?」
「ああ、内容を言わないとな。
ズバリ、護衛だ!」
「・・・えっ?」
「いや、だから護衛。
お偉いさんが会議等で福岡に来日するんだよ、家族も連れてくるVIPもいてな、数日滞在するからその間に観光等するからその付き添いをして欲しいんだ。
バイト代意外と出るぞ?SP相当の任務だからな、時給900円とかのレベルじゃないぞ?」
この仕事は相当美味しいんだぞ、という顔で勧誘してくる。
そりゃ時給がいいのは有難いけどさ、大丈夫か?俺なんかで。
そういう懸念を言うと大丈夫だと言われた。
なんでも最初の襲撃を防いでくれればいいらしい、近くに護衛がいるからと。
「それじゃ俺がいる意味ないじゃん?」
「頼みたいのはお前と歳が近い若者なんだよ、歳が近けりゃ会話合わせやすいし、日本に来てまで目の付くところにSPがいたんじゃ羽を伸ばせないだろ?」
なるほど、何となく解る。
「でもそれだと若手の警官いるでしょ?その人達では?」
「夏休みになると10代の若い連中が色々とやらかしてくれるから、人出が足りないんだよ、解るだろ?
それに、お前の方が強いし信用出来るし」
そこまで言われるとやるしかないなっていうか、やる以外に選択肢ないんだけどさ。
「それで俺1人で護衛?相手は何人?」
「それがな、まだ決まって無いんだ。
1人で来日なら護衛は無しだけどな、直前まで人数とスケジュールが不明なんだ。
だからフリーの人間じゃ無いと頼めない」
それで俺なのか、楓と優二だと補修があるしバイトもしてるからな。
「それなら了解。
正直バイト探すの遅れちゃってどうしようかと思ってたから助かります、おじさん」
「助かるよ、県の方には話通しておくから仕事が出来たら連絡するからな。
楽しみにしとけよ?1ヶ月働くより稼ぎがいいからな」
冗談混じりに言いながら手続きの為に事務所に戻って行った。
あれは多分冗談じゃないんだろうな、そう思いながら帰ることにし、着替えを済ませた。
帰りの電車の中で思った事。
世の中諦めなければいい事あるんだな、と。
そんな事を知美と話しながら帰路に着いた。
帰ってバイトのことを話すと両親から応援された。
これで親公認になったから堂々と働けるぞ!
早く任務依頼来ないかな〜。