2-26・・・セカンドコンタクト
朝起きたら知美はベッドにいなかった。
昨日の事全部夢だった?と思ったけどデラックスハウスが部屋の隅にあるから現実なのだろう。
覗き込むが不在。
そのうち戻ってくるだろうと下に降りてリビングへ。
「おはよう」
「「おはよう」」
「おはようございます」
「えっ?」
思わず二度見してしまった。
その先にはキッチンに母さんと並んで立っている知美が。
「えっと何やってんのかな」
「朝食の準備ですけど?」
お茶を差し出しながら普通に手伝っている。
しかし問題はそこじゃ無いんだ、格好がおかしいんだ。
「一つ聴くけど、その格好は何?」
突っ込むところはまだあるんだが、とりあえず服装から。
「制服ですけれど、おかしいですか?」
「どこから持ってきたんだ?その服?」
最初言われている意味が判らなかったようだけど、言ってなかったのを思い出したようで慌てて弁明し始めた。
「私たち見たものを具現化出来るんです。
服とか身に付けるものとかは大体可能です。
材質までは無理ですけど、もちろん在るものを身につけたりするのも出来ますよ」
そう言いながらその場で回転して見せびらかす。
似合ってるけど、顔や声には出さない。
「それは判った、理解した。
じゃあもう一つ聴くけど、なんで制服なんだ?
まるで今から登校するみたいじゃないか」
「えっ?登校しますよ?だって私がいないと異能力使えないじゃないですか」
・・・・・・・
忘れてたわ、夏休み気分で学校のことすっかり抜けてた。
「じゃあ行くか」
「はい、行きましょう。
私学校行くの初めてなんですよ、楽しみです」
そう言いながら妖精サイズになり肩に乗ってきた。
「不可視状態でいてくれよ?
普通いない生物なんだからな、バレたら大パニックだぞ。
絶対にトチるなよ?」
何回も言い含めて玄関を出た。
駅の改札口を抜ける時
『これが改札機ですか〜初めて通り抜けました』
「うわっ!」
周りからなんか見られてる、恥ずかしい・・・
「なんだ今の?」
独り言のように小さく喋る。
もちろん、周りには知っている奴もいない。
『私ですよ、念波で喋りかけてます。
剣真さんも意識を集中させれば念話出来ますよ』
マジか!なんかテンション上がるわ!
ちょっと試してみよう。
『知美?聴こえるか』
返事は無い、意識が足りないのか?
何回か喋り掛けるも音沙汰無し。
「ちょっと難しいなぁ、中々通じない」
『コツ掴めれば簡単になりますから頑張りましょう』
そうだな、そのうち通じるだろう。
電車を待ってたら優二がやってきた。
「おはよう」
「おはよう」
肩に変なのが乗っかりっ放しだったのでちょっとドキドキしてたけど、気付いていないようだ。
本当に見えないんだな、ステルス機能すごい。
待っている間夏休みの予定とか話し時間を潰す。
知美は退屈そうだったけどしばらく我慢してもらおう。
電車に揺られ、千早駅へ。
「2人ともおはよう」
「「おはよう」」
楓が入ってきてこちらに向いた瞬間、一瞬だが動きが止まった。
その後は普通に会話をするが、時々肩の方を見ている。
気のせいと思ったんでそのまま学校までたわいもない会話を続けた。
学校が終わった後、優二はバイトの面接とかで先に帰った。
いつものファストフード店へ。
買ってテーブルに座ると同時に楓が話しかけて来た。
「ねぇ、何か言うことない?」
言ってる意味が判らないので
「いや特に無いが?」
「本当に?」
「本当に」
・・・・・・
・・・・・・
するとジッと見つめながら近づいてきた。
なになに?怖いんですけど?
「それじゃさ?それは何?」
右肩を指差す。
一瞬ドキッとしたけど、落ち着いて対応する。
「あ〜、最近疲れてんだよ」
「へぇ、疲れてんのね〜」
そう言いながら後ろへ廻り、両肩を揉み出す。
知美はすでにリュックのポケットに退避中。
「これで疲れは取れる?」
思いっきり揉まれた。
「イッテェ〜!!もうちょっと優しくして」
悶える俺と優しく?肩をもみほぐす女の娘の絵は、他人から見るとリア充に見える事だろうが、完全な修羅場だった。
「で?」
「で?と言われましても・・・」
『知美〜不可視化出来てないじゃん!』
『いえ、不可視状態になってますよ。
というよりあの人に通じて無いんです!
あっそう言えば念話通じてますよ、良かったこれでいつでも話せますね〜』
『そう言えばそうだな、良かったよ。
これで独り言言う痛い奴と思われなくなって助かるわ!
ってそうじゃねえよ!』
「あの〜何か見えてます?」
「・・・なんか小さい動く妖精が見えてる。
ついでに言うと学校の制服着てる」
ピンポイントで正解だった。
「え〜っと何で見えてんの?」
「何でだと思う?」
なんか誤魔化せない雰囲気になっている。
不可視状態なのに楓には見えている、しかし他の人には見えていないようだ。
「これは・・・楓の・・・」
「私の?」
「とっておきの魔法・・じゃ・・ないか・・・な・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「すんません、見えてる理由・・・教えて下さい・・・」
耐えられず完全降伏した。