2-18・・・ミスコン編
ゴールデンウィークも終わり、中間試験も何とか耐えて夏休みまで後1ヶ月強になった。
期末試験も控えているけれど、その後に何故かミスコンがあるらしい。
ミスコンと言っても男女問わずのイベント。
男女平等と謳われて半世紀、片方の開催だけだと、差別だ!と声を荒げる人達が増えてきた為、男女共にするのが定番となっているようだ。
容姿で決めつけるのは差別じゃ無いのか?と突っ込みたくなるが、都合の悪い事には目を瞑るものだと割り切るしかないらしい。
御都合主義だねぇ、イベント役員の連中、いやこの場合全員となるのだろうか、良い性格してるよ。
ミス・イケメンコンテストと言っても、水着とかあるわけではなく、あくまでも高校のイベントである。
体育館のステージ上でのパフォーマンスくらいはやってもいいようだ。
だからやりたい人は何してもいいという感じなのだが、流石に水着で出る勇気がある兵はいない。
だが壇上での晒しはあるようで、制服と私服2回でのアピール(直立不動でも可)は必須らしい。
学年別順位と総合順位もあるようで、結局見た目良ければOK という事だ。
俺は周りのクラスメイトがイベントで盛り上がっているのを横目に、夏休みのバイト探しをしていた。
毎日じゃなくても、週4日8時間くらい働けばいい稼ぎになるだろうと考えて、職種によっては学校が始まっても土日に働くことが出来るやつを探しながら慎重にスマホを見ている。
「何真剣に見てるんだ?」
平君が横から覗き込む。
「夏休みのバイトいいのが無いかなって思ってさ」
「それは良いんだけどさ、ミスコン興味無いのか?」
「?いや、あまり?」
平君は意外そうな顔をしている。
「いやいや、そんな事言う以前に川田君も出れるんじゃない?」
その言葉に俺は顔を横に振って拒絶の意思表示をする。
「俺なんかよりイケメンはいっぱいいるだろ?
このクラスにもいるじゃんか」
教室を見渡しながら否定した。
「そうかい?まぁ、自薦・他薦問わず参加者は結構いる様だから、今からだと枠は無いかもね」
「そんなにいるのか!
みんなすごいな〜、どんだけ自信あるん?」
うちのクラスからも出る奴いるだろうから、応援しないとな。
そんな事考えながら調べ物に意識を戻した。
次の日の放課後、道場に行く前のファストフードにて。
「剣真、イケコン推薦枠だからね」
「なに?いけこんって??」
思わず聴き返す。
「何言ってんのよ!イケメンコンテストに決まってるじゃない!」
「ぶっふふぅ!何で俺が!」
ちょうど飲んでいたジュースを思わず吐き出しながら非難する。
「だって、出場者が異性を1人選出しないといけないからだけど?」
「なんだそれ!知らないぞ?」
「コンテストの約定というか定義に書いてあるんだって、ほら」
そう言いながら書いてある箇所を見せつけられた。
一、出場者は異性を一名指名してコンテストに出す事。
「・・・・・・」
勝手に推薦してお近づきになるチャンスもあるよ!ってノリか?
「ねっ?書いてあるでしょ?」
わざわざ色ペンでボーダーラインを引いてるから、見えないとは言えない。
「・・・・あっ、そうだ!優二が出ればいいじゃん」
そう言いながら優二の方を見ると
顔を全力で振っていた、横に。
「最初に指名したんだけどねぇ、あんな感じで全力で拒否しちゃって」
「そりゃそうだよ!俺なんかが出たらブーイングだよ!
剣真が出てくれた方が100倍いいよ!」
なぜそんなことになるんだよ、俺だって嫌なんだけど。
「それならクラスの男にお願いしたら?いるだろ?イケメン」
そう言うと楓はじっと目を閉じ、しばらく考え・・・
「無理、シミュレーションしてみたらなんか後でマズくなりそう」
その言葉を聴いて仕方なく、というか諦めてOKした。
リアルすぎるわ!
出場者が多いっていう裏にはこういう事情があったのか。
女生徒ならある程度集まるかもしれないけど男子はねぇ、確かに集まらないよな。
女の娘から誘われたら、嬉しくなって出てみようかなって思うよな、確かに。
俺は嫌だったけど。
しかし、これにはオチがあり、約定には
一、該当者がいない場合にはこの限りではない。
と最後の方に書かれていた。
それから出場者がやる内容を聴き、途中まで準備を手伝ってもらえる様になった。
それくらいはやってあげるからって言うけど・・・当然だよな?それ。
2週間後の期末試験の後、1週間後の開催までに服とか決めとかなきゃいけない。
試験もあるってのに・・・これが終わらんと夏休みが来ねえ~
バイトとかゆっくり探したかったんだけど、仕方ない。
それから道場へうっぷん晴らしに行くのだった。