2-10・・・剣真の葛藤③
次の日、休み時間に楓ちゃんへラインで連絡した。
幼馴染には気兼ねなく連絡出来るため、フランクな文章となる。
返事はすぐに帰ってきた、≪OKだよ~≫と。
相変わらずみたいだな、しかし父さんから聴いた感じだと相当精神にきていると思うんだが。
見習うところ多々ありそうだし、いろいろ聴いてみることにしよう。
あれからみんなとコミュニケーション取ろうとしたんだけれど・・・なかなか言葉が続かない。
挨拶にちょっと毛が生えたくらいか。
みんなはそれでいいと言ってくれている、いい奴らだ。
そして数日経った。
休日、父さんにショッピングモールへ連れてきてもらった。
楓ちゃんも両親と一緒らしいけど、お互い夫婦の時間を楽しむらしく3組それぞれ別行動らしい。
夕方また駐車場に集合という適当なスケジュールだ。
「楓ちゃん久しぶり」
「剣真君も久しぶりだね~」
歳はお互い14だけれど、やはり私服となると向こうが大人に見える。
大人に混ざって仕事を手伝っているためか余計にね。
何気ない会話をしながら歩き、久しぶりの交流を楽しむ。
さすがに中学生のカップル?にちょっかいかける輩はいないため、場は暖められた。
そこで今日の議題の一つである話をぶち込むことにする。
「あのさ、楓ちゃん。
ちょっと聴きたいことあるんだけどいいかな?」
「どうしたの?改まって?」
「いや、楓ちゃんしか相談というか・・・相談?できないことなんだよ」
楓は少し顔が赤くなっている、緊張してるんだろうか?
「何かな?お姉さんに話してごらん?」
なんか言葉遣いが上からなのはどうかと思うが、相談に乗ってもらうんだから仕方ないか。
「笑わずに聴いてほしいんだけど・・・俺って・・・その・・・イケ・・メ・ンなのか?
同世代から見て」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
しばらくマジマジと顔を覗き込まれた後、一言。
「もしかして自覚無かったの?その容姿で?鏡毎日見てるでしょ?」
「見てるけど、自分の顔は毎日みてるから何も感じなかった。
これが普通なんだと」
「おじさんとおばさんは何も・・・・いや、そうか・・・そうだよね。
そういう風に人を見ない人達だった」
いつもの2人の行動・言動から納得する楓。
「で?なんでいきなりそう思ったの?」
ちょっと溜息交じりに聴かれた。
「先週さ、同じクラスの女子生徒にイケメンだよって言われてさ、最初はただのお世辞と思って友達にこんなこと言われたって冗談交じりに言ったら、楓ちゃんみたいに自覚無かったのかって」
「言われた娘に聴き直せばいいじゃない?」
「言えないよ!俺イケメンだよな?って冗談でも」
顔を横に振って無理!ってゼスチャーをした。
「じゃあ、なんで私に聴くの?」
「だって楓ちゃんくらいだよ、気軽に話せる娘。
他の娘はほとんど話したことないし!」
楓は、このイケメン野郎は~~と心で愚痴っていた。
ある疑問をぶつける。
「そっちのクラスの娘、かわいいの?」
「えっ?そうだねぇ・・・」
しばらく考えてから
「楓ちゃんの方がかわいいよ、客観的に見て。
みんなとは挨拶くらいだから容姿だけの判断になっちゃうけど」
それを聴いて楓は更に顔が火照ってしまった。
それを誤魔化すようにまくし立てる。
「一番かわいい娘にはしゃべれるのに普通の娘には声を掛けられないってどういうこと?
ちょっとは緊張しなさいよ!」
「いや、だって幼馴染でしょ?一緒に風呂とか入った仲じゃない?
性格も判ってるし」
はぁ~こんな奴だった、思い出したよ。
「はいはい、解った解った。
剣真君は十分イケメンだよ?その確認でいいの?」
「ああ、それだけじゃないんだ。
どうやったら自然に話できるかなって思って・・・」
「そこまで私に聴く?それってさ、目の前に付き合っている娘がいるのに、別の娘と知り合いたいからいい方法教えてよって言っているのと同じなんだけど?」
楓はちょっと呆れていたが、悪気が無いのは解っているためそう強く言えず、注意にとどめた。
それから楓は1時間程かけ異性への会話のレクチャーを行った。
何気に楓の方も剣真へには好意はあったのだが、あまりにも近すぎたために姉弟の感覚が強く、これが恋心とは気づかないでいた。
ついでにプリクラを撮ってこの話は終わった。
こういうのも付き合うよ~っていう女性徒へのアピール用として。
楓としては無意識に≪この男は私が唾を付けてますよ~≫との意思表示の思いがあったのかも知れない。
後日、手帳や携帯に貼ってある写真を見られ、お互いの学校間で紹介しろとのやり取りがあり、対応に追われてしまい、面倒になってこの娘と付き合ってるからと言ったところ、逆に興味を持たれてしまい粘着が増えてしまった。
もちろん、楓・優二には内緒だ。
剣真側としてはコミュニケーション能力アップ、楓としては言い寄って来る男子除けになったので、結果としては良かったのだけれど。
あとは気になっていた楓の仕事を少しばかり聴けた。
異能力を持っている彼女なりの大人びた生き方に敬意を持ちつつ、これからの自分の生き方の指針の決意を固めるための参考に出来た。
まだまだ俺は子供だなと再認識しただけだったが、幼馴染にいつか追いつき、肩を並べられればいいなと考えていた。
そのためにはまだまだ勉強、先は長い。
夕方近くになり、いろいろ相談に乗ってもらいお礼を言うと
「次は私の相談に乗ってもらえればいいよ」
そんな言葉を返され大人だな~と感じた。
俺でよければ是非との返事をしそのまま駐車場へ。
お互いの家族に別れの挨拶を済まし帰路に就く。
明日から実践だな。
そう考えながら窓の外を眺めていた。