2-8・・・剣真の葛藤
楓の能力開花後、数年経った。
公になっていないものの、非公式に警察等に協力している幼馴染に対して少し疎遠になりつつある剣真。
よく相談に乗ってくれていた3人のお姉さん達も昨年結婚してしまい、ちょっと浮いた状態に。
大人の女性からの癒しは最高だったんだけど、彼氏・・・旦那さんに悪いという感情は常識的に持ち合わせているため自分から連絡出来ないでいる。
そんな思春期真っ只中の剣真としては、何となく煮え切らない感情の中、悶々と過ごす日々。
学校の悪友と馬鹿やって青春を謳歌しているのも事実なのだが、やはり異性との繋がりも欲しているのだろう。
当人はそこのところは疎く、いや、疎いため悶々としているのだが、それが判っていない。
そこのところは父親がそれとなく教えるものなのだろうが、悲しいかなそんな勝ち組の青春を送っていない者に判るはずもなく・・・放置状態だった。
ある日、剣真は父親に相談した。
「あのさ父さん、ちょっと相談なんだけど」
「どうした?改まって?
こづかいが足りなくなったか?」
「そんなんじゃないよ!
あのさ、僕と楓ちゃんの差ってなんなんだろうかなと思ってさ」
「ん?異能力の事を言っているのか?」
「うん、僕には何でそんな能力が無いのかなって」
剣真は羨ましいのだろう。
心底残念な表情を浮かべている。
というかそんな先天性な能力が欲しかったのかな。
「じゃあ、どんな能力が欲しかったんだ?」
「そうだなぁ、未来が見えるとか?」
「それを持っていたらどうするつもりだったんだ?」
「そりゃ危険を回避するのに役立つでしょ?」
「それだけか?」
剣真はそうだと答える。
我が息子ながら残念だと思ってしまった。
その程度の認識しか無い事に。
それは親である自分のせいである為、今のうちに修正しておかないと最低な大人になってしまう。
それを避ける為話を進める。
「お前は楓の気持ちを考えた事あるか?」
「いや、無いけど」
「そうか、じゃあもし同じ能力を持っていたらどんな生活になっていたと思う?」
「そりゃ、未来視した後担当の人に連絡して裏から情報を廻して解決したら感謝してもらって・・・
謙遜しながら心の中ではドヤ顔かな?」
思った通りの厨二病発症だな、中2なだけに。
「あまり人に言うことじゃない事だったから黙っていたけど、未来視の中には猟奇殺人事件とかグシャグシャの案件等あったんだぞ?それがいきなり頭に入って来るんだ。
飯とかの時は最悪だぞ?」
剣真はそれを聴いてちょっと引いている。
そこまで酷いビジョンもあるとは思っていなかったのだろう。
「そ、そうなの?」
「そうだ、母親のサクラより強力な能力なんで、小学校高学年まで封印してたんだぞ?
これから一生付いてくるんだ、それでも欲しいか?
名誉・報酬よりも辛い事の方が大きいと思うぞ?
追加で言えば・・・例えばその能力を知った友人の態度とか」
「・・・・楓ちゃんはどうしてあんなに普通なのかな?」
「そりゃサクラが心のケアをしてるからだろ?
サクラだって昔、相当な差別を受けていたんだから」
「どうやって耐えていたのかな?」
「そりゃもちろんユウヤが護っていたからだろ?」
「あっ・・・そうか・・・」
感じるところがあったのだろう、それから学校の事等悩み相談を受けて終わった。
少しは考えてくれるといいんだが。
次の日、剣真は休み時間に黄昏ていた。
たまたま悪友達がトイレに行っているのと、10分程の休みだけなのでそのまま椅子に座っているだけだが。
そんなところに女生徒が声を掛けてきた。
「剣真君、今日はおとなしいんだね、いつもは数人で騒いでいるのに」
「??・・あ~、たまたまみんなトイレに行ってるからだよ。
授業の間の短い空き時間だし、昼休みにはまたみんなで駄弁るつもりだけど?」
そんな話を一言二言してるとまた数人現れてきた、女生徒が。
「そうなんだ~~~剣真君ってさ、いつも男子達と喋ってるよね?
女の子に友達とか・・・興味は無いの?」
一人の女生徒がぶっちゃけた質問をぶつけてきた。
他の女生徒も興味があるのか耳を傾けている。
「えっ?そりゃあるけど・・・なに話していいのか解んないしなぁ。
幼馴染くらいしか仲いい娘いないし、イケメンには敵わないし・・・」
「「「「・・・・・・」」」」
「ぷっっっ、何言ってんの?」
一人の女生徒の言葉でみんな笑い始めた。
「えっ?何何??なんかおかしい事言った?」
まずい、これでまた異性から疎遠になるかも?
そう逡巡していると意外な事を指摘された。
「剣真君、かなりのイケメンだよ?」
「・・・・・えっ?・・・・」
同時に始業のチャイムが鳴り響いた。
その後教師がすぐに教室に入ってきた為、先程の言葉の追求が出来ず、授業に集中出来ない地獄を味わった。
幸い、次は昼食及び昼休みとなる為時間はある。
ただ、今まで気軽に話した事があるのは楓くらいな為どうやって声を掛けるか?それも問題なのであった。
そして、考えがまとまらない状態で終業のチャイムが鳴り、ミッションを遂行しなければならなくなったのである。