2-7・・・楓、覚醒⑤
その日の夕方、ユウヤとサクラは悩んでいた。
娘にどう話そうかと。
そして話し合った結果、そのまま言う事にしたのだった。
夕食後、3人でテーブルを挟み対面。
「楓、あのな、職場体験での映像の事なんだけどな。
あれってさ、あの時居た人達みんな見えてなかったんだよ」
「みんな見えてなかったの?パパとママも?」
楓は確認するように聞き返す。
「そう、ママも見えてなかったの。
そして昨日・・・というか今日になるのかな。
00時過ぎに楓が言った通りの事が起こったのよ、この意味解判る?」
楓はしばらく考えて・・・
「うん、何となく理解出来る、昔にも似たような事言ってたような気がするんだ。
夢見てたと思ってたんだけど・・・やっぱりそうじゃ無かったんだね」
「「「・・・・」」」
「それで私どうすれいいの?
もしかして何処かの機関に連れて行かれるとかじゃ無いよね?」
冗談なのか本気なのか判らない言葉が飛び出したのでユウヤが否定する。
「そんな事あるわけ無いだろ?
もしそうなったとしても必ず護ってみせるさ。
しかしな・・・その発想、漫画の読みすぎだろ!どこ情報だ?」
そう言いながら楓を抱き寄せた。
「え・・・・っと川田の爺ちゃんから・・だけど・・・」
ユウヤはそのまま硬直してしまった。
後に続く言葉が見つからなかったためだ。
その沈黙を破ってサクラが話しかけた。
「ごめんね楓、普通の娘として育って欲しかったんだけどこんな事になっちゃって」
「何でママが謝るの?」
楓は不思議そうに問う。
サクラは覚悟を決めて話し出した。
「ママはもう引退しちゃったけど、現役の時の仕事何やってたか知ってる?」
もちろん楓は知らない、というか知っている人間が少ないため誰からも教えられていない為
「ううん、知らない。
署内で事務的な事やってたんじゃないの?」
「うーん、半分は正解かな。
ママはねぇ、最初の頃はパパと要人の護衛をしてたの。
判るかな?要人」
「もう!私ももう上級生だよ?そのくらい判るよ!
偉い人でしょ?」
「そう、その人達の家族護衛、と言っても公務の間に一緒に日本に付いてきた子供達の観光案内だけどね。
これでも重要な仕事だったのよ?時々変な人に絡まれたりするからね」
「相当優秀だったんだね、さすが私の両親!」
嬉しそうに感想を述べている。
「でもさ、20前後の若手にこの仕事が出来ると思う?」
「出来るんでしょ?だってやってたんだから」
当然だと言うように返答する。
「各国の政府がSPよりも私たちに頼ったのは、若い者同士の方が気軽に接する事が出来るというメリットともう一つあるのよ」
楓は黙って聴いている。
「ママにはね、予知能力があったの」
「!!!そうなの??!!」
「そう、楓の能力はママからの遺伝となるわね。
実は5年前にすでに発動していたのだけど、封印してもらってたのよ、幼過ぎて能力に振り回されると思ったから。
ごめんね、今まで黙ってて。
楓が迷惑と思うなら、封印出来る人を探すけど、どうする?」
楓はしばらく考え思い出していた。
昔の記憶の中にかすかに残る夢みたいな出来事を。
思い出せるのは人の眼だった。
あの冷たい眼・奇異を見る眼だ。
幼かった分よく判らなかったけれど、今は解る。
あれは異物を見る眼。
それを今からまた体験して耐えられるの?私?
10分ほどしてふとある事に気が付いてしまった。
「そういえばママはどうやって克服してたの?」
不意に聴かれてサクラは同様したが、少し考えて返答した。
「それはね、パパが護ってくれてたからよ。
もっともそれに気付いたのは後の方だけどね」
笑いながら答えた。
「そうだったなぁ、フォローするのも大変だった。
利用されてるのに気付かないんだからさ」
懐かしい思い出のように語る2人、それを見て楓は決心した。
「私、このままでいい。
その代わり、私の能力をちゃんと教えてね、先輩?」
そう言われて2人とも苦笑すると同時に、成長しているのだなぁと感じていた。
「判った、その代わりちゃんと制御しろよ?
お前なら大丈夫だと思うけど」
そう言って今判っている事を教えていった。