2-6・・・楓、覚醒④
「犯人確保出来ました」
すでに無線で報告はしている・・・というか署の4階の窓から見えるから、目視でも確認出来るので報告の必要は無いのだが、報告する。
「そうか・・・御苦労だった」
班長の顔は信じられないのと当然の結果というどっちとも取れない表情をしていた。
その様子を見ながら松下は質問をぶつける。
「班長、今回の情報は誰からですかい?」
「・・・・」
「「「・・・・」」」
「何故そう思う?」
「情報が早すぎますよ、3日前くらいから判ってたでしょ?
我々へ降りてくるのが早すぎる」
「・・・そうか、時間調整には気を付けていたんだがな。
でもすまない、まだ言えない。
個人情報を開示するのは相手の許可をもらってからだ」
「・・・そうですか。
やはりサクラさんじゃ無いのか・・・
ここからは俺の独り言なのでスルーを。
確か3日くらい前に職場体験で小学生の娘さんが来てたな。
シークレットな部分も見学してたような気がするなぁ、まあ、見ても理解出来ないような装置とかだから、詳しく説明しなければ問題無いと思うけど。
・・・確かその娘さん・・・サクラさんの子供だったような」
「・・・」
「・・・その内情報を回してくださいね、班長」
そう言って部屋から出ようとした時、1人の人物が入ってきた。
「その必要はありません」
ユウヤだった。
今日の捜査に加わっていたのだ。
「その必要は無いです、今回の情報はサクラではありません」
「では誰なのか教えてくれるのか?」
「・・・・俺とサクラの娘の楓です」
松下はしばらくの沈黙の後
「・・・・証拠はあるのか?」
「当時、あのモニター室にいたスタッフが証人です。
数名いましたが、確定情報じゃ無かったんで箝口令を敷いてもらっていました」
班長に目をやると黙って頷いている。
最初から何となく気付いていたとはいえ、こんなにあっさりと暴露されてはこれ以上言うことは無い。
「そうか、それでこれからどうするつもりだ?」
その言葉にユウヤは訝しげに問いで返す。
「その前に俺の言っている事を信用するんですか?
嘘を言っている可能性もあるのに」
「俺たちは人を疑うのが仕事だ。
その分、仲間の事は信頼している。
その仲間がそう言っているならそうなのだろう。
それでいいか?」
当然のように言い放った。
「解りました、ありがとうございます。
それで今後ですが、今の所は娘の判断に任せるつもりですが・・・出来れば普通の子供として友達と遊んだりして欲しい、というのが本音です」
「そりゃそうだ、親としては当然だな安心したよ。
まぁ、今回は助かったよ、感謝している」
そう言いながら松下達は敬礼し出て行った。
「それでどうするつもりだ?
いくらなんでもまだ小学生だろ」
香川班長は問う。
「来年はもう6年生です。
十分考えられる歳ですし、制御可能と思います」
「また封印してもらったらどうだ?
せめて15になるまで」
「いえ、すでに施術出来る人は引退して普通の生活しておりますので無理ですね。
それに5年前に比べれば十分精神的に耐えられますよ。
だってサクラの娘ですから」
笑ってユウヤは答えるので香川はそれ以上何も言えなかった。
覚悟が出来ているのならそれでいいが・・・
大丈夫か?
後はあの2人に任せるしか無いんだが。
「判った、でもちゃんと話し合えよ?」
そう言ってそれぞれの後始末をしに離れた。