2-4・・・楓、覚醒②
「楓ちゃん、何を言っているの?」
「何って・・・あのテレビにこの写真の男の人が写って若い女の人を殴っているよ?
ドラマの回想シーンみたいに。
あれ?でもおかしいな、いろんな角度から同じシーンが繰り返されているよ?
これ何のドラマかな、でもこれチョット酷いね」
「「「・・・・・」」」
「どうしたの?みんな?
あれっ?なんか懐かしい感じが・・・」
そう言って楓は既視感に疑問をもって悩んでいる。
何とも言えない感じなのだろう。
そこまで出かかっているのに、思い出せないあの何とも言えない煮え切らない苛立ちさみたいな。
「なあサクラ、もしかして?」
「うん、そうだね。
あれから5年くらい経つし、そうなんだろうね」
「「・・・・・」」
覚悟を決める時期なのだろう、楓ももう理解出来る年頃になっていると思う。
そう考えながらサクラを見ると同じ考えなのだろう、頷いている。
俺は覚悟を決めた。
「なぁ、楓?、あれに映っているのはこの写真の男に間違いはないか?」
「??うん、そうだよ?間違い無いよ、みんな見えてないの?」
不思議そうに返事してくる。
「ああ、すまない。みんなチョット徹夜続きで疲れ眼なんだ」
「ふ〜〜ん、そうなんだ?
パパもそうなの?」
心配そうに問い掛けて来る娘に対し、チョット罪悪感を感じながら話を続ける。
「そうなんだ、ちなみに映っている場所とか時間とか判るかな?細かい所が見えなくてさ、みんな」
そう言いながら周りを見渡し、口裏合わせろよ!のオーラを出す。
それに対し成り行きを見守っている同僚が首肯。
「そうだねぇ・・・チョット待って。
え〜っとね・・・あ〜〜そこの公園だよ、確か窓から見えるところ」
そう言いながら廊下に出て100m程先に見える公園を指す。
「・・・そ・そうなのかい?
日時と時間とか判る?」
「チョット待って・・・公園の時計があった。
00:10分かな、日付は・・・3日後を指してるね。
あれ?何で3日後?あれ?」
ここまで調べたところで疲れてしまったのか、グッタリしている。
ここまで調べてくれたら後は警察の仕事だ。
慌ただしくその場にいた警察官が動き始めた。
楓は医務室に連れて行った。
「こちら外回り班です、確かに時計がありますね。
西暦付きの表示で電波時計だと思いますから正確な情報だと思います」
「それじゃ道路から死角になりそうな位置も調べておいてくれ、配置等考えないとな」
「了解です」
「班長、どうしますか?」
そう問われた香川は一瞬理解出来なかったが、直ぐに意味を察した。
「一つ聴くが、楓ちゃんの能力は今回が初めてか?」
「・・・・」
「2人共に想定外の表情だったからな。
そこのところを聴きたいだけだ、もちろん機密事項として扱わらせてもらうが、どうなんだ?」
「・・・5年前にすでに発動していました。
まだ幼かった為、封印をお願いしてそれから今日まではなにも・・・」
「今日いきなりか・・・
偶然なのか必然なのかは判らんが・・・この情報を信じよう。
お前達の娘だもんな」
そう言って全体に指示を出していた。
会議室に捜査員が集められた後、ミーティングの冒頭で、
「今回の事件で新たな情報があった。
3日後の深夜に事件が発生する可能性がある。
後で詳細は詰めるが、今日明日と事件が起こる可能性もあるので引き続き捜査をお願いする。
後3日踏ん張ってくれ、以上だ」
俺はサクラに楓を頼み仕事に戻った。
少し休んだら大丈夫だろう。
しかし・・・あれから5年か、人になってこんなに時間の流れが速いと感じたのは初めてだな。
同時に歳を取る事の意味が何となく判ったような気がする。
とにかく今は事件解決が優先か、もしかしたら起こらない可能性もあるが、本当に予言通りになったら・・・覚悟を決めないとな。
そう考えながら聴き込み捜査に戻って行った。