追記⑨・・・ 行楽後の宴会
宴会は普通だった・・・最初のうちは。
酒が入って若い女子がいると弾けてしまう男はどこでもいるものである。
おまけに全員浴衣であり、温泉上がりの相乗効果も加わり、日頃の30%以上増しに見えてしまう。
スキーウェアー着ている女子が可愛く見えてしまうのと一緒であろう。
ザクとは違うのだよ!と思わず口走ろうとしたけど、同じ人間だった。
強いて言えば武装を換装したってところか。
今回参加しているメンバーは120人弱程。
3工場合同だからそんなに多くは無い、だって工場は稼働してるし。
女性陣は40人くらいかな?若手が多い。
こりゃ独身野郎が喜ぶよな。
時間が経つにつれ、酔っ払う輩がぼちぼちと出てきた。
絡まれ防止の為だろうか、3人娘は俺の周りに座り女子トークを繰り広げている。
クリスは剣真が起きてしまったのであやしに外へ出ている。
俺は酒飲めないんでお酌とか不要だし、嫁が側にいるし安全杯と思ったんだろうか、更に数人集まってきた。
基本コミュ障なので居心地悪い。
そのうち、後輩・部下・若手がお酌に来たけど丁寧に断った。
呑めないの知ってるはずなのになぁ、目的は別のところにあるのは見え見えだ。
「課長、独り占めしてないで紹介してくださいよ〜」
勇気ある若手社員の1人が先陣を切ってきた。
おお〜、チャレンジャーだな〜と思いながら娘達の方を見ると・・・気になるんだろうなぁ、顔に出てるよ、、、
異性には興味はあるんだろう、ただパワープレイで押し切られると怖いから積極的にいけないのかな?
「別に独り占めしてる訳じゃないんだが・・・」
そう言いながら紹介してみた・・・といっても同じ工場だから話すきっかけを作っただけだけど。
いつもの3人娘はすでに優良?物件がいるから当たり障りのない会話で逃げて、その他の娘達はフリーらしく、ちょっと攻めの姿勢だった。
そのせめぎ合いを横目で見ながら、若いっていいなぁと思ったりしていた。
更に酔っ払って突っ掛かって来る兵が数名。
「課長!ずるいですよ。
こんなに可愛い娘達と呑んで!
俺達にも廻してくださいよ!」
別に独り占めしてる訳でもなく、お酌してもらって呑んでる訳でもないんだがなぁ。
宴会場は下克上だからそれはいいとして、人を物みたいに言うのはちょっと違うだろう。
「あのなぁ、日頃からもうちょっと紳士に振る舞わないからこう言う時に娘達が近寄ってくれないんだぞ?
お前達は若いし見た目は良いのにこの状態になっているのはそういう事なんじゃないか?」
そう言いながら席を替わってやった。
酔った勢いでの突っかかりだったんだろう、いざ席を譲られると・・・チャラさで何とかしようとしたみたいで逆に引かれていた。それ逆効果じゃね〜か?
「ちょっと待ってくれ、今の無しでお願い」
そう娘達に言いながら野郎どもを少し離れた場所に集めて作戦会議。
「だから〜!背伸びすんなよ!
いつもの素の部分を出せってば!
無理しても結局後で疲れるのは自分だぞ?
それでダメなら縁が無かったと諦めな。
ほら、先陣を切った奴を見てみろよ。
1人の娘といい感じにトークしてるだろ?見習え」
そんな事をレクチャーして席へ戻る。
「いや〜ごめんな?みんな可愛いから、ちょっと良いところ見せようとして暴走しちゃってさ。
若い者同士でちょっと交流してやってくれない?
みんな彼氏候補欲しいでしょ?」
その言葉に否定はしていないので多分興味はあるのだろう。
俺はちょっと席を離れて様子を見ることにした。
そんなやり取りをしているとクリスが剣真と一緒に戻って来た。
「なに?この合コン状態は?」
ざっと10名くらいの男女が固まって交流をしている。
「いや、若人の交流を応援しただけだけど?」
「・・・ふ~ん・・・それで結城さん達は何故加わらないの?」
何故か側にいた3人娘に質問が投げかけられた。
「「「いや別に・・・」」」
多分、と言うか気になるのがいるんだろう、直ぐ側に。
クリスもそれは百も承知なのでそれ以上の詮索はしない。
「ちょっとお腹減っちゃった、剣真をしばらくお願い」
子供を任せて中断していた食事をし始めた。
子供は寝てるから放置状態でOK だったんだけど、3人娘が面倒を見てくれると言うのでお言葉に甘えさせてもらった。
更に1時間程経過した頃になると工場間の交流が始まっていた。
もうすでに俺の手元を離れ、若人同士で盛り上がってしまった先程のグループが。
「やれば出来るじゃないか・・・」
そう呟きながらクリスの方に目をやると・・・数人からナンパされてるし。
3人娘も一緒に・・・
剣真は寝てるからそのまま放置で良いんだけど、相手は他工場の奴かな?
拒絶されてるのにしつこく言い寄っている。
余程自信があるんだろう、顔にそう書いてある。
俺イケメンだし、断るなんてありえないっしょ!って。
いや〜、最高なアホだわ、チンパンか!
そろそろ助け舟出さないと火傷するかな、ナンパ野郎が。
そう思って声を掛けようと近づくと、
「しつこいわねぇ!私達ちゃんと彼氏いるし!
というか私結婚してるし、チャラいのは嫌いなんだけど?」
・・・他人のふりしたくなって明後日の方向を向いてしまった、仕方ない・・・仕方ないんだ!
そう言い訳していると横から腕を引っ張られた。
「この人!この人が旦那だから!」
それを聴いたイケメン君は、何言ってんの?って言いたげな表情で
「そんな訳無いっしょ?冗談上手いね〜
ねぇ、君達?」
同意を求められた彼女達は目を合わせない・・・
というか、離れてこちら寄りに移動。
「・・・・えっ?、マジで?」
「だからさっきから本当の事言ってるでしょうが。
みんな彼氏いるの!」
イケメン君は呆然としてこちらを見た。
思わず肯定するために頷く。
轟沈だった・・・
このやり取りを聴いていた若手達もちょっとショックだったようで、シーンとなっている。
なんとなく分かるよ、今日参加した娘達の中で上位を占めてるから。
そのままお開きの時間となり、お近づきになろうと思っていた輩の野望は潰えたのだった・・・
そのまま4人を持ち帰りしたような形になってしまい、明日以降の噂が怖い。
さてここからが本番だ。
今日は寝れるかな?