追記⑦・・・三人娘、吉井知美のその後
「つかさ君、今日はデートする?」
「姉さん、いいのか?レベルアップの方は」
「だってさ、病院とかダメなんでしょ?
やりすぎると逆に病院に迷惑掛かるって・・・」
「そうなんだが・・・」
私が異能力を貰ってしばらく経ったころ、レベルアップをしようと軽い気持ちで病院に行き、受付に来ていた病人を片っ端から触りまくり治療して廻ったことがあったんだよね、1週間連続で。
みんな軽症だったから2~4日で完治したんだけど、その病院が評判になって患者さんが5倍以上になっちゃって・・・どうしようもない状態に。
ニュースにも取り上げられて、さすがに焦っちゃった。
そんなわけで、これ以上一つの地域で異能力を発揮させるのは禁止に。
なんとかレベルアップ分は稼げたから、今はレベル2だけど。
それからは出先でたまたま出くわす病人とかの治療とか、知り合い等の治療を細々と行ってる。
それからしばらく温~い活動になっちゃった・・・
「姉さん、そういえばさ、彼氏とか作らないの?」
「・・・なんで?」
「デートするなら彼氏との方がいいんじゃないか?
俺は不可視化&妖精状態で付いていけばいいんだし、趣味とリア充と両方ゲット出来るじゃんか」
「つかさ君はそれでいいの?
もし彼氏出来たら黙って付いて来るだけになっちゃうよ、辛くない?」
そう言うとつかさはしばらく黙ってしまった。
「今はつかさ君がいれば十分だよ。
それとも・・・私の相手じゃいや?」
その問いにつかさは首を思いっきり横に振った。
「そんな・・・嫌だなんで・・・俺としては願ったり叶ったりというか・・・もったいないなって思ってさ。
姉さんなら選び放題だろ?」
「そんなことないよ?今までモテたことないのに」
・・・もしかして姉さんは天然なのか?
会社での立ち位置というか、声かけてくる男達の顔を見て解んないのかな。
あれは仕事の同僚の顔じゃないぞ、明らかに声をかける為に用事を作ってるのがバレバレなんだけどな。
あの川田氏がみんなの前で異性のこと聴いた意味も解んないということか。
まあ、野郎共もへたればっかりだから積極的にこの3人組に声を掛けて来ないのも悪いんだが・・・
「それならしばらくは俺が相手になるよ。
姉さんのこと好きだからな!」
「うん、引退するまでよろしくね」
・・・それ、何年一人でいるつもりだよ、姉さんやっぱり天然だな。
「じゃあ出かけますか。
異能力使うにも外に行かないとどうしようもないし」
「そうだね、じゃあ着替えるから待ってて」
「了解」
そう言いながら隣の部屋でしばらく待ちながら考え事をする。
俺にも脈があるのかな?他の二人はいい感じになってるみたいだしチャンスがあるのか?
このまま人間になったとして、普通に付き合えるのだろうか?
生活基盤等しっかりしないといけないしな、生きていくには仕事してお金を稼がないと。
妖精の体なら飢えることもないし、マスターたちの庇護の中だから困る事は無いけど・・・う~ん人間になって大丈夫だろうか、ちょっと心配だ。
後でみんなに相談してみようかな・・・生活か・・・先に人間になった仲間はどうしているだろうか。
そう考えていると姉さんが着替え終わったようだ。
「お待たせ~じゃあ行こうか」
・・・・普通に可愛いんだけどなぁ・・・周りの男の見る目が無いのか?
まじまじと見ながらそう感じた。
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ。
どこに行こうか?いつものモール?」
「そうだね~今日は人が多そうだしそうしますか」
そう言いながら車に乗り込む。
もちろん、妖精は免許持ってないから女性が運転になる。
往路の車内ではいつものごとく他愛もない話になってしまうが、それが何となく楽しく感じる二人だった。
モールに着いてウィンドウショッピングでうろうろしながら歩き、昼くらいに軽く昼食を取り午後も平和な時間が流れていた。
「平和だねぇ~、それが一番だと思うけど」
つかさは黙って首肯している。
あまり人の不幸に出くわしたくはないけど、癒し系の異能力をもらったんだからもう少し行使したいな。
人の為にってそんな立派な考えは無いけれどさ。
もう少しつかさ君にアピールしたいと思ってるんだよね。
私的には彼にアピールしているつもりなんだけど、気付いていないのか気が無いのか?解んないんだよね。
みんなに相談してみようかな、進捗も気になるし。
いけないいけない、今はデートを楽しもう。
「ねえ、つかさ君」
「ん?何だい、姉さん」
「これってデートだよね?」
「ああ、そのつもりだけど?」
つかさは不思議そうに返答した。
「それじゃさ、そろそろ姉さんは止めよう?」
「そうだな、これじゃ姉弟だな、なんて呼べばいい?」
「そうだねぇ・・・ともみって呼んでよ」
つかさは一瞬ドキッとした。
その呼び方じゃカップルじゃんか・・・いいのかよ・・・
「呼び捨てって・・・恋人同士の呼び方じゃないか?いいのか?」
「デートしてるんだからそう呼んだ方がいいでしょ?」
吉井は何故か半ギレ状態になっていた。
「・・・解った、じゃあ・・・ともみと呼ばせてもらうよ。
早速だけど、ともみ、後方に座っているあの人具合悪そうなんだけど?」
「えっ?」
そう言いながら振り返ると確かに顔色が悪そうな年配の人が・・・
「軽症かな?つかさ君能力をお願い」
「了解、ともみ、降ろすぞ!」
異能力が降りたのを確認後、気遣うふりしてその老人に話しかけたところ、少し意識がもうろうとしていた為、一度目の治療注入。
「あれ?回復しない?何故だろ?」
「ともみ!何回か撃ち込め!」
「??解った、2回目・・・あれ?、3回目・・・あっ意識が戻った。
おじいさん大丈夫?」
「・・・ああ・・あ・大丈夫だよ・・・ちょっと疲れてたんじゃな、こんなとこで寝ちゃうとは・・・歳には勝てないな・・・お嬢さんありがとうな、起こしてくれて・・・」
そう言いながら立ち上がってお礼を言いながら去って行った。
「・・・ねぇ、さっきの・・・重病だったんじゃない?」
「ああ、多分な、3回撃ち込んで回復だったからそうなるんだろうな。
あの歳だから掛かりつけの病院等あると思うから調子悪くなったら行くと思うけど」
「そうだね、医者でもない私たちがこれ以上突っ込むと逆にまずいよね」
二人で感想を述べ合いながら後ろ姿を見送るのだった。
「よし!あとは1時間程ブラブラして帰りますか!」
「何故に1時間ブラブラ?」
つかさの質問に私は答える。
「つかさ君が私の事を名前で呼んでくれたのが一つの理由。
その記念に手を繋いで歩きたいだけだよ」
顔が赤くなっているのを隠すため明後日の方を向きながら言うのだった。