126 運命は巡る・・・終
川田の孫の兼人とユウヤ達の孫のこはるは、爺さんの葬儀の後の忙しさが一段落し部屋で寛いでいた。
今まで色々な人たちが焼香にやってきて、その対応というか挨拶に駆り出されてやっと解放されたのだった。
すでにもう夜の21:00を廻っていた。
「やっと落ち着いたな。
でもさ、爺ちゃんの葬儀凄かったな、名前は伏せてあったけどあれは国家公務員の名前も混じってたぞ?
昔何やってたんだ?」
「さあ?サクラ祖母ちゃんも母さんも教えてくれないんだよね、そのうち解るからっていって」
「解るからって言ってもな・・・」
他愛もない話をしていると、窓を叩く音が聴こえて来た。
風のが強いからかな、と無視していると更に音が・・・
「ここ・・・2階だよな?」
「う・・・うん・・・泥棒?」
とっさに身構える二人であった。
その少し前、1時間程前の事、1階の部屋のリビングで今後の事が話し合われていた。
「なあ、母さん。一緒に暮らさないか?
父さんも死んじゃって一人でこの家は広いだろ?」
「でもね、この家はお父さんと一緒に住んで来た家だし、仲間達と交流し旅立ちを見送った思い出も詰まってるからねぇ、出て行くには思い出が有り過ぎて決心がね」
一緒に暮らそうと言っている息子に対し、離れるのは辛いというクリス。
そこに割って入ったのがユウヤ達だった。
「俺達が近くにいるし、息子たちも車で10分くらいの所にいるから何かあったら来れる距離だからこのままでいいんじゃないか?
クリス姉さんの気持ちも判るしな」
「う~~ん、叔父さんたちがそこまで言ってくれるのは有難いけど・・・。
それじゃさ、もし病気になったりしたら一緒に暮らすって事でどうだ?母さん」
「そうだね、そうなったら有難く従わせてもらうよ、それでいい?知美さん?」
「もちろんですよ、お義母さん」
元妖精である嫁さんは心配しながらも了承した。
それから形見分け等の片付けをし21:00を過ぎた頃だった。
今日は帰ろうかと、子供たちを呼びに部屋の前に立った時の事。
何か様子がおかしかったので、少し空いている扉から中の様子を伺うと・・・
「う・・・うん・・・泥棒?」
「こはる、ちょっと下がってろ、カーテンを開けるから何かあったら逃げろよ?」
そう言いながらカーテンを勢いよく開けた。
そこには20歳前の男女が・・・というより小人が浮いていた。
「「なっ・・・」」
しばし絶句していたところ、小人が中に入れてくれというゼスチャーをして来た。
しばし考えて、流されるまま窓を開けて受け入れた時、兼人は何故そういう行動に出たか理解自分にも理解出来なかった。
ただ、害はないという何故か根拠の無い自信があっただけだった。
「「おめでとうございま~す、今回選ばれたのは貴方達で~す」」
「「・・・・・・・・」」
「あれっ?私たちの事知らない?」
「知るかっ?!」
「知らないわよっ?!」
「「ええっ~~~伝説の川田氏の血縁者でしょ?」」
「もしかして教えてもらってないのか?」
と男性型小人が訪ねた。
「「だから何を?!」」
「・・・・・知らないならそれでもOK、それじゃ最初から話すけど時間は大丈夫かい?」
空気をちょっとばかり読んでいる小人がそう提案してきた。
「「ちょっとだけなら・・・・」」
「それじゃ我々の目的から話すね、え~っとね・・・・」
ドアの隙間から覗いている元妖精の2人は、そっと扉を閉めて1階へ戻った。
「あれ?子供たちは?」
「フフフッ、今実験体の交渉中だから30待分程ちましょう。
多分、結果は・・・ね」
それを聴いたクリスは思いだしていた。
あの時、初めて旦那に交渉を持ちかけた時の事を。
そして仏壇を見ながら
「あなた、孫たちに権利が廻って来たようです。
あの子たちの事見守ってあげてください」
そう言われた川田の遺影の写真は笑っているように見えたのだった。