124 願いの後・・・
あれから10日過ぎてクリス達が申請をした。
申請後、人への変換の為一度ベースに戻り、最終確認後地上へ戻されるらしい。
変換と同時に俺の異能力生活は終わりを告げる事になるけど、構わない。
今日から新しい生活になるんだから。
ベースに戻って3時間程が経過した後、三人が戻ってきた。
「おかえり」
「「「ただいま」」」
「どうだ?生身の人間になった気分は?」
三人共に自分の体を触り、見まくり・・・
「「「大して変わんない」」」
「そりゃそうだろ」
「マスターから川さんに伝言があるよ」
「なんだろ?」
「『実験体の任務ご苦労様、レベル10になった報酬として、君の遺伝子を持った子孫に今後実験体になる優先順位を付けといた。
タイミングが合えば君の子孫の所に新No107 が行くからよろしく。
もちろん断っても構わない。
それから三人をよろしく頼む』
だそうだよ」
そうか、それは有り難い申し出だな。
「それから、秘密を暴露しない事を条件にこのプロジェクトに参加してもいいらしいよ。
具体的には妖精達の拠り所とか人間になる為の養成とか」
妖精の養成か、洒落が効いてるな。面白そうだからやってみるか。
「でも、どうやって見分けるんだ?
もう見えないんじゃ?」
「大丈夫、見たり聴いたりする能力は残ってるから。
但し、野良妖精だけだけど」
おお〜それでも便利だな、有難い。
「これで伝言は終わりだよ」
「・・・・・」
「・・・・・」
「「「「・・・・・」」」」
「えっと・・・どうしたのかな?」
「ええ~~~っ人間になって来たんだよ?
何か言う事ない?」
訴えかけるように食い下がって来た。
そうか、もう人間か・・・外見がほとんど変わってないから気付かなかった。
ちなにみ、クリスの外観は今まで通りの姿で固定してもらった。
本当のクリスを知っているのは俺だけだ、それでいいと思った。
本当の姿だと、会社に行ったときに誰か判らなくなるのも理由の一つだけど。
あと、歳は20歳でスタートとして戸籍等も矛盾が無いようにしてもらっている。
残りの人生は各々の自己責任ということらしい。
「人間になって俺の所に戻って来てありがとう、みんな。
そして・・・ようこそ人間社会へ」
「「「ありがとう、そしてこれからよろしくお願いします」」」
「ただいま、川さん」
「お帰り、クリス」
しばらく抱き合ったまま、今までの事を思い返していた。
「ユウヤ達はこれからどうするんだ?まだ一緒に暮らすんだろ?」
「うん、しばらく厄介になるよ。
仕事がひと段落したらまた考える、これからの事もあるし」
彼らは上手くやっていけそうなので心配していないけど。
数年以内に独り立ちして結婚するんだろうな・・・・・?・・・・っ!!
俺は思い出したようにクリスの方を見て、深呼吸した。
「あの、クリス?伝えたいことがあるんだが・・・」
「!!っ、えっなにっ?」
「俺ももう50だ、後何年生きれるか分んないけど、それでも付いてきてくれるなら一緒になろう」
ポケットから一つの箱を取り出し差し出した。
クリスはしばらくボーっと小さい箱を見て、それから再稼働した。
「うれしい・・・ありがとう。
不束者ですがよろしくお願いいたします」
そう言いながら左指を差し出した。
俺はその指に指輪をはめて、また抱擁した。
「ありがとう、君と逢えて本当に良かった」
それから、入籍・仕事先への報告等で時間が過ぎて行った。
ユウヤ達にも手伝ってもらい、野良妖精サポートの為の準備等も済ませた。
新たな生活準備もほぼ終わり、元の日常が戻りつつあったある日の事。
「俺達も来月辺りに引っ越そうかと思ってるんだ」
「どこに引っ越すんだ?あてはあるのか?」
「公安の山口さんがマンションを紹介してくれたんだ、これから護衛とかの仕事も増えるしサクラも仕事場ば近い方がいいだろうし。
それに、二人の新婚生活の邪魔しちゃ悪いし」
変なところで気を遣うんだな。
でもそこのところはお互い様だと思うが。
「そうか、目途が立ったんだな。
そろそろサクラと結婚か?」
「うん、もう少し落ち着いたら籍を入れるんでその時は連絡する」
あの時の喧嘩っ早い奴が立派になったもんだ、なんか子供が独り立ちしていく親の気持ちはこんなものなのだろうか。
「うんうん、頑張れよ!辛くなったら連絡して来いよ?二人共」
そう言いながら4人で握手を交わし、これからの未来を語った。
それから・・・長い年月が経過した。