121 急展開と独り立ちと
夕飯食った後片づけてリビングで話し合いのため席に着いた。
「それで、何ヶ月だ?」
サクラを見ながら話しかけた。
「サクラちゃん、大丈夫なの?」
クリスも心配そうに話しかける。
「「えっ?」」
「いやだから、いつ産まれるんだ?サクラ。
お前たちでも出来るんだな、まだ人間にもなってないのに、すごいテクノロジーだ」
「「えっ!・・・いやっ!ちがっ」」
二人とも顔を紅く染めながら否定してきた。
「なんだよ、出来たんじゃないのか?面白くないな、なあクリス?」
「そうだね、せっかく仲人とかしないといけないなと思ってたのに」
緊張の糸が解けたのか、がっかりしたのか正していた姿勢を崩してしまった。
「で?他に大事な話ってあるん?」
他には思いつくことが無い。
「今の仕事は非常勤になっているんだけど、正式に働かないかって言われたんだ、2人共に」
この不景気にそんな話が出るとは、仕事ぶりを評価されたのだろう。
「それはいい話だな、でも戸籍等まだ無いのにどうするんだ?事情を知っている人間は少ないんだろう?」
「なんかね、そういう過去の事を詮索しない部署があるらしいんだ。
そこなら戸籍がなくても国が保証してくれるみたいなんだ」
そこまでしてくれるのか、公安の山口氐が動いてくれたんだろうな。
「それでどんな仕事なんだ?
護衛オンリーなのか?」
「いや、俺はSP みたいな事もやる。
家族だけじゃ無く、主賓も担当になるんだ。
正式雇用だからなこのくらいはやらないと」
「そうか、サクラは?」
「私は家族の護衛にプラスして事務系を。
特異能力を活かすのがメインです」
うん、得意分野で求められているなら俺が反対する理由は無いな。
「そうか、それで就職するのか?」
「いいの?仕事を手伝うって事でここにいるのに」
「ああ、そんな事か。
あと少しなんだから大丈夫だ、そろそろ人間になった時の為の就職活動が必要だったからな、ちょうど良かった」
子供が旅立つ時ってこんな感じなのかな。
「そういえば出勤等どうするんだ?
ここからじゃ遠いだろ?」
「車の免許取らせてくれるって事になってるんだ、多分特殊な講習場で練習して取得となると思う」
着々と生活基盤が出来上がって来ているな、これで人間になれなかったらどうしよう。
「この話受けたとして、いつから正式採用なんだ?」
「運転免許取ってから書類作るって言ってたから2ヶ月くらいかな」
「それじゃそれまでにポイント稼ぎますか。
最近は後輩の指導等であまり稼いで無かったからな」
ここしばらくは若い娘の面倒等あったからゴタゴタしてたけど、そろそろ自分の事に集中しますか。
若い娘との交流が出来て役得だったけど、気持ちを切り替えないとな。
「ここ数ヶ月、護衛とかトラブル解決・仲介とか30件ほどあったんだけどまだ足りない?」
ユウヤのカミングアウトだった。
「そんなにやってんの?
仕事以外は出会い頭なら仕方ないけど、揉め事に無理に突っ込んで行くなよ?2人の生活を楽しまなきゃ」
「うん、そうするよ。
でもあと2ヶ月だし、正式な仕事になる前にもうちょっと稼いどきたいんだ、夢に一歩でも近づいておきたい」
正式採用になると、善意の行動にはならないだろうから今のうちにってことか。
「ありがたいけどプライベートを大事にな」
次の日、公安の山口氐に連絡をしていた。
採用のオファーを受ける為だろう。
これでユウヤも守るべき人が出来たって事だ。
俺にもそんな人が出来るのか?いやいるけど、クリアした後記憶を無くしたり、ドッキリでした〜とか、本気にしてたの?とか言われないだろうな、なんか心配だ。
99%信じてるけど残り1%は終わってみないと判らない。
なにせ事故に遭う・宝くじに当たる等に比べると1,000倍以上当たる可能性は上なのだから。
いやいや、マイナスな事を考えることは止める事にしたはず。
自分を戒め直して今日も仕事へ行かないとな。