115 召喚(2回目)と
精神統一をして一旦店を出て駐車場へ。
人気があるところで変なポーズとか、呪文みたいな言葉言いたくなかったし、異能力の事知られるとマズいしな。
まあ、こんな事他人が見ても痛い人としか映らないとは思うけどね。
「クリス召喚能力の承認よろしく」
「了解、承認下りました、送ります」
「よし、何か久しぶりな感じだな」
今回は吉井さんを始め、結城さんと妖精君達まで見れるように可視化しないとな。
実際どんな感じか見てもらいたいんで。
「それじゃ呼び出すよ、祈っててくれ。
吉井さんに縁有り者よ願わくば我の呼びかけに答えよ。
望みに答えられし場合には、可視化にて顕現せよ!」
召喚の儀式の後、しばらく・・・時間にして1分経ったか経たないかというくらいだった。
失敗かすでにあの世か?と諦めかけた頃、吉井さんの足元になんか現れた。
「「「「えっ?」」」」
それは少しづつ形造られ更に2分程経った後、ブラウン系の色のミニチュアダックスフンドの容姿になった。
その時点で既に吉井さんは涙目というか泣いていて、しゃがみ込んで抱き寄せるようにしている。
実体が無いので触ることが出来ないんでうずくまっていると言ったほうが良いかも知れない。
「何とか成功したか」
「川さんお疲れ様、召喚はもちろん成功すると思ってたけど、吉井さんの思いも強かったんだよ。
まさかあそこまで可視化出来るとは思ってなかったもの」
側にいる結城さんと二人の妖精君たちは、目の前で起こっている現象に驚き、そして放心状態で成り行きを見守っている。
『クリスどう思う?』
『ん、何が』
『顕現化出来てどのくらい居続けられるかな?』
『ん~、どうだろう、川さんが呼び出したなら24時間くらいならいけそうだけど?
もちろん、満足したらそれで成仏しちゃうと思う』
『そうだよなぁ、どうしようかな』
二人で念話を通じてしばらく考えていた。
その間部外者は黙って見ているだけだ。
「あの、課長、ベルが話したいみたいなんですが・・・」
話す?犬が?聞き間違いかな?
「えっ、犬がかい?」
思わず聴き返してしまった、だって犬がだよ?
「はい、犬のベルがです」
「・・・・・・・」
「ものは試しに話してみて下さい、会話というか念話って言った方が判り易いかもです」
そういう事なら・・・
ベルの近くに寄って頭の中で問い掛けてみた。
『えっと、言っている事判るかい?』
『ええ、判るよ。
ありがとう、最後の別れが出来なかったんで、未練が残り成仏出来なかったんだ』
『成仏の概念があるのかい?』
『ええ、魂となった時に』
『それでもう良いのかい?』
『はい、今まで一緒に居てくれた事、優しくしてくれた事感謝の思いを伝えました。
もう諦めていたので、最後に会話まで出来て幸せです』
『どうするんだ?もう行くのか?
24時間までなら滞在出来ると思うけど?』
『それでは夢の中で最後に一緒に散歩してから成仏しようと思います』
『そうか、あの世でも元気でな』
『はい、あなたもお達者で』
そう言って念話を終了した。
「吉井さん、別れは済んだようだけど、今日の夜に夢の中で一緒に散歩してから旅立つって言ってるから、今日はしっかり熟睡しなよ?」
「はい、そのつもりです」
ちょっと涙目になっているけど顔は悲しんでいない。
死を受け入れられたのだろう。
早速帰って寝る準備まで終わらせてたいとの事なので、
ここで別れた。
「ああ、そうだ。ベルがですね、遺品の中から一つ渡して欲しいって言ってたんで、明日何か持ってきますね。
お礼だそうです」
犬に遺品を貰えると思ってなかったんで、ちょっと新鮮。
何でも良いよって言って見送った。
「え〜と、こんな異能力なんだけど・・・」
「「すごい!」」
目を輝かせて興奮している。
「いや、君たちにも同じような異能力あるから!
あとは昇華させれば唯一無二の能力になるから!」
「そうなんですか?私にもすごい力を行使出来ますか?」
出来るよ、レベルアップさせて追加の能力をもらってやってごらんよ、私よりもすごい事になる可能性大だよ」
妖精君と未来を妄想しているような顔をしてる。
今が幸せだよな。
「それじゃ改めて解散」