114 異能力 3人目
最後は吉井さんだ。
次の日にまた同じ喫茶店で話を聴くことにした。
「え〜と、私は単純に癒しの能力を貰いました。
僧侶系の奇跡の力ってやつですね」
癒し単発で来たか、余計なものは無しのようだから意外に強い能力かもな。
「それで制約と誓約は?なんか付けたのかい?」
「はい、癒しの能力の完全版と言うのかな?
生涯10回の全回復能力を発揮できる能力を附帯して貰いました。
死ななければほぼ全回復出来ます、それも瞬時に。
ただ、無くしてしまった部位とかは再生出来ませんが」
10回か・・・少ないのか多いのか判らないけど、思い切った能力をもらったもんだな。
「じゃあその他はどのくらいの回復に?」
「赤チン・軽症(軽・重)・重症(軽・重)の5段階に分けます。
回復させると、軽い順に赤チン(1日)、軽症(2~4日)、重症(5~10日)で治ります。
1日最大5回まで行使可能です」
一点特化させるとそこまでいけるのか、すごいな。
怪我等の具合はどう判断するのかな、妖精君に聴くか〜。
「妖精君、不可視の人間サイズで出てきてくれない?」
数秒で現れた。
「コードネームNo790です、この姿では初めまして」
すごいイケメンだな、こんなのが近くにいるなら幸せか。
そんなこと言ってる場合じゃないな。
「怪我を5段階に分けてるけど基準はあるのかい?」
少し考えて
「絶対的なものはありませんが、実際の程度によって異能力が勝手に判別し治します。
体内の損傷とかは見た目では判りませんから」
そりゃそうか。
「それでは一通り聴いたんで、今更ながら言うけれど悪いことに使うなよ?
妖精君もこの実験体と長く居たいなら助言等してあげてくれ」
みんな頷いている。
「縁があって仲間となったんだから、最低数年は秘密を共有したもの同士仲良くやって行きたいしさ。
困ったことがあったら相談し合えるのも強みだし、その時は遠慮なく助け合いたい。
それでは、検討を祈る、何もなかったら解散」
そう言いながら席を立とうとしたところ、吉井さんから待ったの声が。
「あの、課長、一つお願いがあるんですが」
緊張した、そして悲しげな顔で訴えてきた。
「何か分からない事があったかい?」
「いえ、みんなの異能力は理解したのでいいのですが、それとは別件でお願いが」
なんだろう?ちょっと真面目系?
「実は、実家で犬を飼ってました。
ちょっと前に病気で死んじゃって・・・この能力をもらったのもベル・・・あっ犬の名前ですけど、治すつもりだったんです。
でも一歩間に合わなくて・・・」
そうなのか・・・それで僧侶特化だったんだ。
「それは残念だったね、辛かったと思う」
「いえ、それでですね、課長はある能力を持っていると聴いたのですが?」
「・・・召喚の事かい?」
「はい、それならベルを呼び出してもらえるかと思いまして・・・お願いできますか?」
正直しばらくやってない奴だよな、入院して試しに呼び出したっきりのような・・・
クリスを見ると頷いている、ヤレってことだろう。
「呼び出しは出来るよ、でも正直呼び出しに応じるかどうか判らないけどどうする?」
心配顔で問いかけてくる。
「呼んでも来ないって事ですか?」
「この世に未練?が無ければもうすでにあの世に行っている可能性がある。
まだそこら辺にいれば呼び出すことは可能だけれど、まだ問題がある」
「どんな問題です?」
「私の召喚はゲームに出てくるアンデッドみたいに強制ではないんだ。
あくまで未練があり、最後に別れとか言いたいことがある場合・・・更に言えば会いたいと思っている同士に効果があるんだけど・・・」
ある意味ちょっと意地悪な言い方かもしれないけど、本当に会いたいと思っているのか知りたいんだよな。
ただ、異能力を見てみたいだけでは無いと思うけど。
吉井さんは涙目になって訴えるように言った
「本当に会いたいです、最後に会って別れを言いたい。
看取れなかったのを詫びたい、それだけです」
「・・・解った、ちょっと待ってて準備するから」
緊張しながら精神統一をした。