105 月面計画と・・・
あれから4ヶ月過ぎ、それまで何事もない平穏な日々を過ごしていた。
世間では月面着陸が成功し、裏側まで調査が開始された。
衛星写真と磁場の狂っている場所を集中調査した結果、墜落した隕石が原因だろうとの見解であった。
実験体が映像を見れば基地の存在が明らかなのだが、認識阻害の効果が出ているのだろう。
世間的には地球外生物の発見&痕跡発見!を望んでいたようだが、肩透かしを食らった状態だ。
時間ギリギリまで調査するみたいだが。
調査が済み、月から撤退した後、クリスを通じて通知があった。
今回の協力感謝するという趣旨の御礼口上だった。
こちらとしては約束を守ってくれれば文句ないんだが。
それから1ヶ月過ぎた。
「ああ、もう50歳になるなぁ」
黄昏ていた。
「どうしたの?しちゃいけない顔になってるよ?」
「どこかのアイドルか!」
思わず突っ込んでしまった。
「俺ももう50だなって思ったらさ、なんか人生の7割終わっちゃったなって」
「後悔してるの?」
「反省はするけど後悔は無いな、人に迷惑をかけていない人生だったと思ってるから。
それに今はクリスもいるし満足だし、遅咲きの青春を送っているから楽しいし」
「そうなんだ」
「・・・・でもな、次に繋げていない事だけが申し訳無いと思う、先祖に対してな。
あえて言うならそれだけかな」
ちょっと遠い目になってしまった。
その直後、背中を叩かれた。
「痛っ、何すんだよ!」
「私がいるでしょ?
川さんの子供くらい欲しい分だけ産んであげるわよ!
肉体年齢は20くらい若いでしょ?」
「・・・・・・いいのか?
今出来たとしても20歳になる頃には70超えだぞ?
職も無いかもしれんし、病気になってるかもしれないぞ?
それでも?」
「だって二人っきりじゃ寂しいじゃない、子育てすれば大変だろうけど頑張れるでしょ?」
「それもそうだな、その時はよろしく頼むよ」
早いところレベル10にならないとな。
それから数日が経った頃、また通過儀礼の審査で呼ばれた。
今回は広島の人らしい。
1泊2日で旅行がてら行ってきてくれとの事だったので、快諾した。
ユウヤ達は仕事が入っていたようで留守番だ。
行きがけに、俺たち明日の夕方まで帰って来ないから、との伝言を残し出てきた。
これであの二人の仲が更に良くなればいいかなと思う。
若人よ、青春したまえ!
そんなわけ広島県庁の警察詰所の一室を借り、通過儀礼の審査となった。
今回のレベル5達成者は女性で、いつものごとく財と名誉&玉の輿を条件に交渉。
結果は・・・惨敗だった。
財と玉の輿に目が眩んだんだろう、話の途中で確実にダメだなこれ、と感じるくらいだったから。
いつものごとく、異能力を没収されてお帰り願った。
その後、妖精君に挨拶するために会いに行った所・・・
「あれ?No107か?」
「・・・えっNo103なの?」
「久しぶりだな、最後に会ったのはもう半世紀近く前になるかな?
元気そうだな、そういえばあの時の返事まだ返して無かったな」
クリスはなんか懐かしそうな、そして嬉しそうな顔をしている。
「クリス、昔の知り合いか?」
「えっ・・・う・・うん、ちょっとね」
「何言ってるんだ?お前俺に告白したじゃないか?忘れたのか?」
「・・・覚えてるけど・・・」
なんか気まずそうな雰囲気になってる。
「そういえば、今回任務失敗しちゃったんだよね?
もしかして3回連続?」
「いや、今回で2連続だ、次がリーチって奴」
「そうなの・・・」
ここで横入りした。
「クリス、告白って?」
「あのね・・・昔告白しちゃったんだよね、かっこよくてモテてたんで・・・」
「ふ~ん、なるほどね・・・」
ここでNo103がかぶせてきた。
「さっきからうるさいコイツは誰?」
「ああ、川さん。私の今の監視対象だよ」
えっ、それだけかい!
思わず心の中で突っ込んでしまった。
「ふ~ん、まあいいか。
それで、返事が遅くなったけど、付き合おうぜ」
「・・・・・」
「・・・・・」
「えっ何?誰かともう付き合っているか好きな奴いるのか?」
「・・・・いや、そんなこと無いけど」
ええ~~~クリス何言ってんだ?
思わずフリーズしてしまった。