104 依頼と願い
『もしかしてクリス達を取られるとか?』
クリスが鬼の形相になっている、いかんその顔はしちゃいけない顔だぞ?
『いや、そういう事ではない、ちょっとな、レベルアップ報酬をこちらの言う願いにして欲しいのだよ。
レベル8と9の願いはまだ保留中だろう?』
確かにそうだけど、何させるつもりだろ?
『特に追加の願いが無いから保留中だけど・・・何をしたらいいのですか?』
『先ほど、月面着陸の話があっただろう?そこで裏側を見られると我々の存在がばれてしまう。
そこで、全人類に対して基地を見えなくして欲しい』
『見えなく?どうやって?』
『言い方が悪かったな、何といえばいいか・・・我々の基地を見ても風景と認識させて欲しいのだ』
『例えば、基地等を見てもそこら辺の小石の認識として記憶に映せと?』
『まあ、そんなところだ』
『でも、そんなの各国の国家機関が握りつぶすでしょ?
特にアメリカとかG8とかの国が』
当然な質問だよな。
『50年前、地球人は月に来ただろう?その時の情報が洩れて、未だに宇宙人に遭遇しただの、シークレットな話し合いをして来ただの色んな憶測が飛び交っている。
もちろん、本当の事も含まれているからたちが悪い。
誰かがリークしたり、宇宙飛行士が口を滑らせたりして、ジャーナリスト等が半世紀過ぎても調べているのが現状だ。
もちろん、国家機密期間が潰しているが情報の抹消は無理だ』
『それで今回は最初から調べても何もないんだと刷り込みたいのですか?
たとえ、そこに基地があってもただの土・石の塊としか認識されないように』
『そうだ』
なるほど、何となく判って来た・・・けど。
『そんなの、そちらで認識阻害の処置をすればいいのでは?』
当然の質問をぶつけてみた、それが簡単だろうから。
『実は、直接の干渉は禁止なのだよ。
あくまで我々は監視者という立場なので、出来ないんだ。
それが可能なら最初から苦労はしてない、こちらのルールを破ると我々のグループはこの地から撤退となるんだ、面倒なのだが仕方ない』
あちらもお役所仕事なんだろうか。
『そちらの事情は判りました。
それで、どういう風に願いをいえば言いのですか?』
『人類に向こう30年間、月基地の存在を認識出来ないようにと願ってもらえればいい』
『それをレベル8の報酬とすればいいのですか・・・』
『そうだ、やってもらえるか?』
『その前に質問ですが、それなら私でなくても他の実験体でも良いですよね?』
『それなんだが、全人類となるとレベル1~5までだとレベルが低すぎて資格がないんだ。
かといって今からレベル6~9の実験体を探しても、みんなすでに願いを叶えてしまっている。
君だけなんだよ、資格があってまだ報酬を保留しているのは』
しばらく考えてそれなら仕方ないなと聴き入れる事にした。
ただ、タダでは受けないけど。
『こちらからも一つお願いしてもいいですか?
二つ残っているレベルアップ報酬の一つとして』
『妖精たちを人間にと言うこと以外なら善処しよう』
『次にアジアに派遣される実験体を一人だけ私に選ばさせて頂きたい。
もちろん、その人が断った場合でもやり直しは無しでいい』
『こちらは誰になっても構わないからいいが、それでいいのか?貴重な報酬を使って』
『構わんです、特に欲しいの無いし、レベル10になったらクリス達が人間になれるだろうし』
『・・・解った、次にこのエリアに廻ってきたら連絡しよう』
『それじゃ、交渉成立ですね』
「クリス、レベルアップ8の報酬を願う。
全人類に向こう30年間、月基地の存在を認識出来ないようにプロテクトを掛けてくれ」
「了解、マスターに認証申請します」
『ありがとう、後はこちらで手続きを行って対処をしておく、感謝する』
そう言って通信が切れた。
こちらとしては、先ほどの取引の報酬を反故にしなければ文句はないんだけど。
さて、遅くなったけどさっさと仕事を進めるか。