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作業に取り掛かってからひと月足らずで私の部屋はぬいぐるみだらけになった。

定番のテディベアから懐かしのキャラクターまでその数およそ15体。

足踏みタイプのミシンがあったので思っていたより早いペースで生産できている。


そして何より私がヒマなので作業が捗る捗る!


立体物の型紙を作るスキルは無かったので初めは苦戦した。

そんな時、私の作業に興味を持った奥様から、メイドの中に服飾に明るい人がいると教えて貰ったので、すぐに助けてもらうことに決めた。

紹介されたのはアニタと言う、私より少し年上のベテランメイドだった。


最初はのうちは、作りたいものの形を上手く伝えるのにかなりの苦戦を強いられた。

熊ならこちらの世界でもポピュラーな動物なのでつたわりやすいだろう、とまずはテディベアを作ろうと思い立ち、「熊のぬいぐるみを作りたい」と説明した。

快く引き受けてくれた彼女は、すぐに作業に取り掛かってくれたので、私もウキウキで首に巻くリボンを用意することにした。

行く行くは服も作って、着せ替えできるようにしても面白いかも、と思いついたことをメモしたり想像を膨らませていると、出来上がったのはとても写実的な熊だった。

四つ足でしっかりと自立するその姿は、首にリボンと言うよりは口に鮭でも咥えさせた方が絶対に似合う。

デフォルメの重要性を思い知った瞬間だった。


そこで私はアニタと綿密な作戦会議を行うことにした。そうしてたどり着いたのが、粘土で立体型を作って伝えるやり方だ。


色の指定や顔などの細かい造形は紙に描いて、形は粘土で作り、布は私が選んだ。

そうして仕上がったぬいぐるみの中には、現代日本で親しまれていたキャラクター達の姿もある。


著作権法も世界を越えてまでは機能しない!

人の褌でとる相撲の気持ちいいこと!


そうして次々と作品を生み出して行くうちに、私はアニタとすっかり仲良くなっていた。


「リリー様、私にもひとつ、ぬいぐるみを頂けませんか?」


「もちろん!アニタにはたくさん作ってもらってるから、どれでも好きなものをどうぞ!」


「ありがとうございます!ではこの2代目クマゴロウを…」


そう言って嬉しそうに抱えたのは、スタンダードなテディベアだった。


「ここでぬいぐるみに囲まれて作業をした後に自分の部屋に帰ると、なんだか凄く殺風景に感じまして…。リリー様は子供向けに売り出すつもりだと仰いましたが、老若問わず女性は好きだと思いますよ、このぬいぐるみ。特にクマゴロウシリーズの愛らしさと来たら…!」


同じ型紙でもふわふわの生地で作ったものや柄入りの生地で作ったもの、無地のものなどたくさん作ってある。アニタお気に入りのクマゴロウシリーズは、ド定番のテディベアタイプである。


もう少し種類を作ったら、販売について一度サイラス様に相談してみよう。

店舗が構えられれば1番ありがたいけれど、難しければ行商でも良い。最終的に自分の食い扶持とアニタへの報酬に回せるくらい稼げれば万々歳だ。


「アニタ、次はクマゴロウたちが着れるような服も作りたいんだけど…」


「なんですかそれ!絶対に可愛いに決まってますよ!すぐやりましょう!作りましょう!」


…若干、アニタのキャラが崩れてきているのが気になるが、優秀なパートナーもゲットしたので毎日楽しく過ごしている今日この頃です。

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