#09 僕の願い。
※他キャラ視点です。
※長めです。
「お父様!今日はお仕事おやすみですよね!
僕、この間書道コンクールで入賞して、
今美術館に展示されてるんです。一緒に見に行きませんか?」
「悪いな、海。疲れてるんだ。母さんと行けるか?」
「っ、わかりました。」
お父様はいつもお仕事頑張っているんだし、
おやすみの日くらい休みたいよね。
ーーでも、一緒に行きたかったな。
だめだ、我儘言ったらお父様を困らせちゃう。我慢しなきゃ。
「お父様〜。新しいお洋服が欲しいですわ。」
あ、愛梨、ダメだよ。お父様は疲れてるんだから。
「そうだな。買いに行くか。」
え?さっき、僕にはダメだって……。
「やった〜。ありがとーお父様。」
「お父様!僕も一緒に行ってもいいですか!」
「ああ、いいぞ。」
やった!
「え〜、お兄様も〜?お父様と二人っきりがいいのに。」
「まあまあ、いいじゃないか、一緒に来るぐらい。」
「イヤですわ!お父様は愛梨とお出かけするの!」
ーーまた愛梨の我儘……。
「しょうがない子だな。そうだ、海は美術館に行くっていってたじゃないか。」
「そうですけど、お父様とお出かけしたいんです!」
「まあ。お兄様、我儘はいけませんわよ。」
「お兄ちゃんだろう。母さんと行きなさい。じゃあ愛梨、行くか。」
「わーい。お父様だーいすき。」
ーーあ、待ってお父様!
「では、行ってまいりますね、お兄様。」
愛梨は僕にしか見えないように舌を出していた。
ーー黙れこの我儘め。
抵抗のつもりで睨んだ。
「あら、こわーい。お父様、早く行きましょう?」
「ああ、それじゃあ海、行って来る。」
ーー待ってよ、お父様!
ガ、チャン
僕の思いなど関係なく、扉は閉まり、2人は出ていってしまった。
「ーー行かないでよ、お父様……。」
僕は、妹が嫌いだ。
まだ小さいのに傲慢で、意地が悪く、お父様を独り占めする妹が大っ嫌いだ。
でも、それでも
ーー仲良くできないのかな。
たった一人の妹だ。
「そうですね、いつか、愛梨様も変わられるといいのですが。」
早川さんは優しい。
こうして僕が相談に来ると、いつも一緒に悩んでくれる。
僕が泣いちゃった時も、慰めてくれる。
お母様は厳しいし、基本お父様の言うことにしたがってる。
お父様は愛梨ばかりだし。
そんなだから、早川さんは僕にとって親代わりだった。
「私の方でも、少し愛梨様を甘やかしすぎではないかと旦那様に言ってみます。」
「どうせまたなんだかんだ言って変わんないよ。」
「海様……。」
はあ。
ーーなんか奇跡とかが起きたらいいのにな。
妹が倒れたらしい。
メイドの噂によると、婚約者をみた途端に相手の名前を叫んで倒れたという。
ーー変なの。
まあ、妹が倒れたって心配なんてしないけどね。
あ、でもしばらく寝込むんだったらお父様となにかできる!
「お父様!明日の朝、一緒にトレーニングに行きませんか?」
「トレーニングか、久しぶりだな。じゃあ、一緒に行くか。」
やった!
「ありがとうございます!今から楽しみです!」
愛梨が産まれる前は、お父様は毎日のように
トレーニングルームに行っていた。
それで僕もいつか一緒に行きたいと思ってた。
ーーまあ、愛梨が産まれてからは余裕がなくなったのかしてなかったけど。
それが、明日、できる!
明日が楽しみだ。
「愛梨、もう体は大丈夫なのか?」
「ええ、もうこの通りピンピンしてますわ。お父様。」
ーーえ、これはまさか。
不安になって確認してみた。
「お父様、この後は一緒にトレーニングをしてくださるんですよね。」
「すまないな。今日は、愛梨と隼くんの顔合わせを
改めてしなければいけないんだ。」
「え、そんな、昨日約束してくれたじゃないですか!」
「お兄ちゃんだろう。聞き分けの悪いことを言うな。」
ーーやっぱりダメなのか。
「…はい。」
もっと寝込んでたらよかったのに。
愛梨め。
「お父様!顔合わせなら後ででも十分間に合います。
どうかお兄様と一緒に行ってあげて。」
!?
愛梨が、そんなことを言うなんて。一体何を企んでいるんだ。
なんだか急に大人っぽいこと言ってるし、
え、着替えも?
確かに熱ありそうだ。
今度は怒鳴りだして、え?
…………はっ。
え、なにが起こった?
どうやらトレーニングは一緒に行けるみたいだ。
何が何だかさっぱりだけど、それは嬉しい。
それにしても、今日の愛梨はすごく変だった。
一度ちゃんと話したいと思う。
断られなかったけど、来なかった。
夕食にも来なかったから寝てたらしい。
なんなのか。まあ、断られなかったんだしもう一回いってみよう。
と思ってたんだけど、
「お兄様!昨日はごめんさい!」
ーー妹が、謝った。
「え、あ、うん。いや大丈夫だよ。そんな急ぎの話じゃないから。」
本当に、妹になにが起こったんだろう。
まあなんにしても、今日の夜、話ができる。
この後、妹は嬉しそうにサンドイッチを食べていた。
本当、不思議だ。
また来ないかもって不安だったから帰ってきてすぐ呼んだ。
これで話せる。
「失礼します。」
「来たね、座って。」
お父様を呼ばれないように鍵も一応かけた。
「答えろ、何を企んでる?」
「おっけー。でも素でお兄様って呼ぶのなんか変な感じだから、
海にぃって読んでもいい?」
「!!全然いいよ!」
愛梨はこれが素だといった。
とても信じられない。
ーーでも、愛梨がそういうことにしたいなら、それでいいや。
きっと神様が僕の願いを叶えてくれたんだ。
記憶が戻る前の愛梨はこんな風に思われてましたという感じのお話です!