#08 お兄様からもお呼び出しでした。
※ちょっと短いです。
「失礼します。」
「来たね。座って。」
そう言うとお兄様はドアを閉め、鍵までかけた。
うーん?ナニスルノカナー?
「さて、この部屋は防音だ。誰にも聞かれない。」
そういえばお父様にねだって防音にしてもらってたっけ。
「答えろ。何を企んでる?」
「……え?」
「とぼけるな、最近随分といい子じゃん。
あの"愛梨様"がよくもまあそこまで演技できたものだね。」
「いや、演技って、そんな訳ないじゃん。これ素だわ。」
あ、口調が。
「は?じゃあなに、今までのが演技だったとでも言うつもり?」
「まあ、そうなるの、かな?」
ちょっと違うけど言えないしな。
「いやありえないから。表向きの顔を作るにしても、
自分を悪く見せるなんてないよね?普通。」
まあそうですよね。私もそう思いますー。
「悪く見せるというか、なんかそっちのがお嬢様っぽいじゃんか。」
えーい、もうやけくそだ!!
「え……馬鹿じゃないの?」
「ちょ、馬鹿って、ひど。」
「はぁ?え、じゃあほんっとに演技だったの?」
お?信じた?
「うん。」
「本当に?」
しつこいな。
「ほんとだってば。」
「そう、なの?」
あ、可愛い。
「……じゃあ、これからは僕の前ではそのままでいてくれない?」
「へ?」
「だって、兄弟なんだし、仲良くしたいよ。」
あー、それもそうか。
「おっけー。でも素でお兄様って呼ぶのなんか変な感じだから、
海にぃって呼んでもいい?」
「!!全然いいよ!」
「やった!よろしくね、海にぃ。」
前世では妹しかいなかったから、上が欲しいと思ってたんだよねー。
憧れのにぃ呼びもできるなんてラッキー。
ふあぁあ。
最近色々ありすぎてやけに眠い。
「じゃあ、部屋戻るね。眠いから寝るけど、
夜ご飯の時間になったら起こしてくれる?」
「わかった、おやすみ。」
「ありがと、おやすみー。」
すっかり毒気がぬけた感じだね、海にぃ。
そんなに嬉しいのかー。
まあそれだけ、性格悪い妹が嫌だったんだろうな。
そりゃあんな妹いたら病むわ。
色々考えていたのに、部屋に戻るとやはり疲れていたのか
あっという間に寝てしまった。
「愛梨、入るよ。」
「んー。」
「夜ご飯だよ。」
「もうちょっとだけー。りっちゃんも寝よーよー。」
「ちょっと、愛梨?」
「愛梨って誰ー?」
「愛梨は自分でしょ?」
「へー?」
「そっちこそりっちゃんて誰それ。」
「りっちゃんはりっちゃんでしょー。ほら、一緒に寝よーねー。」
「もう、なんでそんな寝起き悪いの。ほんとにちょっとだけだからね。」
「えへへー。」
「全く、可愛くなっちゃって。本当にずっとこうだったのかなあ。」
「……くー、くー」
「僕、愛梨のこと大っ嫌いだったけど、今の愛梨は好きだよ。
なーんて。さすがに照れくさいな。」
「あら、ふふふ。そっとしておきましょうか。」
ベッドには手を繋いで寝ている兄弟がいた。
なんとも微笑ましくて、つい頰が緩んでしまう。
どうやら次期当主の悩みは解決したようだ。
もう相談されることもなくなるだろう。
「良かったですね、坊っちゃん。」
そう呟くと、静かに部屋を立ち去ったのだった。ーーー
「あーっ!」
翌朝、目を覚ました愛梨の一言。
「また夜ご飯食べ逃した!!」
なんかお兄様腹黒っぽくないな?
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