#18 転落。
"休憩は様子を見て体力のない人に合わせること"って……。
それってさあ。
私のせいで時間内にゴールできないってことも
あるってことじゃん。
まじか。やだなー。
足手まといにだけはなりたくない。
そんなことになったら罪悪感で班の人達に合わせる顔が無くなる。
まあ、頑張ろ。
ハァ、ハァ、ハァ、ハァ
「大丈夫?」
ーー大丈夫じゃないです。もう足がもげそうです。
ふくらはぎも太もももパンッパンだ。
しかしそんな事が言えるはずもなく。
「大、丈夫、です。でも、ちょっと休んでも良いですか?」
「ああ、じゃあ、休憩にしようか。」
やばい、これ思ったよりキッツイな。
というか私体力なさ過ぎだろ。
前世もインドア生活だったけどもうちょっとマシだったぞ。
もう休憩の頻度がかなり多くなってきてる。
最初は比奈ちゃんの方が疲れてるっぽかったのに、
いつの間にか心配されてしまっている。
ぐう、情けない。けど、もーう無理。疲れた。
ーーこれもう完全に足手まといになっちゃってるじゃん。
わかってるんだけど体はあちこちから悲鳴をあげていた。
お手伝いさん達に組み立てられた椅子に殆ど崩れる様にして座る。
ーーああ、足がじわじわする。
私は、休憩が終わってもフラフラだった。
「そっち結構高い崖になってるから気をつけてね。」
「ここ過ぎたら5ポイントの所です。」
5ポイントとなると難易度はちょっと高いらしく
私達は崖の隣の道を歩いていた。
とはいっても普通に歩いていれば安全だ。
道はそこまで細い訳じゃないし、ロープが貼ってある。
ーーなんでこんなことしてんだろう。疲れたな……。
そういえばお手伝いさん達の体力半端なくね?
………今思い返せば、この時私は気が緩んでしまっていた。
疲れで現実逃避し始めていたのだ。
フラフラの上注意散漫の状態で歩いていれば、
こうなったのも当然かもしれない。
「愛梨様、そっちは危ないですよ。」
「え?あっ。」
「あっ!」
転んだ。そして、
ーーへ?落ちてる?
「ぅわあああああああああ!」
誰かの声が聞こえる。
ーーあれ、この声どこかで……あ。
それが自分の声だと気付いた瞬間、意識が遠のいた。ーーーー
崖から転落した少女を横の木から飛び出したリスが追いかける。
その直後、リスは一瞬で人の姿になると手をかざした。
「危なかった。僕が助けなかったらどうなっていたか。
危なっかしい子だなあ。クスクス。
とりあえず、体力つけさせなければいけないな。
でもできるだけ姿は見せたくないし、どうやって伝えようかな……。」
人ならざるその不思議な存在の前には
1人の少女が浮かんでいた。先ほど転落した少女だ。
「あ、そうだ。決めた。」
そう呟き、フワリと飛んでいくと少女の額に手をかざす。
すると指先は光り輝き、やがてそれが収まると手を離した。
「素直に従ってくれると良いけれど。」
最後にそう呟くと、リスの姿に戻りどこかへ去っていった。
それらの言葉を聞く者は、誰もいない。
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