#16 懐かしい思い出。
「お話しませんか?」
「それはいいけれど……何のご用かしら。」
「いえ、ご用というほどでもないですけど、
愛梨サマに前々から興味があったんです。
それで、せっかく同じ班になれたんだし色々訊きたいと思って。」
「まあ、いいですわよ。あ、変な質問は無しで。」
「じゃ、訊きますです。」
ますですって ……。
「1つ目。なぜそんなに口調とかが大人びてるですか?」
「え、うーん、なぜって言われても、よくわからないですわ。
でも、それを言ったらあなたも個性的な言葉遣いですわよ。」
「そうですか。確かに口調なんて人それぞれですしね。
じゃ、2つ目。幼稚部の終わり頃、性格が激変したという噂は本当です?」
げ、なぜそれを。
「顔色変わったですよ?言えないならこちらで推測するから
無理に答えなくても大丈夫です。」
くっ。こいつ中身いくつだ?
「……答えますわ。私、自分の我儘ぶりに少し反省しましたの。
それで、大人になろうと思っただけですわ。」
「……まあいいです。3つ目。婚約者、桐崎 隼との初顔合わせ、
何があったです?」
う、 またきっつい質問を。
「緊張しすぎて倒れてしまっただけですわ。」
「そうですか。倒れたという噂は事実なだったんですね。」
鎌かけだったんかい。
「そ、そうですわね。」
その後も際どい質問は続き、チャイムが鳴るまで続いた。
ーー質問多すぎ。疲れた。精神的に。
早く家に帰りたい。
「んじゃ、今決まった係、あとで先生がプリントにするけど
一応忘れないように書いとけよ。」
「自分と同じ係の人も書いといたほうがいいよー。」
私は比奈ちゃんと5年生の女子の人と3人で保健係になった。
他の係よりも楽そうだったからだ。
大体、地図なんて読めないし。
自分の字に自信もないし。
晴人はルート係になったようだ。
ルート係はどこを狙い、どう回るかを事前に考えておく係だ。
頭の良い晴人にぴったりな係だろう。
ルート係は地図係と基本行動を共にする。
てことは、
ーーまた質問責めってことはない!
それは嬉しい。
しかしそれを抜きにしてもちょっと、いやかなり楽しみになってきた。
早く行きたいなあ。
その夜、海にぃにめちゃくちゃ話した。
どこに行くか。どんなことをするか。何係になったか。
比奈ちゃんと一緒になれたこと。困ったこと。
何より楽しみで仕方ないこと。
その気持ちは寝る時間になっても落ち着かず、
目が冴えてなかなか寝付けなかった。
気分はさながら遠足。
懐かしいなあ。
思えばいつも私は、楽しみなことをお母さんやお父さんに話していた。
りっちゃんにも。
りっちゃんというのは、妹の莉奈のことだ。
今頃どうしてるかなあ。
前世の私は本当に死んだのか、私自身未だによくわかっていないけど
死んでたとしたら、りっちゃんいっぱい泣いただろうな。
りっちゃんは泣き虫だから。
ううん。りっちゃんだけじゃない……お母さんもお父さんも
なんだかんだいつも心配してくれてた。
私親不孝な子供だったよなあ。ごめんね。
思い出し始めたら止まらなくって、
涙が溢れた。
「お母さん、お父さん、りっちゃん、ヒック、みんな……。
会いたいよ、ヒグッ、会いたいよぉ。」
涙は次から次へと流れ落ち、込み上げてくる嗚咽も止めることは出来ず、
私は広い部屋の広いベッドで1人、ただただ泣いた。
そして翌朝。
「愛梨お嬢様!?」
めっちゃ目腫れた。ーーーー
泣きたくなるときってありますよね。
でも後先考えずに泣くと大変なことになるという;
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