ナルシシズム集
1
お前の長い睫毛は天を求めて空を仰ぎ
瞳は自分の中へ吸い込まれたいと願うように見つめ
撫でるように力を抜いて腕を回すと
やっと来たと息を吐くのに
自分の熱がもっと欲しいようで
潰さないように
体の重なる面に力を込めると
お前は頭をうずめて
涙をこぼしはじめて
このままいしになりたい なんて陳腐な言葉を向けて
そんな簡単でいいのか
それで満足か
その言葉で胸がいっぱいになるお前が
愛おしくて
かぜになつたらどうする と聞くと
はなれないでね それだけ帰って来て
柔らかい髪に自分の指を通して頭を支え
首を撫で
手弱女振りな黒い眼差しは
熱に蕩け
どろどろで身の芯を焦がし
心地好さそうに
穏やかな炎の中に身を委ねて
2人だけの世界の火種が消えないように
2
私ね、あなたを夢で見たの
珍しくて意外だった
まあどうせ会えないだろうって諦めてたら
こんな所にいたんだね
夢なんだけどね、
なんだか私には似合わないような
手垢はもうついてるような話
夜の海でね
2人で
砂浜で話してた
その後、音楽を勧められて
あなたのイヤホンで聞いたの
なんだか体の中が浮くように気持ちよくなって
いい曲だと思った
だから 曲名は何 って聞いたの
そしたらカタカナの言葉を言ってた
○○ーションって
調べたら確か
讃えるみたいな意味だった気がするの
でももう思い出せなくて
あなたあの時なんて言ったの?
でもあなたにはわからないか
あの時いたのは
あなたじゃないからね
もしかしたらそんな曲ないのかもしれない
でも、もう調べた気がするの
私を震わす曲とあなたの既視感
独り言だよ
また話してくれてありがとう
もう会えないけど
また会えたらいいね
3
近くにいた時は欲で近くに寄っていて
触れたい衝動もあったから
ごくごく自然に、この醜い気持ちが悟られないように
髪に触れたり 手の甲を指でなぞったりした
別段嫌がられなかったから
嬉しいと感じてしまった
自分1人の混沌とした
感情の入り乱れる電車に揺られ
必死に酔わないようにしてた
でももう十分酔っていた
気付かなくてごめんね
自分のことで精一杯だったから
もう忘れちゃったよ