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ユナの決意

「ねぇ、まだ着かないの?」


ユナとクレアが合流してから2日の月日が経過していた。

クレアが乗っていた車両がある為、ユナ1人で行動していた時よりも移動は格段に早く、そして楽になってはいたが未だに街には着いていない。


ここに来るまで何度か小さなオアシスを見つけ水の確保はしているし、食料に関してもクレアがユナの寝ている間に狩りに向かう事で確保している。


ユナの現状を簡潔に言うと暇である。

どうもクレアはまだユナを子供扱いしているらしく、狩りへの同行は許されていない。

食材の調理や洗濯などもクレアが全て行っており、ユナのする事はない。


これまでほとんど1人で生きてきたユナにとって現在生活は退屈で仕方がない。

やる事がないのがこれほど苦痛であるなど思ってもいなかった。


クレアに相手をしてもらいたいユナは、後部座席に寝転がりながら呼び掛けているのだがクレアからの返答はない。


「ちょっと無視しないでよ!」


「私は忙しいんだ。 後にしてくれ」


クレアが意図して無視している訳ではない事はユナにもわかっている事だった。

しかし、クレアの様子がどうも気になって仕方がない。

移動して行くにつれ、表情が固くなっているように感じるのだ。


「ねぇ、貴方その汗どうしたのよ⁉︎」


「お前が気にする事ではない」


車両の内部は快適な温度を保つよう魔導具により管理されている。

そうであるにも関わらずクレアは異常なほど汗を流しているのだ。

明らかに正常な状況ではない。


「奴隷印が光ってる。 これが原因ね」


ユナの知る事ではないが、奴隷契約を結ばれた者は逃げる事の出来ぬよう奴隷印を通して細工が施される。

クレアに異常をもたらしているのはそれが原因だ。


奴隷印を刻まれた首筋を中心として、クレアは重く鋭い鈍痛にさらされ続けていた。

声を出さずに耐え続けているのが信じられないほどの苦痛がクレアを襲っているのだ。


「どうしたら治るの?」


「これは自然に起こっているのではない。 奴隷であり続ける限り私は逃れる事が出来ない」


奴隷契約を破棄する事が出来るのは、主人である者の意向のみ。

それを覆す事の出来る者は1人もいない。


非人道的な契約だからこそ、奴隷制度は撤廃されたのだ。

しかし、根強く残るその制度は未だに人々を苦しめている。

目の前のクレアもその苦しむ人の中の1人なのだ。


「貴方の主人、どこにいるの?」


これまでのユナと違う雰囲気をクレアは感じ取った。

それは奴隷契約による苦痛を忘れさせるほど衝撃的なものだった。


獰猛で冷酷で、それでいて純粋な野生の猛獣の気配。

身体を奥底から震え上がらせる殺気にクレアは体の自由が効かなくなる。


ユナから迸る殺気の渦は瞬く間に周囲一帯を包み込み、敏感な生物は一斉にユナから遠ざかる。

事情を知らぬ生物達はただひたすらにその殺気の渦から逃れようと走り出したのだ。


「どこにいるの?」


固まるクレアにユナは再度問いかける。


「私の主人は、今はこの先にある集落にいるはず。 商人をしているからその途中だ」


ユナの殺気により、クレアはいつも通りに話す事が出来ない。

正しく伝える事が出来たのか、クレアはわからない。


クレアに現状の把握すら困難にさせるほどユナの殺気は強すぎるのだ。

自分に向いていない事を理解しながらもクレアは震えを止める事が出来なかった、


「そこに向かって。 私が貴方を助けるわ」


初めて出来た仲間の為、ユナは動き出す。

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