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あなたと出会えた日 三

 軍隊のバッチに拳銃…アンドロイド…何?僕は国家最高機密を前にしているのか?


「あなたの顔から恐怖を感知しました。どうしましたか?」


 ヤバい。僕は危ない橋の上にいる。こんなアンドロイドを助けたら…感謝される以上に警戒されるじゃないか。下手したら、都市伝説みたいな国家の暗部に消される。


「あ…いや、その…」


 どうしたらいい?どうするべきだ?たぶん、ロボットだから1度顔を見られたら…もう忘れないだろう。逃げることはできない。じゃあ素直に警察とか軍隊に電話するか?でも電話に応対してくれるような人たちがこのアンドロイドのことを知っているとは思えない。下手にその人達に教えたら…その人達まで暗部に消されちゃうんじゃないか?一緒に死にましょうって言ってるもんだ。もちろん…そんなことできるわけない。


「どうしたらいいですか?」


 どうしたら、生きられますか?


「雨風が凌げて、人目につかないところに連れて行ってもらえますか?」


 思いつく候補地が自室しかない。あとは庭の隅にある納屋か。両親はとある理由で今はいないし、友達を家に呼ぶ風習もない。親戚も遠くに住んでいて、両親ともに実家を飛び出したので両親の両親とは絶縁状態。


「では僕の自宅に」

「その前にパーツの回収をお願いできますか?」

「あ~はい」


 学校に教科書類を放置してきてよかった。リュックは空っぽなんだよね。と思いながら、右腕と目玉、飛び散った小さいパーツを可能な限り集める。重みなんか感じなかったリュックサックは…推定5㎏ほどとなった。腕だけでこんなに重いんだ~…………重い?


「あの…身体情報って教えてもらえますか?」

「身長180㎝、体重70㎏、足の大きさ26.4㎝、スリーサイズは上より93-66-95です」

「んなっ…!?」


 驚くところはそこじゃねぇ。たぶん、そこじゃねぇ!


「70㎏を運ぶ方法か…しかも人目につかないように」

「すみません」

「いえ、気にしないでください」


 死にたくないので。


「180㎝って僕より大きいんですね」

「おいくつなんですか?」

「僕は175㎝です…よっと」


 最終的にお姫様抱っこが妥当だった。背中はリュックサックがあるし。でもアンドロイドとはいえ…柔らかさは女性特有のものだ。ロボットだから多少重いのかもしれないが…死ぬ前にいい思い出ができたと思えば…


「あの…ここにきた経緯って教えてもらえますか?」


 でも気になる!今までスルーしてたけど!


 さっきと同じ口調で尋ねてみる。すると腕の中にいる綺麗なアンドロイドは表情を曇らせた。


「いやあの…あなたみたいなアンドロイドなんて世間じゃ見たこともないし、落ちてきたので…」

「実験施設からの空輸中に機内で裏切者が出現。私のマスターはそこで死にました。尚、マスターは死ぬ直前に私を逃がしたのです」


 これは…僕がバッチと拳銃を見つけたことがバレてる。たぶん恐怖を感知したとか言ったあたりからバレていたんだ。でも…これが事実なのか?話がすごすぎて…


「裏切者…それが研究所にいると?」

「はい」


 理解するための情報が少ない。知りたいとは思ったけど…


「そのマスターの名前は」

「アラン・カラン博士です」


 ダメだ。機械工学科の友達に聞いたらわかるのかな。こんなすごいアンドロイドを開発できるほど優れた技術を持っている人なら、きっとそっち方面では有名人のはずだ。帰ったら調べてみよう。この70㎏の重りに耐え、誰にも見つかることなく、家に辿り着けたらだけど。


 あれ?でもなんで軍隊のバッチを?共同開発なのか?アニメやドラマ的な考えだと…すごい戦闘力を身につけた殺戮兵器で、外見の美しさで周囲を騙し、一撃で目標を仕留める…的な?だってアンドロイドって人じゃないし、ひょっとしたら量産も可能…自国は核爆弾より現実的な兵器を持ったことになる。


「ところでまだお互いの名前を言っていませんね。私は試作機6号です。あなたは?」


 話題が途切れる度に、向こうがこちらに話しかけてくる。その思考もプログラムされたものなのか…こちらの情報を探り出すために。


「僕はヒズキ・ムタですが…」


 なんか…この考える力を持った機械について知り続けていくと、その分だけ怖さが増してくる。


「ヒズキさん…腕が震えていますが」

「雨にあたりすぎただけです。1月は寒いですから」


 嘘だ。本当は70㎏の重さが辛いのと…臆病風に吹かれているだけだ。寒さなんて…とっくに忘れている。

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