邪神の定義がわからない
お城で開催されている晩餐会。
勇者の隣には、お姫様が座っている。
「ところで、姫のご趣味は?」
「他人に自慢できるような、大した趣味は持っていないんですが。。。」
「いやいや。姫が多岐に渡る才能をお持ちだというのは、世間でも評判になっております。」
「そうですか。・・・お恥ずかしい限りです。」
「それで、ご趣味は?」
「デスメタルを少々、」
「・・・え?」
「デスメタルを少々、嗜んでおります。」
「何ですか・・・? それ?」
「異国の音楽です。」
「異国・・・。それは、どういった系統の音楽なのでしょうか?」
「主には『神を冒涜するような』内容ですね。」
「冒涜・・・ですか?」
「そうです。他人を地獄に落としたり、他人をバラバラに切り裂いたり、他人に火を放ったり、他人の女房を寝取ったりと。」
「・・・他人、ものすごくヒドイ目にあってませんか?」
「しかし、姫。大丈夫・・・ですか?」
「何がですか?」
「そんな歌を聞いていて、教会サイドは? 姫も神を信じてないわけではないですよね?」
「私も神は信じております。」
「それはよかった。 本当に。」
「ただし『破壊神』のほうですが。」
「・・・。」
「もしくは『邪神』を。」
「どういうことなんですか!? というか誰ですか? そいつら。」
「そのデス?・・・メタル?ですか? そもそも嗜むという表現で正しいんでしょうか?」
「おそらくは、ですが。」
「鑑賞のほうがメインで?」
「鑑賞もしますが、どちらかといえば、演者のほうです。」
「楽隊をやってらっしゃるんですか?」
「楽隊というか・・・。」
「それは奇遇ですね! 私も幼少の頃からリュートには少々、自信がありまして。」
「リュート。あの可愛らしい音の出る。」
「姫の担当される楽器は?」
「エレキベースです。」
「エレキ? ベース? それも異国の楽器ですか?」
「その通りです。」
「どんな音が出るんでしょうか?」
「主には低音ですね。ズンズンと子宮に響くような。とにかく誰とでもやりたくなるような感じです。」
「姫、イメージが・・・。」
「とは言っても、私はあまり演奏はしません。というか一切、しません。」
「一応の確認ですが、・・・楽隊ですよね?」
「私はエレキベースで観客を殴る係ですので。」
「それも演奏の一部なんですか!?」
「ベースで観客を殴ったり、ベースで歌い手を殴ったりと。」
「それって、本当に演奏活動?」
「あとは『デスボイス』の係も担当してます。」
「それは一体?」
「ちょっとやってみましょうか?」
「いや。いいです。」
「いきますよ!」
「いいって言ってるでしょ! さてはお前、やりたいだけだな!?」
「『ボェェェェ』」
「・・・堪能致しました。すごいですね。身体のどこから声が出てるのか、不思議でした。」
「普段はのどを開くトレーニングを充分にしてからやるので、破壊力は今の比ではないのですが。」
「いえ。結構です。充分です。よくわかりました。」
「今ので調子が出てきましたので、では、もう一回。」
「やんなくっていいって言ってんだろうが!」