未開の地
初投稿です。
よろしくお願いします。
夏の、太陽がギラギラ輝く、暑い日のこと。
『今日は1日は、真夏日になるでしょう。熱中症にご注意下さい。』
テレビの中のアナウンサーが熱中症対策について言っている。私は今、田舎の祖母の家にいる。祖母は、祖父が亡くなり一人暮らしになり、心配した私の母が就職がまだ決まっていない私をいざというときのためにとよこしたのだ。まぁ、私は祖母の家が好きだし、こっち(田舎)なら就職も有るかなと思い、自分にとってのメリットが多いと判断し、こちらに越してきた。私は縁側でボーッとただソーダアイスを食べている。私にとっては至福のとき。でも、はたから見れば、ただの怠け者。台所の祖母はため息まじりの声をだした。
「あんた、たまには散歩でもしてきたら?」
「えーめんどくさいー」
こんな、暑いなか絶対歩きたくなかった。
「だって、ご近所さんとももっと仲良くならないと」
確かに祖母の言うことは正しい。反論する余地が無いので、出掛けることにした。短パンにTシャツ。それにビーサン、麦わら帽子。『真夏の少年みたい』とここにくるまえはよく言われた。確かに周りの子とはかけ離れた服装だ。フリルも柄らしい柄もない。しかし、私はこの服装が大好きなのだ。だから若干ムッとするときもあったが、笑ってやり過ごした。
「いってきます」
「いってらっしゃい。夕食は6時頃だからねー」
「はーい」
ガラッ。
照りつける太陽の日差しが半端じゃない。地面からの照り返しもすごい。
やはり、イヤ、予想以上に暑い。帽子のつばをつかみ、帽子を深くかぶる。
行くと言ったものの、どこにいけばいいかわからない。
とりあえず、人がいないことを確認してグルッとまわる。北の方に丘を見つけた。大きな…桜の木。花は咲いていないが前に公園で見た桜の木と同じような形なのでそうだと思う。
そこに行くことにした。
…思ったより遠い。長い階段。ただでさえ暑いのに、よけいに暑い。途中の自販機でリンゴの缶ジュースを2本買った。この暑さ、1本では絶対たりない。木に着いたら、即刻飲む。
そんなこんなで、歩いていたら着いた。
そこは意外にも無人の神社の裏山だった。
「ふふ…」
誰もいず、忘れ去られたようなところだった。まるで秘密基地。少し笑えた。自分に特別な空間ができた気がした。あとは木に登りたいな。せっかくのリンゴジュースもあるし、なにより私でも登れそうな木だ。
そしてリンゴジュースを飲む…自然と足が速くなる。丘の頂上に着く寸前、木にもたれかかる黒い影があるのに気がついた。一瞬ドキッとしたが、影は人のものでその人は絵を描いているとわかり、落ち着いた。
でも木に先着がいるから、木にいけない。こっそり戻って、神社で休憩することにする。
ゆっくり回転して慎重に降りるだけ。そんなとき。そういう大切なとき。私はたいていミスをする。
「あっ」
リンゴジュースの缶を落とした。しかも、声を出してしまった。もう、絶対、気付かれた。
シーン…
シーンとは音喩。たとえなのだ。
しかし、実際そんな音はないのに聞こえた気がした。
「ど、ど~も~」
「あ、へ、平気ですか?リンゴジュース…」
「あっっだ、大丈夫見たいです」
「「……」」
「あっ、リンゴジュース飲みますか?まだ、冷えてますけど…」
「えっっ!そんな…おっで…あ…も、もらいます…」
変な間が気持ち悪くてついリンゴジュースをあげてしまった。進めず下がれず、ただ、立ち尽くす。
「「……」」
「り、リンゴジュース美味しいですね!丁度のどかわいていたんです
。」
男人は、言う。しかも、よくよく見たら、なんとイケメンだった。
「あっあ…」
メッチャ焦っている。かわいい!
「よかった…」
「な、何がですか?」
思わず心の中の言葉が、出てしまった。
「あっ、いえ、あなたが、良い人立ったので…私、越してきたばっかりで、なんか問題を起こしてしまったらもう、大変なので」
少し呆然としている。まぁ、突然そんなこと言われたら呆然とするだろうけど。
「なんか…いえ、何でもないです…」
なんなのかよくわからないが、とりあえず退散する。
「あっ、それじゃあ。挨拶でもしに行ってきます。」
なんか、慌てている。対応に困っているようだ。
「そ、そうですね」
「あっ、じゃあ…」
一歩踏み出す。
「あの!!」
いきなり大きな声を出され、かなり驚いた。
「僕、そこの下に住んでる三野と言います」
たしかにすぐ下に日本家屋がある。
「私は、麓の鈴山って家に住んでる岡本です。岡本 麻紀です。」
笑顔だ。ニコッと笑った。というかはにかんだ。なんだか、少しだけ照れる!!
「それじゃっ」
小走りで丘を降りた。そして、彼…三野くんが見えなくなったところでもうダッシュで階段をかけ降りた。わきめもふらず。顔が熱い。火照っている。
頬に手を当ててみる。これって―
「一目惚れ?」
初体験で、もう意味がわからず、パニクっている。
「こんにちは」
「あっ、こ、こんにちは!!」
近所のおばあちゃんの声で我にかえる。
道の真ん中でボーッとしてた。
そう、私はあいさつしに来たんだよ!
好感度をあげる!
「元気ねー。この村にはもってこいだわ
よかったわー!これで、健史くんも友達ができるわねー」
「タケシくん?」
聴いたことのない名前…
「あら、知らない?そこの家に住んでる三野さんのお孫さん。」
「あっ!」
そういえば、三野くんは名前を言っていなかった。タケシと言うらしい。
「知っています。そこの丘の上で、会いました。」
「そうなのよね。いつもあそこで、物語を書いているそうなの。どんな話なのかわからないけど。」
あれは絵ではなく物語だったらしい。
それにしても、このおばさん…櫻井さんの言葉に少し刺がある。
やっぱり足並みをきっちり揃えないと嫌われるのかなぁ。
「あら、まぁ、もうこんな時間!お夕飯の支度をしなくちゃ。バイバイ」
「あっ、失礼します。」
なんだか、大変そうな田舎だなと思った。
「ただいまーー」
その辺で会ったおばさんに軽く挨拶をして、挨拶回りはやめにして帰ってきた。
思えば自分と同じ年代の人には三野くんにしか会っていない。相当、少子高齢化の影響を受けているらしい。過疎化が進んでいる。
「おかえりなさい。挨拶してきたの?」
「まぁ、そこそこ。でも、それにしても子どもが全然いないね。同じくらいの人には一人しか会わなかったよ。」
「あら。そう。思えばあなたくらいの子どもは三野さん家のお孫さんしかいないわね。子供なら隣のとなりくらいになら二、三人いるかもしれないわね。でもまだ中学生よ。」
そして祖母は夕飯をテーブルに置きながら言った
「そういえば、三野さん家お孫さんいくつなのでしょうね。」
そういえばそうだ。見た目はそこそこな年齢に見えた気がする。でも、人はみかけじゃ年なんてわからない。
「ねー。たしかにー。」
祖母と他愛のない話をしながらの食事。
思えば、前の家では考えられない。
私も両親もなにかと忙しくいつも時間に追われていた。食事は、死なないためのただの栄養補給でしかなかった。
中学生のとき、『家族の団らん』についてやった。『家族の団らん』とはどういうものかとプリントに書いてこいっといつ宿題がでた。
私は困った。仕方がなく適当に友達に合わせ、それっぽい文章に仕上げた。
だから、今、この時間がとても新鮮だ。
良い時間なのか…は、判断ができないが確実に悪い時間ではなかった。
「ごちそうさま」
私は食器を流しに置き、洗う。
ただそれだけの動作にドキドキする。
新しい環境に心も体もなれていないのだなよくわかる。
「そうだ、麻紀ちゃん」
と、言って祖母が立ち上がり何かを持ってきた。
「これ、お隣の山田さんが麻紀ちゃんにってくれたわよ」
それは、かわいい髪飾りだった。
「わぁぁ。ありがとぉ」
「山田さんに言いなさいな。」
おばあちゃんは笑いながら流しに行った。さっきはこの地域に不安があったが優しい人もいることに気づけた。
だから大分不安は除かれた。
そして決めた。
明日はこの髪飾りをつけて散歩にいく!
お風呂上がりにどうしてもコーラが飲みたくなった。なぜか無性に。こんなこと、よくあるよね。
5分ほど歩けば自動販売機があったはず…自転車で行けばもっと、速い!
思い立ったが吉日とは、このことだ。
「おばーちゃーん、ちょっと飲み物、コーラ買ってくるね。」
「はーい」
簡単にOKがでるのは、田舎のいいところだと思う。
勢いよくペダルを踏んだ。生暑い風がわたしの頬を通りすぎる。
生暑く、淀んだ空気とは反対にわたしは爽快に走っている。
足は軽く、体も軽く。
軽快なステップを踏むように走る。
自動販売機には、虫がたくさんいた。
「気持ち悪っっ」
一人なのをいいことに声を出して、不快を表した。
コーラをさっさと買い、隣のベンチに腰かける。
プシュッ コーラの開けたときの音が静かで、暗い闇に響く。
都会では、味わわない孤独感…
「星が綺麗……」
そんな、気持ちを紛らわすように、声をあげて言った。
そりゃ、都会でも孤独あった。周りの友達は、就職が決まり充実した日々を送っている。当然、無職の私は退屈していた。『早く就職しろ』そんな、周りからの威圧が嫌で自分から孤独を求めていた気がする。
都会の孤独と、田舎の孤独。
この二つは、180度違うと思う。
都会は、人はいるのに孤独。大きな川の中洲に取り残された感じがする。
しかし田舎の孤独は、「さみしい」。この一言で表せる。誰もいない。聞こえるのは、虫、動物の鳴き声。風の吹く音。これくらいだ。この音はとても心地よい。人として、自然に還った感じがする。
しかし…
誰もいない、闇にただ一人。
泣きたくなる。
何だか。
とても暗くなったので自転車をこぎだした。
明かりのある場所へ帰りたくなった。
ちょっとだけ、泣いた。
あっちに居たときのこと思い出したら、涙がでてきた。
「ただいまぁ」
さすがにとばしてきただけあって息が切れていた。
「あら、おかえり」
お祖母ちゃんとの談笑。温かいお風呂。
心はすっかり、元気を取り戻した。
小さな 私には多すぎるくらい、元気をもらった。
「ほら、起きなさい!朝だよっっ」
お祖母ちゃんの威勢の良い声で目覚めた。もう、朝か…
いろいろ済ませて下に降りると良い香りがしてきた。
焼けたパン。ベーコン、目玉焼き。野菜のスープ。
ひとつひとつ、手作りで温かかった。
食べながら今日の予定を考える。
とりあえず、かるーく職場を探し、地域の人との親交を深めて、あと、この地域の地形について学ぶ。それになにより、あの髪飾りを着けて歩きたい!
それが、今日やることっ!
ご飯を食べて、食器を洗い部屋の片付けをして、外に出た。
今日も快晴。
とりあえず、商店街をうろつく。
そこそこ求人募集がある。
職が見つかりそうだ。
さーーっと見ていたら、楽器屋さんの求人募集が張り出してあった。
私は昔から、楽器が好きだった。自分で、音を創作し、奏でることが出きるのが、なんともよかった。しばらくボォッと見ていたら、近所の(多分)おばさんに声をかけられた。
「あら、こんにちは。麻紀ちゃん…よね?あら、職探し?」
「えぇ…もともと、こっちで仕事をしたいと思っていたので」
「ここの楽器屋さん、すごくおじいさんなのよ。でも、良い楽器がそろっているわ」
なんか、とても楽器に詳しい人の言葉のようだった。
「楽器、お詳しいんですか?」
すると、おばさんはニッコリ笑って言った。
「少しね。音楽の仕事をしていたのよ。子どもが生まれる前だけど」
「へぇー、いいですよね。楽器。ここで仕事したいなぁ。なんてね」
「あら。いいじゃない。ここのおじいさんは、かなりおじいさんだけどいい人よ?」
「そうなんですか…!」
軽く世間話をして、おばさんとは別れた。
振り返ってみても誰もいない。
でも、直感的に思ったここで働きたいという気持ちは不思議と揺るがなかった。
歩いていたら喉が渇いた。ジュースを買うか一瞬迷った。しかし、もしここで飲み物を買わず熱中症になってしまったら、お祖母ちゃんに多大なる迷惑をかけるのでちょっとの出費はしょうがないと、一番安いお茶を買った。
飲みながら歩き、あの丘の前まで来た。
-あの人、またここで絵を描いているのかな、熱中症になってないかな…-
余計な心配をしてしまう。
まだ、一回しか会っていないのにこんなにも気になってしまって、ちょっと恐い。
ハハハ…
空笑いが虚しく響く。
「気になるなら、チラッとみてくればいいっ!」
自分を正当化させて、丘を登り始めた。
まだ、全然頂上は見えないのに疲れた。
暑いのもあるし、この丘の辛さを昨日知ってしまったから余計疲れる、精神的に。もう、下向いて歩くしかない。
「あの…平気ですか?」
まぶしい…。
「!…あっ…えっと、岡本さん…?」
「あっ」
三野さんだ…
「頂上まで行こうと思ったのですが、もう暑くて。まったく情けない。」
すると、三野さんは可笑しそうに笑って、言った。
「あっち側から登るとすぐですよ。木も多くて涼しいし。」
汗が目に入って、しみる。
「あっ、三野さん…なんか用事でしたよね。すみません。長話しちゃって。」
「いえ、用事、ありませんよ?なんとなく、フラッと。話も進まないし…」
ため息をつく。
「なにか、小説を書いているんですか?」
三野さんは思い切りしまったという顔をして、ばつ悪そうに言った。
「一応小説家なんだよね。」
苦笑い。その笑いがわたしの興味をそそった。
「なんていう題名ですか?内容知りたい!」
メッチャ困ってる。困ってる顔がまたおもしろい。
「いや…ちょっと、題名とかは…ね…俺一応内緒にしてるから。田舎だとバレたら何かとめんどくさいし。」
「いいじゃなあですかぁ。わたし、噂しないたちですもん。」
三野さんは困った様に笑った。そして、ボソッと言った。
「似てるな…」
私は案外地獄耳なものだから、聞こえてしまった。
「似てるって誰にですか?」
…
しばし、沈黙。
「俺、口に出してた?今」
「はい。思い切り。似てるなって言ってましたよ?」
あぁと頭を、抱える三野さん。よくわからない展開。
「いや、前に…っていっても10年くらい前に来た女の子に雰囲気似てるなって。」
「わたし、一人っ子ですよ?」
すると、可笑しそうに笑って、
「君は多分関係がない人だよ。君は色素が薄いが、彼女はとても濃かった。髪の毛や、目の色が本当に真っ黒だ。」
笑った。悲しそうに。よくわからないが、複雑な話は嫌い。というか、的確に言葉が出せない。だから、苦手といった方があっている。
「そうなんですか、あっ…」
話題を変えようと思ったが、三野さんは、遠くを見てる。私を見ていない。
隣にいるのに、辛い。さみしい。
付き合っているなら抱き締めたい。
でも、わたしには、そんなことする資格がなくて、三野さんは私の手の届かないと所にいて、袖を掴むこともできない。
―さみしい―
三野さんは、いったい、どこをみているの?
ゆっくり振り向いた三野さんが、とても驚いていた。
その顔を私も驚いた。
「な、なんですか?」
自分で出した声で気がつく。私は泣いていた。本当に無意識に。
「ご、ごめんなさい。」
自分で自分に焦って、お茶を落としてしまった。缶の口から、お茶が流れ川をつくる。
「す、すみません!お、思いだし泣きです!」
すごく、動揺して話し方もコメントも結構無理があるきがする。
「あっ、用事があるんで帰りますね。」
足早にその場を去ろうとした。
そういうときに限って転ぶ。
ガッツリ転んだ。こけたとかじゃなくて転んだ。しかも、膝から血がでる。ダサいことこの上ない。
「へ、平気!?」
焦った顔して、三野さんもきた。
そして、同じところで転ぶ。
同じところで転べば、大体同じ起動で倒れるわけだ。故に落下地点は私の真上。
ドンッ。
「「ツッ…」」
二人の声が重なる。
都会だったら顔を真っ赤にして、憤怒してその場を去るけどここは誰も見ていないから、落ち着いていられる、というのもおかしいけど、笑う人がいないから怒る必要がない。
「へ、平気ですか!?」
慌てた声。
「は…い…」
自分で転んだ時にちょっと傷ついて、血が滲んでる程度。
「へへへ…」
なかなか面白い光景だが、足の痛みと照れから爆笑できない。
三野さんなんて、ビックリしすぎて固まっている。
「なんか、ついてないってか、今日のわたしどんくさいですよ。まったく。ダメ人間で嫌になりすよー。」
笑い話に替えないと辛い。
早く笑って、今おかれてる状況から脱したい。
「…むり…してませんか?してますよね?足、やっぱり、痛いんです?」
心配してる。
「…平気ですっっ!!」
全力で笑う。ちょっと、場に浮いてる気もするけどまぁいい。
「こんなけが、日常茶飯事ですよー」
「…そうですか?」
まだ心配そう。でも。まさかされるはずはないが、ここでお姫様だっこ何とかなんとかなんてされたら恥ずかしい。
田舎は噂がひろまりやすいらしいから、そんなこと引っ越し早々やったら噂になってしまう。
……。
お姫様だっこなんてされるわけないじゃん!
自分で考えて自分で恥ずかしくなっている。顔がじわじわ赤くなるのがわかる。
多分その顔の赤さにだと思うけど、すごく疑問そうな顔をしている。
「すみません。なんか、転んだこと恥ずかしくて」
笑いながら。今度はすごく自然な言い訳が言えたと自分でも関心。
すると三野さんも納得したらしい。
顔が晴れた。
「自分もです」
笑顔が眩しかった。
さっきの遠い目などなかったような。
明るく私を見ている目だった。
「また明日もここにきますか?」
「そ、そうですね…きます!」
ーほんとに優しそうに笑うな…ー
「そういえば海見えるんですよ、山の間からですけど。ここからなら。ほら。」
どこだかいまいちわからない。
「そこからじゃみえませんよ。ほんと、すこしだけですもん。」
笑いながらグッと肩を寄せられた。
「ほら、あそこですよ。」
海どころではない。この人には恥ずかしさというものがないのだろうか。
肩が触れ合う。顔も近い。
もう、オーバーヒート寸前。
かろうじて見えた海。
太陽の日差しでキラキラ輝いてる。
三野さんの目もキラキラ輝いてる。
「横目で見ないでくださいよ。」
ハッとした。三野さん、めっちゃ頬を膨らませている。
言い訳がない…困った…
「いや、その、別にそんな変な気持ちとかじゃなくて、」
「プッあっはっはっ」
三野さんの爆笑で唖然とするしかない。
何を言われるのかわからない。
「そんな、あたふたしなくても…怒ってなんかないのに。」
「でも、だって…み、見とれてるというか、そんな感じな感じで…」
「見とれてたの?」
「ええ!いや、違うんですよお」
困りに困って墓穴をほっている。
笑いながら三野さんは立ち上がった。
「帰るわ。明日も来る。」
「あっ、はぁ、お疲れ様です。」
軽快に丘を降りていった。
私も帰ろう。
ザァ。
木々の揺れる音。
ー明日も来るー
あの言葉にドキッとも、グッともした。
また明日会える保証がとてもとても嬉しかった。
会えるか会えないか。そんな、賭けみたいな関係から、会いにここに来ていいという保証付きの確証つきの関係。
明日が待ち遠しい。
…To be continue…