暖かい温もり
眩しい朝日、目指しの音、温かい匂いに僕は目を覚ました。
「…なんで今更。
あの頃の夢なんか見ているんだろう。」
少し首をかしげたが、答えは思いつくはずもなく。
とりあえず伸びをしてお布団から出た。
まだ新しい制服に袖を通したけど、未だに慣れず、落ち着かなくていつものパーカを羽織った。
初めて通う学校は、特定のズボンとワイシャツさえ着れば、後は何を着ても許されるらしく、僕は嬉しかった。
保育園を卒業してからすぐ、おかしな強盗に親を殺され、国の厳しい託児所に預けられてからは小学校?や中学校?などには行けず、その中で勉強をしていた。
それは、高校を卒業する歳までずっと続くらしかった。
だけど僕は、いきなり現れたお金持ちさんによってシナリオごと買ってもらい、檻のような世界から出てきた。
檻の外はまるで違っていて、世界が新鮮だった。
話では聞いていたけど、初めてが多くて戸惑う事もあるけど、僕はなんとか、お金持ちさんのおかげでもっていた。
ボーとしながら窓の外を見ていると、ドアがノックされてお金持ちさんが入ってきた。
「おはよう。夕弦。」
お金持ちさんはあたたかい声と顔でそういった。
僕は少し嬉しくなって駆け寄って少しぎゅっとして挨拶をした。
「おはようございますっ…!お金持ちさん!!」
「あはは、朝から元気なのは嬉しいけど、そろそろちゃんと名前を覚えて欲しいな?」
お金持ちさんの言葉に僕は戸惑いながら、自分の返事を返した。
「えっ…ん…僕、大切な人の名前覚えるの苦手なんですよね…」
苦笑いでお金持ちさんを見つめるといきなり肩をがしっと掴んできた。
「弓弦くん!なんでその事黙ってたの?!」
「えっ…?あ、あの…この事はあまり言わなくても大丈夫かな…って。」
「そんなこと無いよ。
俺、名前を覚えてもらえないのは弓弦くんに嫌われてるんじゃないかって不安だったんだよ?」
「そ、そんなこと、僕は無いです!
嫌いだったら一緒にお風呂入ったり、ぎゅーとか、ち、ちゅーとかしませんよ!!」
そう言うと少し恥ずかしくなり顔が熱くなってきた。
チラっとお金持ちさんを見るとお金持ちさんも同じようで赤くなりながら抱きしめてきた。
「そっか、俺、ごめんね。
でも、その事については、帰ってきてから考えようか。」
「うん…!」
しばらく抱きしめあってると、僕のお腹の音がなり、はっとして、朝ご飯を食べる事になり、リビングに向かった。
リビングへ行くとそこには美味しそうな料理があった。
僕は席につくといただきます!と言ってお金持ちさんの美味しいご飯を食べた。
「やっぱり、お金持ちさんのご飯美味しいです!」
「あはは、ありがとう。
あ、そうだ。」
「なんですか?」
「今日は頑張って俺のこと蓮って呼んでみて?」
「れ、蓮さん…ですか?」
「うん。
覚えるのが苦手でも頑張って言い続ければ覚えるだろうし。」
「わかりました…!蓮さん!」
頷いて返事をすると、蓮さんはにこりと微笑み頭を撫でてきた。
しばらく話したりしていると、時間になったので僕は蓮さんに行ってきますと言って家を出た。