表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/20

深まる不思議

 私はそんなに愛校心みたいなのが強い方じゃないから、この学校の歴史はもちろん、今の校長の名前も知らない。さすがに顔は知ってるけど、あの白黒写真のおじさまよりも人相はよかった気がする。多分だけど。

 いや、そんなことはどうでも良いんだけど。目の前の状況があまりに意味不明すぎて、考えがまとまらない。

 えっと、つまり私が知っている数少ない春影高校についての知識と、理事長という言葉は結びつかないってことだ。うん。


「ここキタネ-な。換気できないのか?」

 その声のする方を見ると、哉也はもう社長机とセットで置いてある、灰色の皮の立派な椅子に偉そうに座っていた。机の上にはホコリのついたハンカチ。椅子の座面に積もっていたホコリをぬぐったんだろうか。つまんないな。そのまま座ればよかったのに。


「咲希、何ぼーっとしてんの?」

「は?」

「換気、してよ」


 何という自己中ヤロー。まあ、前から知ってたけど、やっぱり腹が立つ。

 哉也を睨むと、にこにこしてこちらを見ている。

 何という……。いや、もう何も言うまい。

 反抗するのを諦めた私は、改めて部屋を見回す。とりあえず、この部屋に窓はない。あっても開けたくないけど。

 その代わり……と言えるか分からないけど、白黒写真の向かいの壁に、灰色の換気扇の羽根があった。スイッチは……羽根の枠のあたりに糸が垂れている。試しに引くと、ギキャキャキャという恐ろしい音を立てながらも、羽根が回り始めた。


「ご苦労」

「あー、ほんと疲れた-」


 言いながら精一杯笑顔を作り哉也の椅子の方を向くと、哉也は灰色の薄っぺらい冊子を読んでいた。


「……何ソレ?」

「ルールブック」

「どこにあった?」

「そこ」


 哉也がそれから目を上げることなく指さした方を見ると、そこには灰色の本棚があった。本棚……かな? 本が何冊かと、灰色の箱が突っ込んである。

 ってかあいつ、私をパシっている間に……。まぁいいや。

 とりあえず、私も哉也の右隣に立って、冊子をのぞき込む。


「で? 何が書いてあるの?」

「この間の手紙に書いてあったのと、ほとんど内容は同じみたいだな」

「ふーん……」

「あ、ただ、ここら辺は違うな」

 そういって、哉也はある部分を指さす。


・使用期限は、この部屋に最初に入った日から365日間です

・食料は、部屋の床下収納に入っております。

☆その他分からないことがございましたら、この部屋の内にあります専用の灰色電話にておたずねください。


 手紙とは違い手書きのそれは、ほんの少しカビの匂いがしていて、字はかなり汚かった。いいや、そんなことどうでも良いんだけど。


「何これ……」

「さあ? 聞いてみれば?」


 ……ん?


 哉也を見ると、机の隅のちょっとふくらんだ所を押していた。


 ガガガガ……


 机の左側にある引き出しの一番上の段が開き、そこに灰色の電話の子機が、充電器にささっている状態で入っていた。

「何で分かったの?」

「なんとなく」

「……。で、何で私がかけることになってるの?」

「俺、こんな怪しい電話の相手に、声聞かれたくないから」

「…………」


 ああ、やっぱり私はこいつには勝てない。

 ため息をついて、哉也に差し出した子機を受け取る。


 すると驚いたことにスピーカーからはもう呼び出し音が鳴っており、慌てて耳を当てる。


 プルルルル……

 ガチャ


「あ、もしも『おかけになった電話番号は、現在、使われておりません…』」



 どういうこと?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ