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探索開始

 この辺から展開がオカシイ。

 ……。いや、ちょっと待て。ロッカー前って、どこの?


 休み時間、真面目にも私は灰色のロッカーを探すためにかわいらしいクラスの女子からの昼食の誘いをあっさりパスした。


 ……教室のロッカーは全部灰色だ。しかし、もう使われている。3回ノックはない。教室のほかのロッカーと言えば掃除道具を入れるロッカーくらいか。嫌、もういい。

 とにかく、教室にはないだろうと仮定して教室を出た。


 あった。


 それはもうあからさまにシークレットだった。いや、あからさまなくせに怪しげである。それは隣の教室で発見された。ちなみに隣の教室の隣は階段であり、その階段の隣はトイレである。いや、どうでもいいが。


 どこにロッカーがあるかと言ったら、教室の中である。私が思考を止めたあの場所。……掃除道具入れ。


 違和感があると言えば、まず、ドアノブ。何故ドアノブなんだ。そして『立入禁止』の紙。何故『開放禁止』じゃないんだ。そのクラスの女生徒に、掃除道具入れについて尋ねてみると、


「ああ、あのロッカーね。誰も開けてないんじゃない? ていうか正直、『立入禁止』はないと思うんだけど……。掃除道具? 階段下に置いてあるよ。そっからいつもホーキとかとって掃除してる。何のためにあるんだよってね、あのロッカー」


 ……ということらしい。


 いや、どう考えてもおかしいだろう。壊れて開きませんってなら普通なのに、わざわざ『立入禁止』。教室にあるだけ無意味だ。無意味どころかただの邪魔だ。

 私は教室から10歩位進んでそこからまた教室に戻った。あっさり過ぎる。とりあえず部活が終わったら、また行くと決めて、ひとまず席について弁当を食べ始めた。



***



 18:00。部活終了後、例のロッカーの元に行った。今日は、自分のクラスの電気はついていたが、幸い隣のクラスの電気は消えていた。教室の鍵は完全下校時間の19:30以降に閉められると言うことなので、大丈夫だ。

 18:20になるには後何分かあるが、哉也は来る気配がないので、私は先に3回ノックしてみることにした。


・  ・  ・


 ドアノブに手をかけて、回す。回らない。反対側に回すも、回らない。押しても引いても開かない。

 違う。


 不意に、コンコンコン、と3回ノックする音が聞こえた。


 すぐ近くにあるドアを開け、反対側ー階段の方をちらっと見ると、見覚えのあるスポーツバックが床に置いてある。


「哉也?」

「遅い」


 そして、ギィィーっという古いドアが開くような音。


 急いで反対側に回ると、哉也が立っていて、壁に手を触れていた。180センチ位はあるだろうという哉也の身体より頭1個分低い位置で灰色の四角が終わっている。その謎の四角の部分が、ロッカーの扉らしい。

 私は、あんたがよくそんなこと言えるわね、という言葉を飲み込んだ代わりに、哉也がそのまま壁に頭をぶつければいいといぢわるく思った。


 と、


 呪いは通じた。


 私は哉也のバックの隣に自分のバックを置く。ふと哉也を見ると、目の前あたりを押さえて身をくの字に曲げている。

 ——何だ、面白くない奴。

 と私は哉也をさんざん馬鹿にして、ロッカーに足を踏み入れた。

 両足がちょうどコンクリートのような硬い物質に乗ったところで、頭上の明かりがついた。なんだこれ。最新技術で人が歩いたときの振動からエネルギーを作り出すってのがあったような気がするが、その類でないことは明白だった。中はホコリの匂いが立ちこめ、蜘蛛の巣が張り巡らされているのが分かったからだ。

「哉也」

 というと、哉也は頭上に注意を促しながらそろりと入ってきた。足元を見ると、2人分の足跡の絵。元から2人用なのか…?


「うわっ。」

 と柄にもなく口にして後悔した。

 頭上の蜘蛛が遠のいていく——



 結論:ロッカーじゃない。



 過程はどうでもいいが、結論を言うと、あれはロッカーなどではない。そして今どこに居るのかというと、やはりロッカーだとしか言い様がないのが残念なのだが。


 ロッカーとおぼしき場所を3回ノック。(→哉也が壁に頭をぶつける)→中に入る。→電気がつく。→2人目も入る。→ものすごくスローなスピードで降りていく。→電気が消える。→今に至る。


 何なんだ一体。今のところ灰色かどうかも怪しい。灰色だったのは壁の四角だ。それはもういい。とにかく私たちは、130センチ四方(位)のコンクリートの上に乗っている、とそれだけだ。


「ねえ哉也、上ってどうなってんの」

「上…? 何もないけど」

 そういって背伸びしたらしい哉也。のんきな奴だ。意味の分からない場所に閉じ込められてるというのに。

「なあ、電気はねえのか?」

 たぶん、スイッチが何かがあるはずだ。とりあえず私たちを囲んでいるダンボールのような壁に手を這わせてみる。


 正直、すごく嫌だ。さっきも頭上に蜘蛛が居た。私は虫がダメだ。この世の虫という虫は根絶してしまえばいいと思っている。

 例えば、いや特に、あの黒くてカサコソと動き回り、さらに嫌なことに飛んだりするアレ。今の状況に、ぴったりすぎないか?


「お」

 不意に哉也の声がした。


「何かあった?」

「ある。棒みたいな奴が突き刺さってるみたいだ。ん……板?」

 哉也が上の方をあさっている間、私はしゃがんで床の方まで手を這わせる。カサコソ音がする。それは暗い中でも分かる嫌悪感だった。

「ギャー」

「あ、ついた」

 私は直立不動のまま、上を見る。確かに電気がついた。


 なんかもうどうでも良くなってきた。上は上すぎるし、光は少ししか届いていない。下を向けば必ず見たくもないものを見てしまう。悲しいことに頼れる奴は哉也しか居ない。その哉也はというと、手を伸ばしてさっきいっていた板を引っ張り出そうと試みている。

 ああー。


「やっと…とれた」


 ようやく私の意識は正常化した。そして、正常化した目で板を見やる。

「……読みにくっ」

 まるで小学生のような字で何か書いてある。



 灰色のロッカー***室

 ここのど**右の*うに*はあるよ。

 *わりをよく見て                               (*は解読不能)


 

「いるのはゴ**リだけじゃないよ★

  ・・・って、ホラーか!」

 と哉也はツッコんで、板を注意深く見た。

 最後の文は置いといて、その前は

 ——まわりをよく見て

 だろう。

 初めの文も2つめの文もよく分からない。

 とにかく3つ目に従ってみよう。


 分かったこと

 1つ、この壁はやたらダンボールの匂いがする。手触りからしてもダンボール。

 2つ、電気は2つ。遠く上で光っているものが1つ。もう1つはひっこぬいた板があった隙間から光が漏れている。どこから漏れているのかは分からない。

 3つ、積み上げられたダンボールの上の方には空洞がある。途中で諦めたのか?

 4つ、ゴ**リの他に何かいる。できればいてほしくないが、何かいる気配だ。  5つ、板の裏。「ツアー代表…」の文字。


 「咲希、マジで灰色だ。」

 例の板の隙間から何か見えるらしい。私も見たかったが、あいにく身長が足りなかった。

 しかし、考えてみる。ここから何か見える、ということはこの隣には何かあるということだ。


「あ」


 突然隙間がふさがり、バサッという音、ダンボールとホコリの匂い。


「ケホッ……。ダンボール……と新聞……?」

「これ、どけたらいいんじゃない?」


 ということで、私たちはダンボールやら新聞やらをどけ、足下に置く。さらにスペースが狭くなった。そうしてダンボールやら新聞やらを取り除くと、全く別の板がはめ込まれていた。四角。 

 乱雑にも哉也はそれを蹴飛ばした。と同時に光。さっきあの隙間から漏れていた光だ。

「ていうか……まさかここが入り口とか言うんじゃないでしょうね……」

「違うな」

 そう言うと哉也はズカズカと中に上がり込んだ。私も後をついて行く。


 中は、本当に灰色だった。それに、ここはやはりロッカーなどではなくて、1つの部屋のようになっている。誰が選んだのかは知らないが、そこにある机も棚もいすもすべて灰色だった。それも、教室に50個近く並んでいるあの個人ロッカーの灰色だ。

 もちろん、壁も床もすべて灰色だ。


「誰だこれ」

 社長机のような机の後ろの壁に白黒の写真が額に入れられて飾ってある。白黒とは古い。白黒の男は笑うでもなくブスっとした顔でこちらを見つめている。そんなに見つめられても気味が悪い。


 目をそらすと、ドアが見えた。そちらに歩いてみると、ドアの上に、——理事長室——というプレートがある。


 そこでふと考える。この高校って、公立ですよね?


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