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調査開始

「シークレットルーム」? 

 高校、それも公立の校舎で秘密も何も無いのでは。しかも、『おめでとう』と言われても別に使用権を欲しがった事なんて無い。というよりも、今の今まで存在を知らなかった。

 入室方法も、3回ノックはいくら何でも古すぎないだろうか。その上、灰色のロッカー。入りたくない。

 もう1度手紙を見る。ルールがあるらしい。学校の一教室(多分そうだろう)の使用ルールって、勝手に決めて良いのかな。

 『親戚』。つまり、哉也も使用可能という事だ。あの手紙は、その事を兄に伝えていたのだろうか。

 そこまで考えて、私は気付いた。そう、考えるべき事はその事では無い。


 誰が、この手紙を出したか?


 私と哉也が兄妹である事を知っている人なんて、学校にはいない。仮に同じ名字からそう推測したとしても、住所までは知らない筈だ。それなのに、私の家に、兄の宛名で、私への手紙まで同封してあった。

 つまり、この手紙の差出人は、私達の関係をある程度知っているが、別々に住んでいる事を知らないか、哉也の住所を知らないので、私の家に出した事になる。

 そんな人、高校にいたっけ……?

 記憶を探るも、思い当たらない。じゃあ、一体誰が……?


 しばらく考えて、私は立ち上がる。推測するには情報が足りない。

 なら、自分で集めるまでだ。



***



 翌日。先生が背中を向けている事を良い事に、私は昨日の事を考えていた。

 ちなみに今受けている授業は先生の説明が意味不明な事で有名で、クラスメイトの半分は寝ている。


 それはさておき。


 今日私は学校で、クラスメイトや部活仲間に「変な手紙」が来なかったか聞いて回った。答えは全員No。何かを知っている様子はなかった。顔色1つ変えずに平然と嘘をつく誰かさんのお陰で、相手が嘘をついているかどうかは一目で分かる。

 とにかく、これであの手紙が私個人に対してのものだという事が分かった。

 兄には昨日電話で確認した。アイツの嘘は唯一声に出るので、それが1番なのだ。やはり、私が使用権を手に入れたという内容だったようだ。

 今までの情報を元に、考えを手元の紙に纏める。


・送り主は、私と哉也が兄妹だと知っている。

・別居しているのは、多分知らない(哉也の住所を知らない、というのもあり)。

・あの手紙は、皆に広げるのが目的ではなく、本当に「秘密」。

・私達は、送り主の筆跡を多分知っている(知らなければ手書きでも問題無い)。

・クラスメイトや部活仲間はおそらく無関係。


 ……こんなものか。少なくとも、昨日よりはましだ。あとは個人を特定するだけ。


 その時、携帯のバイブに気づく。先生に気付かれる前に急いで内容をチェック。

 哉也からだった。珍しい、向こうからメールだなんて……。

 天変地異が起こるのではと思いながら本文を見て、納得した。


『昨日の件、何か分かった?』


 やはり、興味があったようだ。今までの推理を打ち込んで送る。しばらくして、返信。


『まあ、その程度だろうな。上出来じゃないのか』

 相変わらずのお言葉。我慢しきれず、私はこう送った。

『どこかの誰かさんなら、何か他に分かる訳?』

『な訳無いだろ、こんな情報量で分かる筈がない』


 じゃあ何でそんなに偉そうなのよ……

 いろいろと諦めて話を進める。


『で、誰だと思う?』

『さあ? さっきの条件に合う奴なんて思い付かないが』


 やはりそうか。どうしても辻褄が合わない。でもここの学生だろうし……。

 私の沈黙を肯定と取ったのか、哉也は更に送ってきた。


『という訳で、行ってみるしか無いな。今日の放課後でどうだ?』


 ……は?


『誰が待ってるか分からないのに? 危ないかもよ』

『学校でそこまで危い(ヤバい)事がある訳無いだろう。怖いなら、足手纏いだから来るな。1人で行く』


 いや、怖くはないけれど……というか、どうしてそんなに自信があるのだろう?

 とはいえ、私も気になる。少し考えて、私はこう返信した。


『じゃあ、6:15にロッカー前でどう?』

 私の部活——弓道部は6時に終わる。

『それまで俺に待っていろと言うのか?』

『どこかの助っ人言って時間潰せば良いでしょう』


 哉也は帰宅部で、色々な所に良く助っ人として行く。何故どこかに入らなかったかというと、あちこちから超熱心な誘いが来て、どれか1つを選ぶのが面倒になったのだ。哉也らしい。


 どこに行くか考えたのか、少しして短く返信。

『OK。じゃ、6:15に』

 クラス委員の号令。私は何食わぬ顔で携帯をしまい、立ち上がった。


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