配達
と思っている。けれどそれはちょっと怪しいかもしれない。なぜなら気付けば次の言葉を言っていたので。
「アンタが振られたら私の胸を貸してやっても良いけど? まあ、兄さんには必要ないかしら?」
嫌み? いや、皮肉と言っていただきたい。容姿と才覚はともかく、こんな所まで似なくても良いと思う。
そもそも、私は哉也のようなナルシストではない。じゃあどんな性格かと言われても困るけれど。私は自分探しの旅なんてものも好きではない。自分を決めるのは自分だし、それを見つけるのも自分。その過程には意味が無い。
……だんだん話が逸れてきた。取り敢えず、言葉にトゲがないというのだけは撤回しておこうと思う。
(ちなみに、このとりとめのない思考の結論は、「哉也はバカだ」)
「……で。具体的に何が言いたいんだお前」
けれど哉也はあっさり私の言葉をスルー。やっぱりこいつには敵わないと溜息をついた。そして同時に思う。
(いや、敵わなくていい。コンナ性格ノ悪イ奴ナンカ)
「はい、これ。アンタ宛」
色々言いたいのを呑み込み、それだけ言って白い封筒を差し出す。「香宮哉也 サマ」という印字の宛名以外何も書かれていない、真っ白な封筒。封を止めるのもハートみたいな可愛いものじゃなく、ただののり付けだ。切手さえ貼られていない。
「ラブレター……じゃ無さそうだなコレ。誰からだ?」
「私に聞かれても……ポストに入ってたのを持ってきただけだし」
今更だけど、私と哉也は別々に暮らしている。哉也は父親や祖母と住んでいて、私は母と2人暮らし。色々詮索されると面倒なので、学校では他人で通している。顔は余り似ていないので気付かれない。……けれど時々、同級生に「咲希に似た人見かけたんだけどー」と言われてゾッとする。似ているだなんて。しかもアイツは言われないらしいから、尚更腹立たしい。
……また話が逸れてしまった。とにかく私達は兄妹である事を隠しているんだけど、昨日郵便受けを覗いたら哉也宛のものがあったから、手渡すべくこうして呼び出したのだ。
「ふうん……」
興味があるんだかないんだか、鼻を鳴らした哉也は封筒を開ける作業に取りかかる。のり付けを破るのが面倒だったらしく、乱暴にもぴりぴりと端を破った。