表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/74

59

投稿が遅くなり申し訳ありません。

こちらも更新を再開します。

 俺が2Leg開始の合図をすると雪菜が驚いた顔でスローイングラインの方へと歩いていく。

 初めは雪菜の顔を見て心配になったが、顔つきは先程よりもスッキリしており、肩の力が抜けているように見えた。

 これなら1Legみたいなことは起きないだろう。

 

「どうやら雪菜ちゃん立ち直ったみたいじゃん」」


「そう見えますか?」


「何かまととぶってるんだよ。お前が1番そう思っているくせに」


 戸田さんはそう言うと豪快に笑いスローラインに立った雪菜のほうを見る。

 俺も戸田さんの意見に賛成だが、自分の考えが見破られているような気がして嫌なので憮然とした表情をした。

 

「雪菜ちゃん投げるぞ」


「そうですね」


 俺が憮然とした表情で見つめる中、雪菜の投げた第1投目は20のシングルに入る。

 1投目が無事に20のシングルに入った時、誰にもわからないようひそかにガッツポーズをしたのは内緒である。

 

「お前、公平な立場なのにそんな事してていいのかよ?」


「何の話ですか?」


 隣にいた戸田さんは俺のガッツポーズをしっかりと見ていたらしい。

 ただ、俺のことをあきれた様子で見る所か、ニマニマと楽しんでいるようできみが悪い。

 言いたいことがあれば言えばいいと思うのだが、後で俺が佐伯さんに言いつけることもわかっているので本人も言わないのだろう。

 まぁ、後で佐伯さんにあることないこと吹き込んでお仕置きをしてもらおう。

 その後の雪菜は2投目が20のダブルで、3投目は20のトリプルに当たりMARK AWARD。

 合計得点60点で上々のスタートをきったように見えた。

 

「雪菜ちゃんも意外とやるな」


「元々雪菜は501よりもSTANDARD CRICKETの方が得意でしたから。これぐらいは当然です」


「相変わらず雪菜ちゃんには辛口なこって。まっ、これも愛情の裏返しか」


「何か言いましたか?」


「何でもない」


 先程から俺の隣にいる戸田さんのニヤニヤ笑いがうざくなってきた。

 これならさっきのように男子の方に行ってくれたほうがましである。


「それよりも宮永さんが投げますよ」


「あぁ、飛鳥ちゃんもう投げるのか」


 今度はスローイングラインに宮永さんがつく。

 その目は真剣そのもので、いつもクラスで見ている彼女とは全然違う。

 俺と戸田さんが緊張しながら見守る中、宮永さんの1投目は19のトリプルに入った。

 

「宮永さんわかってますね」


「あぁ、俺もSTANDARD CRICKETの戦略はみっちりと叩き込んだからな」


 そういうと戸田さんはニヤリと笑う。

 

「雪菜が20の陣地を取って点数を稼ぎに来たから、宮永さんも19の陣地を取って点数を稼ぎに来たって所ですよね?」


「そうだ。1投目で相手の陣地を潰して新しい陣地を作る手間よりも、相手よりも多くの点数を稼ぐ方を優先したわけ」


「だから19の陣地を先に取って、点数で雪菜に勝とうとしてるんですね」


「何よりあそこなら失投しても16や17の陣地が近くにあるから保険がきく。それぐらい俺が説明しなくても飛鳥ちゃんはわかってると思うけどな」


「宮永さんって意外と頭もいいんですね」


 そんな話をしているうちに宮永さんが2投目を投げる。

 彼女が投げた2投目も19のトリプル。

 そして注目の3投目は17のシングルに当たった。

 

「これで60対57。今の所は雪菜優勢って所か」


「まだわからないぞ。お互い陣地は1つずつ。点数の上では雪菜ちゃんが上だが、戦略次第ではまだどうにでも覆せる」


 戸田さんの言う通り、まだ1ラウンド目が始まったばかりなのでこの段階で試合がどうなるかわからない。

 出だしはよかったが2ラウンド目以降調子が悪くなることもあるため、ここらからの2ラウンド3ラウンドの結果も重要となってくる。

 待機場所へ戻ってくる宮永さんとスローイングラインへと歩いていく雪菜がすれ違う。

 

「雪菜ちゃん投げるぞ」


「わかってます」


 雪菜は落ち着いた様子でスローイングラインに立ち、ダーツの矢を投げた。

 その矢は真っ直ぐ17のトリプルに向かっていき命中する。

 

「これは貰ったかな」


 俺はひっそりとそうつぶやいてしまうが、雪菜の2投目が16のダブルで3投目が19のシングル。

 ここで16と19のトリプルに当てられなかったのが痛い。

 特に19はトリプルに入っていれば、宮永さんの得点チャンスを潰せていただけに、この2投は雪菜にとって大きな痛手である。

 これなら1本20の陣地に入れて得点を稼いだ方がましだった気がする。

 

「『これは貰ったな(キリッ)』とか言ってたのはどこの誰だっけな」


「まだ試合は終わってませんから」


 隣にいる戸田さんは雪菜が失敗したことに対して得意げな顔をしている。

 正直この人の顔はむかつくが今は目の前で行われているダーツの試合に集中したい。

 スローイングラインの方へと目を向けると、宮永さんはこの試合を楽しんでいるかのような雰囲気である。

 スローイングラインに立った宮永さんは第1投目から見せてくれる。

 

「いきなり19のトリプルですか」


「それだけじゃない。飛鳥ちゃんはここからだ」


 意味深な戸田さんの発言を残し、宮永さんが投げた2投目は16のトリプルに辺り3投目は17のダブル。

 60対114で大幅なリードを許した挙句、16のゾーンが取られ17のゾーンが閉じてしまった。

 陣地としては19と16のゾーンを取っている宮永さんに対して、雪菜は20のゾーンだけ。

 得点的にも陣地的にも追い込まれていて、雪菜が精神的にあせっていないか気になるところである。

 

「これは勝負あったかな」


「戸田さん、それは死亡フラグですよ。雪菜はまだ勝負をあきらめていません」


 スローイングラインに向かう雪菜の目はまだ死んでいない。

 これならまだまだ勝負はわからないし、こういうピンチの時に発揮する雪菜の底力は期待できる。

 

「お前の雪菜ちゃんに対する信頼は本当に厚いな」


「STANDARD CRICKET限定ですけどね。この種目に関しては雪菜は柚子ちゃんと互角に戦っていましたから」


「そうなのか? お前が言ってることが本当ならこりゃあ厄介なことになるかもな」


 戸田さんも柚子ちゃんのダーツの腕前に関してはよく知っている。

 知っているからこそ、柚子ちゃんと互角に戦った雪菜のことをここまで警戒しているのだろう。


「さて、投げますよ」


 雪菜がボソッと口を動かした後、ダーツの矢が雪菜の手から放たれその矢が20のトリプルに当たる。

 俺は心の中でガッツポーズをしつつ、雪菜の方を見ると落ち着いた様子で的に狙いを定めている。

 1Legとは違い、これなら期待が出来る。


「グリーピングを‥‥‥‥」


 そうつぶやいた雪菜の2投目は19のトリプルに辺り、3投目は16のトリプルでWHITE HORSE。

 例えこのラウンドで起きたことが奇跡だとしても、この土壇場で雪菜はしっかりとやってくれた。


「これで120対117で雪菜がリード。しかも宮永さんの陣地を全て閉じた」


「さっき17じゃなくて20を閉めておけば‥‥‥‥たぶん飛鳥ちゃん自信がなかったんだろうな」


 俺の隣で戸田さんが何やら愚痴をこぼしていた。


「飛鳥ちゃんもさすがにこれは堪えるだろうな」


 その後は戸田さんの言った通り、宮永さんは20を狙うが3本ともシングルゾーンに入ってしまう。

 一応20は閉じたが、残ったのは18のゾーンと15のゾーンとBULLの3箇所でどちらの陣地でもない所である。

 これで雪菜が18のゾーンでも取ろうものなら、雪菜が圧倒的に優位となる。

 

「本当にいい試合だ」


「そうですね。こんなにレベルが高い試合、早々見れませんよ」


 俺は興奮気味に戸田さんに語りかける。

 3ラウンド終了時点で7つの的の内4つが既にしまっている。

 こんなSTANDARD CRICKETはプロの試合でも早々お目にかかれない。

 周りの人達も固唾を飲んで見守り、男子の部を見ていた人達まで、試合そっちのけでこちらの試合を見に来ている。

 そんな観客がどんどん増える中、雪菜がちらりとこちらを向きウインクをしてきた。

 俺はその雪菜の合図に対してぶっちょうずらで返し、それを見た雪菜が一瞬クスっと笑った気がした。

 

「今雪菜ちゃんお前にウインクしなかったか?」


「それは戸田さんの気のせいですよ」


「気のせいじゃないだろ。絶対お前に向かってウインクしてた」


 戸田さんの不毛な追求を無視して、俺は雪菜の方へと視線を向ける。

 雪菜もさっきの宮永さんと同様楽しげな様子でスローイングラインに立ち、ダーツの矢を的に向かって投げる。

 雪菜の1投目は真っ直ぐ飛んでいき、18のシングルに当たった。

 

「結構まずいな」


 戸田さんが青い顔をする中、2投目は18のトリプルで3投目は18のダブル。

 174対117で雪菜がリードを広げた。

 宮永さんもその裏の4ラウンドで15のゾーンを取るが、雪菜に5ラウンド目で15のゾーンを潰されてしまう。

 残るはBULLただ1つ。宮永さんにとっては勝負のラウンドである。

 

「飛鳥ちゃんの勝負所か」


「まだ逆転の可能性はありますよ」


 ここで宮永さんがインブル3回かシングルに6回当たれば75点獲得でき、逆転できる。

 そう簡単に当たるはずはないが、宮永さんの501を先程見ていたものとしては何やら嫌な予感がする。

 そんな予感を抱きつつ、スローイングラインに発った宮永さんを見る。

 彼女は狙いを定めると、ゆっくりと自分のダーツの矢を投げた。

 

「1投目はアウトブルか」


 戸田さんがつぶやくのと同時に宮永さんは2投目を投げ、それはインブルに入る。

 

「これでBULLはつぶれた。とりあえず、このラウンドでは決着はつかないな」


 俺が安心していると、宮永さんは最後の1投はBULLには当たらない。

 これで雪菜の試合の勝利は決まった様なものだと6ラウンド目が始まる前は思っていた。


「あっ」


「あいつは何をしてるんだよ‥‥‥‥」


 俺があきれているのは雪菜の6ラウンド目にある。

 こともあろうか雪菜はアウトブルに1投当たっただけで2投目、3投目はBULLから外れてしまう。

 これで宮永さんにもチャンスが出来てしまった。

 

「これで飛鳥ちゃんにもチャンスが出来たな」


 隣にいる戸田さんは相変わらず楽しそうである。

 その宮永さん1投目、2投目とアウトブルに入れられる。

 そして運命の3投目、これがBULLに入ってしまうとその時点で雪菜の負けが決まってしまう。

 

「外れてくれ。もう1度雪菜にチャンスを」


 俺がそう願う中、宮永さんが投げた1投はBULLを外れた。

 その差は1ビット。もう1ビットでも内側に入っていれば雪菜は負けていたのでギリギリの所で命拾いした形である。

 

「危なかった」


 俺が1人安堵する中、次のラウンドで雪菜がBULLを閉めて2ゲーム目は雪菜の勝利に終わる。

 この肝を冷やすような試合がこの後も続くと思うだけで、俺の胃が切りきりとするのがわかった。


ご覧いただきありがとうございます。


感想をいただけるとうれしいです。


私事で色々あり、更新が滞っていました。

長い間待ってくださった方にはご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません。

これからの更新については活動報告の方で少しだけ触れていますのでそちらをご覧下さい。

これからも拙作共々宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ