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遅くなってすいません。

4章のプロローグです。

 あの文化祭の騒ぎから早いもので1ヶ月が経過した。

 現在は12月上旬、もう2週間も立てばクリスマスである。

 去年のクリスマスといえば叔父さんの店に来てダーツをしていた以外、特に外出はしていない。

 あの時は帰り道でうかつに駅前に出たばかりに大量のカップルを見る羽目になり死にたくなったものである。

 今年はそんなことにならないようにちゃんと帰る道のりを考えなければいけない。

 そんなことを考えながらも俺は今日も店のカウンターで暇を持て余していた。

 日曜日の昼間の時間帯はやはり人が少ない。

 この店のメインの客層は夜なので昼間の明るいうちは暇である。

 

「もうすぐクリスマスですね」


「そうだな」


 カウンターで俺と共に仕事をしている佐伯さんもボーっとした瞳で心ここにあらずである。

 ちなみに叔父さんはいつものように常連さんと一緒にビリヤードを楽しんでいる。

 この光景から見てもうちの店が相当暇だってことがわかる。

 

「そういえば今年のクリスマス健一はどうするんだ?」


「どうするも何も俺は今年もここで過ごしますよ」


「なんだつまらない。雪菜ちゃん達とどっか行けばいいのに」


「何でそこで雪菜の名前が挙がるんですか?」


 つまらなそうにそっぽを向く佐伯さんの表情を見ながら俺は嘆息をはく。

 

「大体クリスマスはあれ( ・ ・ )があるじゃないですか。バイトを休めるはずがないですよ」


「それもそうだな」


 2人でそんな話をしているといつものようにカランコロンという小気味いい音と共に入り口のドアが開く。

 ドアから出てきたのはこの店の常連となっている姉妹だった。

 

「「こんにちは」」


 元気のいい挨拶と共にとてとてとこちらに向かってくるのは柚子ちゃんである。

 彼女は今日も愛嬌のある笑顔をこちらに向けてくれる。


「こんにちは柚子ちゃん。今日も可愛いね」


「ありがとう」


 そういう柚子ちゃんはどこか満足げだった。

 あぁ、この笑顔が見れるだけでも俺は幸せだ。

 

「健一君、私は?」


「雪菜? まぁ、雪菜はいつも通りかな」


「いつも通りって‥‥」


 店に来た早々雪菜はうなだれていた。

 その様子を見て佐伯さんがあきれたようにため息をつく。

 

「健一、お前は女心をわかっていないな」


「佐伯さんには言われたくないです」


 先月池田の爺さんの店に行った時、散々戸田さんを振り回していた佐伯さんには絶対言われたくない。

 

「それよりも健一は雪菜ちゃん達にあのこと聞かなくてもいいのか?」


「あぁ、そうですね」


「あのことって?」


 小首をかしげ不思議そうにする雪菜と柚子ちゃん。

 佐伯さんが俺に言っているのはクリスマスの話である。

 確かに雪菜達にもそのことを話さないといけない。

 

「その‥‥雪菜と柚子ちゃんはクリスマスって暇か?」


「クリスマス?」


「ひまーー」


 元気よく手を上げて予定を告げる柚子ちゃんに対して、雪菜は小首をかしげて不思議そうにこちらを見ている。

 どうやら彼女はいまいち俺の言っていることをわかっていないようだ。

 

「そう、クリスマスって予定ある?」


「健一君が私に聞いてるの?」


「そうだよ。他に誰がいる?」


 ようやく意味がわかってきたようで、雪菜の表情も先程とは違い明るい。

 先程のむすっとした表情とえらい違いだ。


「私も特に用事がないし、その日は何も予定ないよ」


 くい気味に自分の予定を話す雪菜である。

 てっきり達也や宮永さん達とクリスマスパーティーでもやるのかと思っていたがどうやら違うらしい。

 

「わかった。じゃあその日は雪菜も参加ってことで」


「参加?」


「そう、雪菜も出るだろ? うちで開催する店舗大会」


 雪菜に話したのはうちの店で開催される店舗大会である。

 大体2ヶ月に1回ペースでうちの店では開催をしているが、12月だけはちょっとおもむきが違う。

 今まで文化祭もあったため、誘う機会がなかったのだがクリスマスに行われる大会はいつもとは違い特別なので誘うのにはもってこいだろう。

 

「毎年12月24日にうちの店でやってるんだよ。去年も開催して盛況だったからな」


「それにしてもあの時はすごかったな。戸田のパーフェクト優勝」


「えぇ、戸田さん自身も過去最高の出来だったって言ってましたしね」


 佐伯さんと俺が話すのは去年のクリスマス大会の話である。

 あの時は俺が男子側の審判をしていたため参加していない中、男子の部では戸田さんが圧倒的強さで優勝をした。

 元々推薦で大学進学を決めていて時間に余裕があり、尚且つダーツのプロテストを受けるために毎日うちの店に来て必死に練習をしていたためこんな結果になった。

 

「そんなにすごかったの?」


「あぁ、あの時の戸田さんは神がかっていたからね」


「でも、健一が出ていれば違ったんじゃないのか?」


「いや、俺が出ていても負けていましたよ」


 謙遜とかそんなものではなくあの時の戸田さんのダーツは神がかっていた。

 大会が行われる前に何回か勝負したが、全然勝てなかったから当時戸田さんがどのくらい強かったかがよくわかる。

 

「でも今年は戸田さんもプロになったんで出れませんからね。男子は誰が優勝するんでしょうか?」


「私もわからない。今年は混戦っぽいしな。それよりも私は男子よりも女子の方が興味があるんだよ」


 そういう佐伯さんは雪菜と柚子ちゃんの方に向き直った。

 

「今年は雪菜ちゃん達も出るからな。今年の女子は面白い試合になりそうだ」


「柚子も」


「そうだな。柚子ちゃんもだな」


 佐伯さんは柚子ちゃんの頭を優しくなでていた。

 柚子ちゃんは頭をなでられてどこか気持ちよさそうである。

 

「私は柚子ちゃんが優勝候補で、対抗馬は雪菜ちゃんって所かな。健一はどう思う?」


「俺ですか?」


 俺は2人のことを見て誰が優勝するのかを真剣に考えてみた。

 ここ最近の戦績だと雪菜も柚子ちゃんに負けないぐらいの成長を見せているため一概にどちらが強いかはわからない。

 2人と毎日のようにダーツをやっていて成長を真近で見ているからこそ余計に悩んでしまう。

 

「う~~ん、そうだな‥‥‥‥」


 俺が真剣に悩んでいると目の前の2人の姉妹から視線を感じる。

 先程2人が佐伯さんに向けた視線とはうって変わり、2人が俺に向ける視線は真剣そのものだ。

 それだけに俺はどうすればいいか悩んでしまう。


「‥‥‥‥俺も佐伯さんと同じで柚子ちゃんが優勝すると思う。その対抗馬で雪菜だと思うな」


 そのことを聞くと柚子ちゃんは満足げに頷き、雪菜は再びむくれていた。

 

「健一君が私のことをどう思っているかよくわかった」


「いや、俺も雪菜は結構いい所まで行くと思っているから」


「絶対にその下馬評覆すもん」


 この時ふくれっつらの雪菜は何故か俺には怒っているように見えた。


「ちょっとその予想待った」


 店のドアが勢いよく開いたかと思うとそこから戸田さんが店に入ってくる。

 乱暴にドアを開けたことでドアについている鐘がうるさく店に鳴り響くため、戸田さんの行動ははっきりいって迷惑この上ない。

 

「俺はその2人以外が優勝すると予想するぜ」


「突然何を言い出すんですか? ってか2人以外って誰ですか?」


「それは後々のお楽しみだな。店長にはもう伝えてある」


「教えてくれてもいいじゃないですか」


 そういうと戸田さんは快活に笑う。

 その顔が小学生がいたずらを成功させた時のように思えて、俺と佐伯さんはしらけた表情で戸田さんを見つめていた。

 

「まぁ、この際戸田さんは置いておいて‥‥‥‥とりあえず2人共参加ってことでいいよね」


「「うん」」


 2人が満足げに頷いたのを見て俺は手元の参加者名簿に2人の名前を書いた。

 

「とりあえず2人共いい所までいけるといいね」


「そうだね。それよりも健一君って期末テストの勉強した?」


「期末テスト?」


 雪菜の言葉に俺は思わず首を傾げてしまう。

 

「そうだよ。明日から期末テスト始まるじゃん。期末テストで赤点の人は補習だし。もしかして健一君忘れてた?」


「うん」


 こうしてテスト前だということに気づいて、そのことに一喜一憂しながらこの日は過ぎていく。

 バイトが終わった後、俺が必死に勉強したのは言うまでもなかった。


ご覧いただきありがとうございます。


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