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今回はいつもより短いです。
あれから1時間近く時間がたつが俺がわかったことは、彼女が素人ということだった。
投げ方は毎日投げ込んでいるせいかフォームは中々さまになっているが、いかんせんグリーピングが出来ていない。
グリーピングとは、狙っている箇所に目線と持っているダーツの焦点を合わせることをいう。
これができると自分の意図した所にダーツの矢を投げることがすごく楽になる。
多分彼女にこれを教えてあげれば、もっとうまくなるだろう。
ただそれとは別に俺には彼女に対して許せないことがある。
それはさっきから彼女がずっとから投げという行為を行っていることだ。
普通、ゲームセンターに置いてあるダーツ台でゲームをするには1回100円が必要だ。
それはどんなダーツのゲームをするにも必要なことである。
お金を入れなければダーツのゲームはできない。
ただ、ダーツ台に矢をあてるだけなら、実はお金はいらないのである。
実際、練習としてお金を入れずにダーツの矢を投げる人は少なからずいる。
つまりから投げとは、お金を入れずただダーツ台で遊んだり練習を行う人のことを指す。
ただ、ダーツも腕の運動であるため、ある程度ウォーミングアップをしないといけない。
なので通常は何投かから投げをして腕を温めた後、お金を入れてやる場合が多い。
ただ、この子はもう1時間程から投げを続けている。
明らかにウォーミングアップにしては長すぎるし、全くお金を入れるそぶりを見せない。
流石に、そろそろ注意するべきだろうな。
俺が彼女に注意をしようと出ていくと、彼女の所にゲームセンターの店員がやってきた。
どうやら、少女となにやら口論しているらしいが、何を話しているかわからない。
わからないが多分から投げのことを注意しているのだろう。
店側としてもお金を入れないでやる客は迷惑だから、このようなことをするのは当たり前だ。
その店員は一通り少女と話終えると、やがてテーブルに置いてあるダーツの矢を回収して去って行った。
自業自得というやつだ。
そう思いながら俺はゲームセンターを後にしようと踵を返す。
ふと少女はを見ると、彼女はふくれっ面をしながらダーツ台の方を眺めている。
彼女の制服を見るに、多分この辺の中学生だろう。
そう思うのは背丈も俺の胸ぐらいしか身長がなく、高校生にしては小さいからだ。
ここは立ち去るのが無難だと思うが、何故か俺の足は動かず、彼女をこうして眺めている。
彼女をどうしてもほっとけない。
それはなぜだがわからないが、彼女をほっといては行けない気がする。
なぜなんだろう。
ふと彼女のふくれっ面を見るとあることを思い出した。
『少しぐらいいいのに、なんでダメなの。なんでやっちゃいけないの?』
俺は昔だだをこねていた自分の光景を思い出してしまい、クスッと笑ってしまった。
そうか。彼女は俺に似ているんだ。昔の俺に。
いつの間にか俺は自分では予想をしていなかった行動に出ていた。
それは、ダーツを好きな人がダーツができないことを知っているから起きた行動なのかもしれない。
もし達也がこの光景を見たら「ありえない」と言ってしまうような行動である。
今までの自分ならこんな行動は絶対に取らないだろう。
それぐらいの行動をいつの間にか俺は彼女に対して取っていた。
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