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今回はいつもより長いので2話に分割しました

週末の土曜日、俺がバイトしているダーツショップの最寄駅で柚子ちゃん達と待ち合わせをした。

ここを選んだ理由は、柚子ちゃんと遠野さんの最寄り駅がこの駅だったことと俺も待ち合わせの前にバイト先に用があったからだ。

ちなみに用とは佐伯さんが俺の服装をチェックすることである。

集合時間の1時間前に店内に入ると、中で待ち構えていた佐伯さんにありとあらゆることを指摘された。

『なぜパーカーなんだ』とか『眼鏡はするな』とか『髪ぐらいセットしていけ』とか俺の心が折れるぐらいの罵詈雑言をいただいた。

その中で唯一指摘されなかったのがジーパンである。

佐伯さん曰く『これなら別に大丈夫だろう』ということらしい。

その他は佐伯さんが持ってきた(戸田さんから奪った)洋服を当てて、コーディネートされた。

おかげさまで始めに着ていたものとは印象がだいぶ違う。

グレーのジャケットに紺のジーパン、靴も黄土色おうどいろのチャッカーブーツである。

ブーツなど履いたことがないので妙に歩きにくい。

おまけに眼鏡もはずされ、髪型もバイトをしている時と同じ髪型である。

別にダーツ盤を取りにいくだけなんだから、こんな格好しなくてもいいと思うけどな。

それから佐伯さんから解放されて慌てて待ち合わせの駅へ向かい、集合の10分前に無事つくことができた。

現在の時刻は10時57分。

柚子ちゃん達との待ち合わせ時間は11時なので、彼女達ももうすぐ来るはずである。


「あっ、お兄ちゃんだ」


遠くから走ってこっちに向かってくるのは柚子ちゃんである。

こちらに向かってくる柚子ちゃんはいつもの柚子ちゃんとは違い、なんだか大人っぽかった

ネイビー系のニットアンサンブルにチェックのキュロット。

何より足を覆うニーソが俺の目からは魅惑的に見える。


「いつもの柚子ちゃんも可愛いけど、今日の柚子ちゃんもすごく可愛いよ」


「ありがとう。お兄ちゃんもいつもよりもかっこいいよ」


こっちを見てはにかむ柚子ちゃんはいつにもまして可愛かった。

あぁ、今日は俺もう死んでもいいかも。


「ごめん。橘君、遅くなって」


顔を上げて前を見ると遅れて遠野さんも姿を現した。

遠野さんもいつもと服装が違う。

制服しか見ていないせいか、いつもの遠野さんより100倍可愛く、きれいになったいた。

胸の辺りにヒールの靴がプリントされたスモークピンクのシャツに首元を彩る白いティペッド。

柚子ちゃんと似たタイプのキュロットパンツが彼女を可愛く仕立て上げていて、足元のニーハイブーツが彼女の魅力を引き立てている。

近くに来る遠野さんの顔を見るとプルプルと柔らかそうな唇が光って見え、その極上の唇に吸い込まれそうになる。

多分リップか何かをつけていると予測するが、遠野さんがこんなに可愛く見えたのは初めてである。


「橘君、どうしたの?」


「いや、なんでもないよ」


俺は彼女に動揺を悟られないように必死である。

これならクラスの男子陣に人気があるのもうなずける。

こんな人と今日俺は出かけて大丈夫なのだろうか。

俺はなるべく遠野さんを直視しないようそう返事をした。


「今日はこれからどうする?」


「あぁ、大体ここから40分ぐらいで最寄り駅に着くからそこから歩くよ」


その後、俺達は駅の改札口まで歩き、共通乗車カードを改札にタッチしホームに下りた。

ただ、1つ気がかりだったのはニコニコの柚子ちゃんに対して、遠野さんがやや不機嫌だったことである。

どうして遠野さんが不機嫌なのか、この時の俺は分からなかった。







☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★







「ここが一応目的の駅なんだけど‥‥」


「わぁ~~、広いね」


「こら、柚子。おとなしくしてないと」


改札を抜けた後の人の多さに柚子ちゃんは驚いているようだ。

遠野さんは何度か都心にあるこの駅に来たことはあるかもしれないが、柚子ちゃんにとっては初めて都心に来たのだから仕方ないだろう。


「こっちから出るよ」


俺は2人に声をかけ出口まで誘導する。

ここの駅は出口がいくつもあり、駅構内も入り組んでいる。

しかも東と西の連絡通路はないため、1度間違うともう1度駅構内に入り反対の出口を目指さないといけないため非常に面倒くさい。

柚子ちゃんはともかく遠野さんなら達也達とよく遊びに行っているようだし、このぐらいの人ごみは大丈夫だろう


「うぅ、人が多いよ‥‥」


「もう少しで出口だから」


前言撤回、やっぱり遠野さんも苦手みたいだ。

遠野さんと柚子ちゃんが苦戦する中、やっとの思いで階段を上り地上に出た。


「わぁ~~」


柚子ちゃんが感嘆の声を上げているのはこの光景だろう。

大きなビルが立ち並ぶ通りに、様々な所に立ち並ぶおしゃれなお店。

地元で栄えている駅の通りとは比べ物にならないほどの賑わいをみせる町並みが、そこには広がっていた。


「久しぶりに来たな。この人ごみに酔いそうだ」


「橘君、大丈夫?」


「大丈夫だ。問題ない」


気を取り直して、ダーツショップまでの道筋を頭の中で描く。

頭の中で描く中、もうすぐお昼時だということに今更気づいた。


「そういえば2人ともお昼って食べた?」


「まだ食べてない」


「そういえば、朝ごはんも食べるの忘れちゃったね」


「じゃあ先にお昼ご飯でも食べる?」


「食べたい!!」


元気よく返事するのは柚子ちゃんである。

目が輝いている所を見ると彼女は相当お腹が減っているようだ。


「お姉ちゃんがずっと服選んでいたから朝ご飯食べ損なっちゃった‥‥」


「こら、柚子」


なるほど、だからこんなに気合の入った服装だったのか。

だからって朝ごはんを抜いてしまうのもかがなものかと思うがこの際そこは目をつぶっておこう。


「柚子ちゃん、その服は自分で選んだの?」


「違う。お姉ちゃんが選んでくれたの」


「へぇ~~。遠野さんって服のセンスあるね」


「なっ‥‥」


これは素直な俺の感想である。

遠野さんの服装も柚子ちゃんの服装も十分すぎるほど可愛い。

多分2人だけでここの通りを歩いたら、確実にナンパされるのではないだろうか。

視線を柚子ちゃんから遠野さんの方に変えると彼女の顔は赤くなっていた。


「大丈夫? 熱でもあるの?」


「大丈夫だから‥‥‥‥それよりもさ、本当に可愛い?」


「可愛いに決まってるよ」


そういうとさっきまで不機嫌だった遠野さんの雰囲気がどこかやわらかくなったような気がした。

そりゃ可愛いに決まってるよ。

この格好を誰が見てもそう思うだろう。


「だっていつもは天使のような柚子ちゃんが大天使に見えるもん。ミカエルって世の中にいるんだなって今日の柚子ちゃんを見たとき思ったし‥‥」


次の瞬間、遠野さんが持っていたバッグが俺の顔に直撃した。

構えていなかったせいか、俺はその場に尻餅をついてしまう。


「橘君なんか知らない」


「どうして」


遠野さんの雰囲気は先程までと同じような不機嫌なオーラを出している。

いや、先程よりも一層ひどくなっているように感じた。

俺が何をしたっていうんだよ。

そんなギスギスとした空気の中、俺達はお昼ご飯を食べるお店に向かった。

5分程歩くと目的の店につく。

外からは珍しい外観で店の前には暖簾のれんがかかっており、脇には待ちのお客さんが座れるようにベンチが並べられている。


「ここって‥‥」


「あぁ、俺がよく行くラーメンの店」


遠野さんはお店を見て唖然としていて、柚子ちゃんは喜んでいる。

元々柚子ちゃんが前に『ラーメンが食べたい』といっていたから、とりあえずこの店に案内をした。

俺としてもちょくちょくこの店のラーメンは食べに来るから胸を張ってお勧めできる店である。


「初デート‥‥ラーメン」


遠野さんは何やらつぶやいているようだが、俺には彼女の声を聞き取ることはできなかった。


「お兄ちゃん、ここのおすすめって何?」


「おすすめかは分からないけど、ここのワンタンラーメンはおいしいよ」


「ラーメンにワンタンが入るの?」


「うん。絶品だから食べてみて」


待っている間、俺は柚子ちゃんと2人でおすすめのラーメンの話をしていた。

遠野さんはというと隣で何やらぶつぶつとつぶやいている。

先程からその一言一言が呪詛のように聞こえてきて非常に怖い。

とりあえず今はそっとしておこう。

数分してお客さんが何人かでていき、40代ぐらいのおばちゃんが俺達を呼んだので中に入りカウンターの席に座る。

座る場所としては左に遠野さん、中央に俺、右に柚子ちゃんという順番である。


「お兄ちゃん、何にする?」


「えっとワンタンメンを2つ‥‥遠野さんは何にする?」


「橘君のおすすめでいい」


どうやら遠野さんはまだ不機嫌ならしい。

どうして不機嫌なのかは俺はいまだに分かってない。


「じゃあワンタンメンを3つでお願いします」


「はいよ」


俺がそのように注文すると店主はラーメンをゆで始めた。


「遠野さん、どうしたの? さっきからちょっと不機嫌そうだけど‥‥」


「なんでもない」


遠野さんの機嫌をどうにかして直したいのだがうまく彼女に書ける言葉が思い浮かばない。

こんな不機嫌な遠野さんをどうしろって言うんだよ。

誰か知っている人がいたら教えてくれ。

こんな時に宮永さんや達也がいてくれればどれだけ心強かっただろうが。

この時生まれて初めて、達也の重要性を感じた。


「はい、お待ち」


店主が俺達の前にそれぞれどんぶりを置く。

そのスープを見て遠野さんが驚いていた。


「ラーメンなのにスープが透明できれい」


「そりゃそうだよ。ここは鶏がらのスープを取っていて、あっさりしてるんだから」


遠野さんは蓮華れんげとお箸を取ると麺を一口すする。


「‥‥‥‥おいしい」


「それはよかった。この店を選んだかいがあったよ。柚子ちゃんはどう?」


「おいしいよ、お兄ちゃん。特にワンタンがすごくいい」


そういい、柚子ちゃんは夢中になって食べている。

ずるずると食べる音が聞こえるので、柚子ちゃんは無心で食べているのだろう。


「2人の口に合ってくれてよかった。遠野さんがあまり脂っこいもの好きじゃないと思ったからこの店選んだんだけど正解だったね」


「橘君、私の好みも考えてくれたの?」


「当たり前だよ。3人で来てるんだから、遠野さんの口に合わない所なんて行くわけないでしょ」


まぁ、事前情報として達也が宮永さん達とご飯食べに行った時の話を聞かされていたからできた芸当だがな。

学校の昼休みに達也と昼食を食べている時、宮永さんは脂っこいものはあまり得意な方ではない話を自慢げにしていたからこの作戦が立てられたわけである。

ちなみにこの話を聞いた時、このリア充をどこの墓場に埋めてやろうか本気で考えるほど殺意が沸いたが、今回は達也もいい仕事をしてくれたので不問とした。


「橘君、私のこと考えてくれてるんだ」


「当たり前だよ。それに今回は柚子ちゃんの意見を反映させたけど、次は遠野さんの意見を反映させるから考えといてね」


「それって‥‥」


「ダーツ盤をまた返しに来る時ここに来るでしょ。その時またお昼を食べると思うからどんなお店がいいか考えといて」


「うん」


そういうと遠野さんもおとなしくラーメンを食べ始めた。

遠野さんからは先程までの不機嫌な空気は消えたように感じる。

とりあえず、これでよかったのかな。

そんなことを考えながら俺も目の前のワンタンラーメンを食べ始めた。


ご覧いただきありがとうございます


感想をいただければうれしいです。


柚子と雪菜とのデート?の後編は明日の今日と同じ時間に投稿予定です。

後編はダーツ要素がふんだんに盛り込まれていると思います‥‥‥‥たぶん。

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