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「何ぐったりしているんだよ健一。まるで死にかけの蛇のようだな、」
にししと笑う佐伯さんをしり目に俺はダーツ&ビリヤード店のカウンターに突っ伏していた。
あの後の行動は普段の俺としては不本意極まりなかった。
駅についたので宮永さんと達也のグループと別れようとすると、宮永さんに「お昼ご飯一緒に食べよう」とせがまれ、押し問答すること10分弱。
何とかバイトに間に合わなくなるからということで俺は彼女達から条件付きで開放してもらった。
ちなみに条件というのも、遠野さんを家に送るというものである。
最初は「何で俺が送らなきゃならないのだ」とか思ったが、宮永さん曰く、「女の子1人の下校は危ないんだよ。ちゃんと男の子が送ってあげなきゃ。」というものだった。
電車なんだから危険も何もないだろうということを力説したが、宮永さんは納得せず、遠野さんも俺と一緒に帰るのを了承していることから遠野さんを家まで自転車で送るはめになる。
全く。面倒なことこの上ない。
ちなみにさっき帰り道で遠野さんが宮永さんと話していたのは、今日遊びに行くのをキャンセルするという話らしい。
その後、遠野さんの家の場所を聞いて見るとバイト先に結構近いことも判明した。
ただこの事実は誰にも言っていない。
当たり前だろう。
言った瞬間、達也達が俺のバイト先に入り浸ることがわかるからだ。
そういうことなので自転車を二人乗りで漕いで遠野さんの自宅に向かったのだが、実はこれが相当きつい。
特に坂道が本当にきつかった。
途中、遠野さんが「降りようか?」と言ってくれたがそれは断固お断りし、彼女の家まで向かった。
そして、なんとか彼女を家まで送り届けると今度はバイトの時間がギリギリになってしまい、慌ててバイト先へと直行するはめになってしまう。
余計な時間をくったたことと、遠野さんを家まで送りここまで全力で自転車をこいできた疲労が出てしまい、こうしてカウンターに突っ伏している。
我ながら情けないにも程がある。
達也みたいに体力があるならいいが、俺みたいなひ弱なぼっちじゃここまでが限界だろう。
今日はお客も少ないし、一日カウンターでぐったりしてようかな。
「何だよ情けない。もうすぐ柚子ちゃんもくるんだぞ。シャキッとしろシャキッと」
うわ言でもうちょっと、もうちょっとという俺は本当に情けないんだろう。
いいじゃないか。
お客さんは今皆無なのだから。
少しぐらいグータラしていたって。
「お前な……この姿を柚子ちゃんが見たら何と言うか……」
そんなことをしているとお店のドアが勢いよく開いた。
どうやら柚子ちゃんがきたようだがいつもと様子がおかしい。
なんか焦っているようだった。
ドアを勢いよく明けたと思ったら、ドアをふさぎ…っておい!
何で来てそうそうドアを塞ごうとしてるんだよ。
「柚子ちゃん、ここはお店のドアだから塞いじゃダメだよ。」
「お兄ちゃん、今だけ、今だけお願い。」
「ダメ。これは柚子ちゃんのお願いでも聞けないよ。ここにくるお客さんが入れないじゃないか。」
「でも……」
「でもじゃないよほら今開けるから」
そういい柚子ちゃんが抑えていたドアのノブを取ると、ドアが再び勢いよく開いた。
あまりに勢いよく扉が開いたため、俺はドアに頭をぶつけ尻餅をついた。
ドアから入ってきた人物は勢いよく、出てきてしまったため、俺に多い被さるようにして乗っている。
「大丈夫ですか?」
とっさに声をかけると目の前の女の子も「大丈夫です」と言う。
怪我はないようで良かったがどこか聞き覚えがある声だった。
その少女が顔を挙げると、俺は驚いてしまう。
目の前には先程まで、一緒の自転車に乗っていた遠野雪菜本人がいたのだ。
ただ遠野さんは俺に気づいていないのか、俺の顔を見て顔を真っ赤にさせると、急いでおれから離れた。
俺としては、心を落ち着けるのに必死だ。
何で遠野さんがここにいる?
いや、兆候はあった。
帰り道の話し合いでそれとなく行っていた気がする。
それに妹さんがゲームセンターってフレーズなんかほぼ柚子ちゃんのことを指していたのだろう。
向こうも向こうで何やらブツブツ言っているがこちら側にはよく聞こえない。
落ち着け。ここはとりあえず冷静に、挨拶をすればいいんだ。
今の俺はいつもの俺とはかけ離れた格好なんだ。
なに常連さんや佐伯さんや柚子ちゃん、それに伯父さんですら気づかなかったんだ。
遠野さんが気付くはずがない。
ここはにこやかな営業スマイルで逃げられるはず。
「いらっしゃいませ。ダーツ&ビリヤード店と「橘君が言ってたバイト先ってここのことだったんだ。」えっ……」
遠野さんの発言に俺は呆気にとらわれた。
だって今まで、誰もわからなかったんだよ。
それを、ついさっき話したことしかなかった女の子に当てられるとは思わなかったよ。
「いえ、お客様。それは人違いかと思います。お客様のご友人とお間違いになられたのでは。」
「でも……橘君……だよね?」
相手はまだ疑っているがここはチャンスだ。
ここでたたみかけて人違いと思わせよう。
「健一、ここは私に任せてくれないか?」
いつの間に近づいてきたのか分からないが、こっそり耳元で俺にそう話す佐伯さん。
普段は散々、俺をからかい貶めてきた人だがこう言う大事な時はしっかりしている。
さすが大学生。決める所はしっかり決めてくれるね。
そして俺の横に立ち、遠野さんを見つめる。
「そこの少女。こいつは、橘君ではないぞ。」
何故か上から目線なのが気になるがグッジョブ佐伯さん。
事実、遠野さんは佐伯さんの話を信じかけている。
いけ、佐伯さん。
頑張って俺の疑いを晴らすんだ。
「あいつは橘健一だ東都大学附属高校1年生。好きなものはダーツ、嫌いなものは人付き合いというかわった少年だぞ。そして、最近ロリコンに目覚めた変態な少年で年下を見ると鼻を伸ばして犯罪まがいなことまで手を伸ばそうと……」
「っておーーーい!!」
なにこの人はとんでも発言をしてやがる。
俺がいつ、柚子ちゃんを見て鼻を伸ばしたってんだ。
「柚子ちゃんを誘拐してきた時言ってたじゃん。『中学生は最高だぜ。あのニーソとか正に俺の好みだぜ』とか」
「そんな発言言ってないし、初耳だわ。それとナチュラルに誘拐とか言うな。それだと俺、は・ん・ざ・い・しゃ」
やはり佐伯さんは面白がっているだけだ。俺が不利になるこの状況を絶対面白がっているだけだ。
「健一、お前は犯罪者じゃないぞ。性犯罪者だ」
「余計ひどくなってるじゃん」
全くこの人は何てことを言うんだ。
「やっぱりそうだったんだ。」
うんうんと遠野が頷いている。
遠野さん、誤解ですよ。
俺はロリコンでもなければ犯罪者でもありませんから。
柚子ちゃんと遠野さんなら俺は遠野さんの方が断然このみだし……って痛い。
横を見ると、柚子ちゃんが何時の間にか俺の横にきて不機嫌そうな顔をしている。
多分さっきのは柚子ちゃんが俺の脛を蹴ったからだろう。
一体なんだってんだよ。
それよりやばいって。
この店でバイトしてこんな姿でやっていることは絶対学校の人にはばれたくなかったのに。
ばれたら絶対からかわれるって……主に達也に。
「橘君……その……ごめんね。柚子が迷惑かけてて」
「いや、迷惑なんてかけてないよ。柚子ちゃんは人気ものだから」
「そうだよ。邪魔者はお姉ちゃんの方なんだから」
「柚子!!」
俺の後ろに隠れていた、柚子ちゃんがひょっこり顔を出して抗議したが、遠野さんの一言でまた俺の後ろに隠れてしまった。
「ごめんね。橘君。今柚子を連れて行くから。」
そういって遠野さんは柚子ちゃんの方に近づいて行く。
「やだやだ。久しぶりのダーツなのに、まだなにもやってないの」
「こら、お店の人に迷惑だから帰るよ。」
「お兄ちゃんは迷惑だと思ってるの?」
半泣き状態でこちらを見る柚子ちゃん。
どう見ても今日のダーツを楽しみにしてた顔だ。
こんな顔を見ると追い返せるはずがない。
「そういえばさ、遠野さんってダーツって興味ある?」
「ダーツは最近飛鳥とか島谷君達とやってるけど、よくわからないんだ」
「よければさ、今日ここでダーツやってかない? 柚子ちゃんもやりたそうにしてるし」
「その……お店の迷惑になるし、ルールもわからないし。」
そういうと俯いて何やらボソボソといっている。
「なら、ルールは俺が教えるよ。達也も言ってただろ。俺の方がルールには詳しいって」
「でも…。」
「それに、達也達とじゃダーツの楽しさとかって伝わらないだろ。それじゃあお金の無駄遣いじゃん。だったら今日はここでルールだけでも覚えておけば次達也達と遊ぶ時も面白いと思うよ。」
「それじゃあ橘君に悪いよ。」
「別にいいよ。お客さんまだいないし。それに可愛い女の子達とダーツやれるなんて俺にとって役得だしね」
「可愛い……女の子」
そういい、また彼女は顔を赤くなった。
「ダメかな。遠野さんと柚子ちゃんと俺の3人でやったら絶対楽しいと思うしよ」
「うん……少しだけならいいかも」
俺の後ろにいる佐伯さんは「この天然すけこまし」、とかなんかいっている。
その言葉が、誰に対して言われてることなのかは今の俺には理解できなかった。
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もう片方の作品も最新話を投稿しました。
宜しければそちらの方もご覧ください。




