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初投稿です。
宜しくお願いします。
「ねぇ、今日暇ならどこかいかない?」
「今日はバイトも休みだしいいよ~。何所か行くなら私、カラオケ行きたいなぁ~。」
「いいよ。じゃあ久美も誘って駅前で‥‥。」
帰りのホームルームが終わり、教室内は騒がしい。
周りを見渡すと、部活の用意をしているものもいれば、友達を誘って遊びに行こうとしているものもいる。
俺こと、橘健一もこの後バイトがあるため、帰りの仕度真っ最中である。
「よぉ〜健一。今日は暇かい?」
「暇じゃないし、今日はバイトだから。今日はお前とは遊びに行けないよ、達也。」
「今日はじゃなくて、今日もだろ。」
俺の言葉を聞くと、目の前にいる島谷達也は頭をガシガシと掻きながら、困った表情をしている。
達也からは「参ったなぁ~」という雰囲気が、ひしひしと伝わってきているが知ったことか。
おおよそこれから遊びに行くメンバーに勝手に入れられていたのだろう。
いつものことだが、達也は計画性がなさすぎる。
島谷達也は、中学校から続く俺の友人の一人である。
中学校から4年連続で同じクラスで、進学した高校のクラスも同じ。
腐れ縁とはこのことである。
容姿は最近の高校生らしく、髪をワックスでツンツンに立てて、おしゃれなメガネをかけているイケメンさんだ。
髪はボサボサで、黒縁の眼鏡をかけている地味な自分とは対象的である。
そして達也は、考えていることが表情に出るためこいつが考えていることはわかりやすい。
多分今日も遊びに行く計画を立てて、そのメンバーの中に俺も含まれてたってとこだろう。
前から、俺はバイトで忙しいから誘うなとあれほど言っていたのに懲りない奴だ。
「今日は宮永達とダーツやりに行くんだけどさ、宮永達初めてだっていうし、健一がいると盛り上がるから、是非来て欲しい所なんだけど‥‥だめかな?」
「駄目だな。話から察するに、宮永さん達がダーツのやり方を知らないから教えてほしいってことだろう。」
「そういうことなんだ。話が早くて助かる。」
そういうと達也は満面の笑みで俺の肩を組み、静かに囁いた。
こういう人の話を聞かないで自分の話を進めるのが達也の悪い所だと俺は思う。
「あの、宮永だぞ。宮永。クラスの可愛い子ランキング1位の。それが俺らなんかと一緒に遊びに行ってくれるんだぜ。」
頬を高揚させてまくしたてるように話す達也は正直気持ち悪い。
てかさっさと離れて欲しい。
達也をふりほどいて奥の席を見ると、宮永飛鳥もこちらに気づいたのか、こちらを見て手を振っていた。
宮永が腰まで伸ばした黒髪が特徴のモデルのような美貌を持つクラスメートで、誰へだてなく話す明るい性格ということもあり、クラス内外で人気がある。
現在某有名ファッション誌の専属モデルにならないかと話が来ているという噂もあり、学年で1、2を争う美少女だ。
。
「それとな、なんと今日はあの遠野さんもいるんだぞ。おいしい話だと思わないかい。」
宮永さんの後ろを見ると確かに遠野雪菜もいる。
遠野雪菜は宮永飛鳥とは対照的なふわふわな髪が特徴の可愛い系美少女である。
ただ、男子が苦手なのかいつも宮永さんの後ろに隠れている印象が強い。
そして、こちらも男子からの人気が高い。
宮永さんが高嶺の花の美少女だとしたら、遠野さんは伸ばせば手が届くクラスのアイドルだろう。
この2人はクラス可愛い子ランキング1位2位を争っており、両方とも彼氏がいないという話だ。
一説には2人でよく一緒にいることから百合なんではないかという噂まで立てられている。
なお、宮永に関してはファンクラブまであるらしく、「聖女様、宮永様」とか「神様、仏様、宮永様。」とか「宮永飛鳥ちゃん、マジ天使!」とか言われている。
正直、この発言をした奴らは全員自重した方がいいと思う。
ちなみにこれらの情報は全部達也から聞いた話である。
達也の女性に対する執着心は強いが、それが今まで実ったためしがない。
(まぁ達也は見た目はいいがあの性格だからな。あの性格がもう少しましになればもてるんだろうがな。)
再び俺の肩を組んでくる達也の手を払い、達也の方を見る。
「確かにおいしい話だが、俺はバイトだ。申し訳ないが他を当たってくれ。」
「お願いだ。ちょっとだけ。ちょっとだけでいいから。ダーツやったことあるの俺ぐらいしかいないんだよ。それに健一程ダーツのルール詳しくないし。」
「だったらダーツじゃなくて、カラオケにでもいけばいいだろう。俺は帰ってすぐバイト行かないと間に合わないんだ。あきらめてくれ。」
「そんなこと言うなよ。宮永達はダーツやりたいって言ってるし、カラオケやボーリングじゃだめなんだよ。」
「そんなこと俺は知らん。じゃ、俺はもう帰るからな。」
俺はそういうと席から立ち上がり、教室のドアに向かって歩き始める。
後ろで達也が「あっ。」とか「ちょと、まっ‥」とか聞こえるが無視して歩き続ける。
出る間際に、達也が宮永さん達に謝る声や、宮永さんのグループの人が俺を罵倒する声が聞こえるが俺は気にしない。
クラスの連中とは、学校の中での付き合いでいいと思うし、放課後まで一緒にいるなんて俺はごめんだ。
ましてや、馴れ合いなどは俺には必要がない。
ここは俺の居場所ではない。
そう自分に言い聞かせながら、俺は教室のドアの外へ出て家路へと向かった。
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