事件
放課後、俺たち自警団グループ「使者の裁き」は集まっていた。
自警団は学生だけのグループだが、学生には力が未熟なものが多く、自然と少数精鋭になる。「使者の裁き」も例にもれず、尚且つ他のグループよりも人数が少なく、3人しかいない。にもかかわらずこの3人はほかのグループよりも多くの功績を残してきた。なぜならば、この3人はほかの人間よりも少々特殊な人間だからだ。
うちのグループは週に1度ミーティングをする。事件が起きて現地集合、解決したらはいさよならというわけにもいかないからだ。しかし・・・
「先輩~!お久しぶ「うっさい。(ガッ!)」ヘブゥ!!(ドン!ベシャ!)」
「いつも言ってるだろうが。お前のスキンシップは過剰でうざい。もう少し静かにできないのか。」
金髪の少し髪が短い男が俺に過剰なあくまで本人は「スキンシップ」と言い張る行動を取ろうとしたので、かつてない危機感を感じ容赦なく蹴り飛ばした。
「無理ですよ先輩。先輩に会えるの久しぶりで今日という日を心待ちにしてたんですから。あぁでも先輩に蹴られるなんて、そんな先輩の照れ隠しのような愛情を受けられるなら、グヘヘヘ・・・」
このどうしようもない変態…もとい、男の名は高田 浩二。金髪で髪は少し短め、背は小さいほうで165cmといったところだろうか。線は細めで顔もよく、モテそうな容姿にも関わらずモテないのはその性格と変態思考がすべてを台無しにしているからだろう。数年前にいじめられていたこいつを助けたら異常に懐かれた。懐かれた…だけのはずだったのになぁ…。
「凛、あの度し難い変態をどうにかしてくれ。」
「はぁ・・・。わかりました。浩二、ちょおっとあっちでお話ししましょうか?」
「へ?いや、あの「反論はあっちで聞きますからね。」いやぁぁぁぁ。」
今、外で浩二に仕置きをしている少女の名前は奥方 凛。黒のストレートに伸ばした髪やキリッとした目は、美人でありながら少々キツイ彼女の性格が見て取れた。容姿がよく、何でもできる完璧超人とも言えそうな彼女は、もちろん男子にもモテるのだが「あなたに興味がないの。」の一言で、数々の男を振ってきた。あまりにもばっさり切り捨てるので、一部では氷の女とも言われているらしい。
そうこうしているとこのグループの責任者である切旅心が部屋に入ってきた。いくら自警団が社会的に認められているからといっても、まだ学生なのだ。それを指揮する責任者が必要になる。
「ん?涼太、浩二と凛はどうした?そろそろミーティングをしたいんだが。」
「あぁ、凛が浩太を仕置きにいった。もうすぐ戻ってくると思う。」
「またかまったく。原因は浩二なのだろうが「ただ今戻りました。」おおぅ…。」
帰ってきた凛の左手には、声すら出さなくなった浩二らしきものが引きずられていた。
「ミーティングを始める。まず最初にこの間の魔法を使って暴れていたサラリーマンを捕まえた件で、警察がお前たちを表彰したいらしい。」
この世界では魔法が役立たれる一方で犯罪も多い。子供は力があるものは珍しいので少ないが、ストレスのたまったサラリーマンや、職に就けない大人が犯罪を犯すのだ。
犯人の動機が気になったのか、浩二が口を開いた。
「犯人の動機はストレスっすか?あの犯人なんか暗かったけど。」
「ああ。犯人はその日にリストラされて、元々そんなに心が強くなかったのが完全に自棄になったらしい。直接俺が聞いてきたから間違いない。」
「いつも思うんすけどその能力便利っすよね。心がわかるなんて。」
「そうでもないぞ?捜査協力とかで聴きたくもない人間の心も聴かなきゃないからな。あー大人ってヤダヤダ。社会的地位に縛られて放棄することもできないんだから。かわいこちゃんの相手してた方がよっぽど有意義でいいわ。」
切旅心の固有スキル「読心術師」。事件後に真相を調べるために多く使われるが、その真価は戦闘で発揮される。危険が多いこの世の中で、相手の心を読み、先手を打てるというのは大きなアドバンテージとなる。
「はぁ…、またそんなこと言って。まぁいいや、何時行けばいいの?」
「ん?そうだなぁ。あちらさんは今週土曜と言っていたがお前ら都合大丈夫か?」
「俺は大丈夫だ。普段からそんなに予定を入れる方じゃないからな。」
「私も大丈夫です。買い物に行きたかったですが、日曜日でも大丈夫ですし。」
「俺も大丈夫っす。何より先輩に会える日が増えるなら何をおいても優先します!」
「ようし。じゃあ今週土曜「プルルルルル」ちょっと待ってろ。」
ふいに部屋の電話がなり、心さんが取った。ここの電話が鳴るときはたいてい厄介ごとなので少々面倒な気持ちでそれを見ていた。そしてやはり厄介ごとだったらしい。心さんがこちらを向いて口を開く。
「お前ら、銀行強盗だそうだ。準備しろ。」