4.言葉が通じません
溜息を、何度吐いただろう。
自殺をしたから、地獄へ突き落とされたのだろうか。
地獄と言えば、積んでも積んでも傍らにいる鬼が石を蹴り飛ばして、一向に完成しない石の山が有名か。
「あの、言葉、通じませんよね?」
と、先程から何度も告げているが目の前の人間は首を傾げるばかりだ。
おまけに、表情とて険しい。いつまた、殴られ引き摺られるか解ったものではない。
人が集まってきて、僕を取り囲む。どうなるのだろう。
面倒だからもう一度、自殺したらどうだろうか? 薬を残しておくべきだったか。
目の前の人の腰にぶら下がっている剣を引き抜いて、それで腹か首を切り落としたら死ねるだろう。
自殺することばかりを考えていた。
いや、待てよ。
自殺しなくても、集団暴行を受ければ僕は死ぬだろう。死体など、無造作に地面に転がされるだろう。
……痛いのは、嫌だな。
一瞬で楽になりたい、痛めつけられて、徐々に弱っていくのは耐えられない。
と、思うと身体が強張った。
死にたいけれど、痛いのは嫌だ。
一瞬で、今この場で、誰か背中から心臓を一突きにして欲しい。
僕は、牢屋に入れられた。
あぁ、本当に牢屋としか形容が出来ない。
床は水浸しだ、ネズミが勿論得体の知れない昆虫が這いずり回っている。
暗くて、光が全くない。
寝る場所など、無論ない。床に転がることしか出来ない。広さとて、二畳程度だ。
トイレなんてものすら、ない。どうしろと。
そして、腹が減った。
けれども、水が滴り落ちる音しか聴こえてこず食事など運ばれることはないだろう。
「シチューが食べたいな」
母さんのシチューは、野菜がごろごろと入っている、肉もでかい。とろとろでコクがあって、翌朝になるとまた、味が深みを増して。
自殺をしなければ、今頃シチューを食べていたかもしれない。
「自殺なんか、するんじゃなかった……」
僕は、ぽつり、と零していた。
零していたのは、言葉だけではなく涙もだった。
「父さん、母さん……助けて」
言ったところで、どうにもならない。あぁ、どこからか突如『はーい、ドッキリでしたー!』といつかのテレビで見たような番組が始まらないだろうか。
そうであってくれないだろうか。
と、願っても起こりえない。
「畜生! 言葉が通じないんだよっ!」
起こりえないと解ったから、ムカツクことを全て吐き出した。
「なんだよ、ここ! 汚いんだよ! 不衛生なんだよ、こんな場所で死にたくないよ! 僕を出せ、ここから出せーっ!」
現代人を、嘗めるな。
死にたいけど、こんな場所で死にたくなんて……ないっ!
と、思うなら、死ななければよかったのに。
主人公の名前をいい加減考えなければ。