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2.自殺しました、死後の世界は厳しいです

 最期に見た光景は、小学校の校庭だった。

 眩い光が目の前を覆い尽くした、あぁきっと首が絞まって脳が悲鳴をあげ視覚に影響を及ぼしたのだろう。

 と、僕は思ったんだ。

 走馬灯、というのだろう。僕は幼稚園で苛められていたことを思い出した、原因が思い出せないけれど子供なんてそんなものだ。

 まさか、虐めがトラウマになっていたのだろうか? いや、現在苛められていなかったし。

「……! ……!」

 あぁ、思い出した。一人の可愛い子に告白されたんだった、それで、子供なりに嫉妬されて苛められる羽目になったんだったな。僕はあの時、チューリップ組の先生が好きだったんだけどなぁ。

「……! ……!?」

 しかし、そう思うと恋愛というのは恐ろしい。でも、思いなおせば子孫を残す為の生きる手段だ。

 愛だの綺麗ごとを言っても、結局それは自分自身を死して尚、後世に残したいという欲求の現われ。

 全く、生命誕生の神秘には驚かされる。だから、歳関係なく気に入った異性を取り合うというのは間違ってはいないだろう。寧ろ、生命力に満ち溢れた、素晴らしいことなのだと。

「! ……!」

 って、いうか。

「だー、もう、うっさいなぁ! なんだよ、さっきからっ」

 僕は、思わず大声で叫んだ。ガバ、と目覚ましが鳴って学校へ行く朝の様に飛び起きた。

 そう、飛び起きたんだ。おかしくないか? 僕は死んだんだろ?

 けれども、さっきから耳元でなにやら不快な音がしていた、そうなんだ、人がしんみりと生命の在り方について思案していたのに邪魔するように声がしていた。

 死後の世界、というやつだ。

 僕は、大きく瞬きした。

 なるほど、驚いた。死の世界の住人はこのような衣服を着ているのか。

 まるで古代のローマ帝国のような風貌だ、まぁ、僕も詳しくないから映画での知識だけれど。

 真っ白い衣服に、一人一人微妙に違った色合いとデザインの布を肩から下げて、サンダルを履いている。

 という人が、僕の周囲に数人。

 神々しいが、結構臭い。死後の世界の住人は風呂には入らないのだろう、というかそうか、体臭もあるのか。

 髭を無造作にはやした中年の男達だった、さっきから喚いていたのはこの人達だろう。

 というか、言葉が解らない。死後の世界はなんて不便なんだ。

「あの、日本人です。日本語の解る死後の世界の案内人は?」

 バイリンガルくらい、いるだろう。聞き取ろうにもとりあえず、英語ではないと思われる。なんだ、フランス語なのか、それともギリシア語なのか。

 悪いが僕は、英検が二級だ。以上。

 せめて英語にしてくれ、辛うじて何か解るかもしれない。

「あー、えーっと。死んだら何をすれば? 閻魔大王とかに謁見すれば良いのですか?」

 しかし、国によって死後の世界を治めている神は違っていた筈。

 この目の前の人達が閻魔大王に仕えているとは、非情に想像し難い。寧ろ、あれか、ギリシャ神話の……ゼウスの兄弟の……ハデス? あの神ならなんとなく納得が行く気がする。

 けれど、冥界を治めるハデスならば、もっと死神っぽい人物をはべらしていそうだよな。

 死後の世界のマニュアルとか、ないのだろうか。

 というか、僕はどうなるんだろう? 生きるのが面倒で死んだのに、面倒事が待っているだなんて。

「……! ……!」

 急に腕を引っ張られた、右腕を鷲掴みにされそのまま地面に叩きつけられる。

 痛ぇ!

 ジャリ、と口内で砂を噛んだ音が聞こえる。死んだのに痛いってどういうことだ!?

 ワケが解らない、僕は口の中のモノを吐き出すと立ち上がるべく両手に力を入れる。が、頭部に衝撃が走った。

 靴だ、男に脚で頭を踏みつけられているんだ!

 冗談じゃない、屈辱的にも程がある。立派な虐めというか暴行だ。

 死後の世界って……どうすればいいんだ!?

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