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水…水…水…………。水が野みたい。

私達は森に続くであろう林を背に歩き出した。

森に入って遭難でもしたらシャレにならない。


…もう充分シャレになんない事態だし。

これ以上はご免被りたい。


歩き出してから二人とも無言だ。

色々考え過ぎて言葉にならない。

歩き続けて早2時間。喉もカラカラだ。


「宮さん、少し休みません?」


草野さんも同じ気持ちだったのだろう。

こちらを見る顔には『疲れた』と書いてある。

顔を見合わせて乾いた笑いを交わす。


「考えてたんですけど…」


木陰に腰を下ろしながら草野さんが話しだす。


「おかしいと思いませんか?

考えれば考えるほどそう思うんです。

いくら田舎の方に来ていたとはいえ、家や田んぼすらないなんて。

バスに乗ってた時は電柱だって普通にありました。

いくらバスから投げ出されたとはいえ、こんなに何もない所なんてあると思います?」


確かに歩き始めて3時間たったが、見渡す限り木以外何もない草原が広がっているだけだ。

冷静に考えてなんて言ったけど、本当は考えたくなんかない。

おかしい事は分かってる。

でも深く考えるのも怖い。


「宮さん………。

眉間にシワよってますよ?

ない脳味噌をフル回転させてもたかが知れてるので止めなさい。

そんなコワい顔小さい時からしてるから、大きくなってヤンキーになるんですよ。」


…おい!!


「誰がヤンキーやねん!!」

思わずツッコミをいれてしまった……。

ムッとしたフリをしながら上司を見上げる。

上司は

「さすがヤンキーはツッコミも違いますね。

おぉコワ…」


など言いながら笑っている。

「本当に失礼な人ですね…。

腹黒野郎………」


最後の部分は小声だったのに、しっかり聞こえていたようだ。

わざとらしい笑みを浮かべながらジワジワ近づいてくる。


「人が気遣って元気を出させてあげようとしてるのにヒドい扱い…。

悪い言葉を使うお嬢ちゃんにはお仕置きが必要ですねぇ。何がいいかな…?唇で唇をふさい『申し訳御座いませんでしたー』」

コワいよこの人。

斜め上から過ぎる、完全セクハラ発言を大声で遮る。

からかわれてるのは分かっているのだが、いつもこのパターンだ。

いい歳して赤くなる顔が恨めしい…。

上司の顔を見上げると、案の定ニヤついていた。

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