まだ見ぬ同僚達の苦労話?side古川
「はぁ…。」
溜息しか出てこない。
訳のわからない所に来て一週間。
もう涙も枯れ果てた。
デカイ体を小さくしながら、古川はまた溜息をこぼす。
あの旅行からの帰り道、バスが事故を起こしたのは分かってる。
分からないのはその後だ。
気付いたら森の中で気を失っていて、起きたとたん猪の様な動物が突進してきた。
慌てて身をかばったら、突進してきた猪もどきが吹っ飛んでいくというあり得ない現象。
体には傷一つ付いていない。
あまりの出来事に呆然としていると、ガヤガヤと人の声が近付いてきて、声をかけられた。
なんでも、村が先程の猪もどきの被害にあっていたらしく、集団で狩りにきたが逃げられていたのを古川が吹っ飛ばしたらしい。
瀕死の猪もどきに止めをさす、明らかに日本人ではない面々。
「おめさんスゲえなあ。助かっただよ。
今日はたんと肉くえるべ。なんにもねえ村だ べが、歓迎すんべ。一緒に来てくんろ。」
髭面の親父の誘いに一も二もなく頷き、村について行き、事故にあったことを話すも話が通じない。
車が分からない、電話もない、果てにはここは日本ではなく、聞いたこともないトリミテという国であるということ。
「まあ、とりあえずうちの村でゆっくりして
けばいいだ。おめさん強えから狩の手伝いし てくんれば金さ稼げるし、何より村の恩人だ べ。空き家さ使えばええ。」
古川が吹き飛ばした猪は通常より大きく凶暴だったらしく、かなり助かったのだという。
どうしたらいいのか、何がなんだか分からない古川は、気の良い髭面親父の言葉に甘えることにした。
それからは驚きの連続だ。
見たことのない白いリンゴの様な果実や、放牧している角の生えた牛もどき。場所によれば魔物と呼ばれるものや、人間とは違う種族もいるらしい。
どう考えても地球ではありえない。
映画の中に迷い込んだ様だ。
皆はどうしてるのか、自分はどうすればいいのか。
そんなことを古川はぐるぐると考えて続けているのだった。