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夜は朝を呼び、冬は春を呼ぶ

 

 帰国するとすぐに日本語の吹き替えに取り組み、それが出来上がると、差波木にDVDを見せた。

 反応はすこぶるよかった。

「素晴らしい映像ですね。感動しました」と目を潤ませた。

 それだけでなく、「是非、契約させて下さい」と手を差し出された。

 他から仕入れるサーモンよりは少し高いが、それでも取り扱いたいと言ってくれた。

 さかなや恵比寿さんホールディングス全店でのDVD機器設置も約束してくれた。


「水槽で生きている魚を見ていただき、DVDで命の繋がりを感じていただく、これこそ私の求めている鮮魚店の有り方です」


 理想に近づいたことへの興奮が彼を支配しているようだった。


「魚屋はお客様と直に接することができる貴重な場所だと思っています。だからこそ魚に関するすべての情報を収集して、その情報をお客様に正確に提供するのが使命だと思うのです」


 彼の眼は燃えているようになり、話が止まらなくなった。


「今、海がどうなっているのか、魚がどんな状況に置かれているのか、漁業をどうしていけばいいのか、一人一人のお客様に考えていただく機会を提供していきたいのです」


 熱気が、沸騰するほどの熱気が押し寄せてきたように感じた。


「持続可能な幸福循環というのは、本当に素晴らしいコンセプトだと思います。是非実現させましょう。そのためには、水産物に関するすべての関係者が関与しなければなりません。魚を獲る人、流通させる人、売る人、買う人、食べる人、そして、環境保護団体、国や自治体、そのすべてです」


 そして自らに言い聞かせるかのように大きく頷いた。


「複雑な利害関係が存在します。立場の違いが喧嘩腰の議論を生むでしょう。多くの困難が、高い壁が、私たちの行く手に立ちはだかるでしょう。それでも、熱い想いを持ち続けて、そして、諦めなければ、」


 彼はもう一度大きく頷いた。


「夜は朝を呼びます。冬は春を呼ぶのです。私たちは持続可能な幸福循環を必ず呼ぶことができます。きっと、できます」



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