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LAZULI  作者: 羽月
55/77

55緑の森 ~ランタナ4~

「このシリーズ、帝都(ファセリア)でも売ってたらいいのに」

雑貨屋で購入したばかりの品物が入った紙袋を大事そうに抱え、ファセリア帝国学院の学生、ニコールが言う。

「ランタナ限定だもんね」

フェリシアが頷き、隣を歩くエメも「売ってたら絶対買うのに」と頷く。3人がそれぞれ雑貨屋で購入したのは、ランタナでしか作られていない品だった。植物を原料としたシャンプーやコンディショナー、石鹸や入浴剤、ボディークリーム等だ。その原料となる植物がランタナの森にしかないため、この地域限定で販売されている。ふんわりとした優しく深い香りが癒しを与えてくれるのと同時に気分を明るくしてくれ、使い心地もとても良い。髪はサラサラになり肌はしっとりスベスベになる。学生たちが滞在している宿に置いてあった事で知ったのだが、すぐに気に入ってしまった。


「この後はどうしようか?」

フェリシアが二人に尋ねる。ヴィドール人達の遺跡調査に協力するため派遣されている学生達は交代で任務に就いていて、今日は3人は休みだった。そこで、朝食後に宿を出てショッピングを楽しんでいたのだが、そろそろ小腹が空いて来ていた。

「おー、仲良し3人組!ラッキー」

明るい声に振り返ると、同級生の男子学生2人が歩いてくるとこだった。彼ら2人も今日は休みだった。

「おー、仲良し二人組。何がラッキーなの?」

同級生の言葉を真似てニコールが言う。

「いや、実はさ、お洒落なカフェに行きたいなって思ってんだけど。男二人じゃ入りにくいとこでさぁ」

と、声を掛けたジャックという名の金髪の学生がニコニコして言う。

「え?全然二人で入ればいいじゃん」

「う~ん。デートだって思われたくねえじゃん。俺、可愛い子が好みだし」

ジャックが口を尖らせる。

「俺だって、お前なんかと誤解されたくない」

もう一人の茶色の髪をした連れの学生、オースティンも真顔でそう言った。

「二人はそういう雰囲気には見えないから、いらない心配だと思うけど。仲が良いのか悪いのか分からないね」

エメが笑う。

「だから、私達と一緒に行きたいって事?」

フェリシアの言葉に、ジャックが「そういう事!」と満面の笑顔で答えた。

「え、まさか。可愛いからって、あたし達狙い?」

ニコールがフフンと笑って言うと、ジャックは笑顔で首を振った。

「ううん、フルーツとクリームがどっさり入った大きなプリン狙い!」

笑顔のジャックの答えにニコールが眉を顰めるのと同時に、エメがポンと両手を合わせる。

「あ、多分そこ、わたしも行ってみたいって思ってた!町外れにあるカフェじゃない?入り口のとこに看板が出てる、フルーツとクリームモリモリのプリンがあるとこでしょ?デザート系以外の食事のメニューも充実してる」

「そうそう!」

ジャックが嬉しそうにグッと拳を握った。

「あ、そこなら、私も行きたい。そのお店、私も気になってたから」

フェリシアが笑顔で言うと、オースティンが嬉しそうな顔をする。

「よっし!じゃあ、決まりだな!皆で一緒に行こう~」

ジャックがご機嫌に言い、5人は揃ってカフェを目指し歩き出した。


 徐々に店等の建物の数が減り、代わりに植物等の自然が目立ってくる。黄色やオレンジに葉の色付いた背の高い木が並びチラチラと木漏れ日が落ちていて、舗装されていない道に光と影の模様を描いていた。

 それぞれ男子と女子に別れて、他愛のない雑談を交わしながら歩いて行く。


『……ん?』

先頭を歩いていたフェリシアが歩調を緩める。進んでいる道の先に黒い人影が見えたからだ。立ち話でもしているのか、二人の人物がひと際大きな木の陰に立っている。背が高く男性の様だが、その容姿が気になった。無意識に小走りになってフェリシアは二人の元に近付いていく。

「やっぱり!」

と言うフェリシアの弾む声に気付き、立っていた二人が振り返った。

「キサラギ先輩!」

名前を呼ばれた兄の友人、如月翠は、一瞬驚いた表情を見せる。卒業したので当然だが見慣れた学生の制服姿ではなく、I・Kの制服を着ていた。

「お~!フュリーちゃん!」

フェリシアに気付き、翠は満面の笑顔になった。

「お久し振りです!先輩たちがどうされたのかなって心配してたんですよ!お元気そうで良かった」

ヴィクトールが亡くなってしまいI・K達は仕える者がいなくなってしまった。そのため、兄と仲の良い友人達がその後どうしたのかと、フェリシアはずっと気になっていた。

「そんなにオレの事心配してくれてたんだ?嬉しいなぁ」

いつもと変わらない砕けた軽い態度を取る翠に、フェリシアはほっとしていた。

「エメちゃんとニコールちゃんも、久し振り。3人共もしかして任務でこっちに来てんの?」

フェリシアと仲の良い二人も翠とは顔見知りなので、笑顔で挨拶を返す。エメもニコールも、学院ではもちろんフェリシアに誘われ休暇中にウルセオリナに遊びに行った際に、同じ様に帰郷していたエトワスやその友人達と何度か顔を合わせた事があった。

「って事は、騎士科の学生?」

翠と一緒にいたもう一人、I・Kの制服を着たフレッドが、合点がいった様に言う。フェリシア達5人は休日で私服だったのでフレッドには後輩だと分からなかったのだが、遺跡調査のヴィドール人達の警備にファセリア帝国学院の学生たちが派遣されたという話を思い出していた。

「そ、3人ともオレらの可愛い後輩だよ。多分、そっちの2人もかな?」

翠がジャックとオースティンに目を向けた。

「ファセリア帝国学院騎士科4年に在籍してます、オースティン・ケイドです!」

ハッとして、オースティンは翠とフレッドに向かい敬礼した。

「同じく、ジャック・カーヴェルです」

ジャックも名乗って敬礼する。

「どうも。オレは、スイ・キサラギ」

「フレッド・ルスだ。よろしく」

それぞれ、翠とフレッドも敬礼を返した。

「ちなみに、彼女はエトワスの妹のフェリシアちゃん、それから、親友のエメちゃんとニコ―ルちゃん」

と、翠がフレッドに女子学生達を紹介する。

「え、エトワスの妹?」

「はい。今日はお休みなんですけど、この近くの遺跡調査、に……」

笑顔で話すフェリシアは、途中で言葉を飲み込んだ。翠の背後に何か気付いた様子で、笑顔は消えその目が大きく見開かれる。

「っ!!!?」

手にしていた紙袋を落とした事にも気が付かず、目の前に立つ翠の腕を両手でギュッと掴む。同時に、すぐ近くにいたエメも息を呑んだ。

「!」

魔物が出たのかと、翠は反射的に剣の柄に手を掛けて振り返った。

『……あ、なるほど』

気が抜けた。

こちらに向かって歩いてくる、エトワスとディートハルトの姿が見えたからだ。

「嘘嘘嘘っ!?!?」

フェリシアはその姿を凝視し、ひどく動揺している。

「せ先輩っ!!み、見えてますか!?」

幽霊だと思っているのか、翠の腕を掴んだまま怯えている。翠が、驚かなくて大丈夫だと教えようと口を開くが、その前に、こちらの様子に気が付いたエトワスが声を掛けた。

「フェリシアじゃないか。ランタナに来てたのか」

「本物だよ」

言葉を失い固まっているフェリシアに、翠が教える。

「!」

翠の言葉を聞きハッとしたフェリシアは、ようやく掴んでいた翠の腕を放し、恐る恐る兄の方へ足を踏み出した。

「本当に、お兄ちゃん……?生きてるの?」

「久し振りだな」

涼し気な笑顔を見せるエトワスに、フェリシアは眉を寄せた泣き出しそうな表情で駆け寄り、胸の前でギュッと握っていた両手を伸ばした。

そして、兄に勢いよく抱き……


ドンッ!


……着かずに、両手で力任せに兄を突き飛ばした。

兄の無事を喜ぶ妹の姿を予想していたその場にいた全員の予想は、完全に外れていた。

「!?」

「信じられないっ!」

エトワスは倒れる事は無く踏みとどまったものの、混乱した様子で妹を見ている。

「???」

彼もまた“信じられない”といった表情だった。

「『久し振り』って何!?今までどこで何してたの!?」

祖父と同じく、フェリシアは完全に怒っていた。

「ずっと連絡無しとか非常識でしょ!馬鹿じゃないの!?」

「……悪かった」

妹にまで馬鹿呼ばわりされるとは。と、内心苦笑する。確実に祖父の血を引いているようだ、そう思った。

「何それ!?謝ってるつもり!?ホント最悪!馬鹿でしょ!?」

殴りかかろうとしているのか、フェリシアが拳を引いたので、友人二人が慌てて止めに入った。その様子を、翠、フレッド、ディートハルトの3人、そしてジャックとオースティンは苦笑いを浮かべて眺めている。

「待って、待ってよフュリー!エトワス様がご無事で良かったじゃない!」

エメがそう言って、エトワスを背に庇う様に立ち塞がった

「!」

涙目になっているエメの姿に気付き、フェリシアは手を下ろす。

「……10発くらい殴りたいんだけど」

フェリシアは本気だったが、エメのためにやめておく事にした。彼女が泣き出してしまったからだ。しかし、数日前とは違い今回は嬉し涙だった。

「信じてました、エトワス様!絶対ご無事だって……!わたし、嬉しいです……!」

「ありがとう。心配掛けて済まなかった」

エトワスがそう済まなそうな笑顔を向けると、エメはエトワスにバッとしがみ付いた。

「良かったです、本当にっ……!」

実の妹は未だに怒り心頭といった様子で舌打ちでもしそうな苦い顔で見ているが、その友人は歓喜の涙を流している。泣きじゃくるエメの背をエトワスは宥める様に優しく叩いた。

「……良かったね、エメ」

ニコールはその様子を見てもらい泣きしそうになり、フレッドとオースティン、ジャックは興味深げに観察し、ディートハルトは目を瞬かせて小さく口を開けていた。

『そっか……。エメはエトワスのファンだったのか……』

ディートハルトは、レテキュラータ王国から乗った船の中で見た雑誌の記事を思い出していた。そこには、皇女も含めエトワスを心配する、または帰還しない事を嘆く大勢の彼のファン達の言葉が載っていた。それらの記事を見た時は『知ってはいたけど、相変わらず人気があるんだな』としか思わなかったのだが、今、目の前で涙を流すエメの姿を見ていると、あの雑誌に載っていた言葉の数だけ……多分実際にはそれ以上の数の人達が、エメの様に実在していてエトワスの事を想っているのだろうなと、妙に実感していた。

『……何か、仲良さそうだな……』

エメは涙が止まらない様子でエトワスに身を寄せたままで、エトワスは申し訳なさそうに小さく笑みを浮かべている。

『あ……そっか。エメはフェリシアの友達で、おれより前からエトワスとは元々知り合いだったみたいだし、ただ”ファン”ってだけじゃないのかも……』

そう言えば、覚えていないがエメはどこか貴族の令嬢だったはずだ。それなら、貴族同士の付き合いがあって、お互いずっと前から知っていたのかもしれない。自分が知らないだけで親しい間柄なのかもしれない。そう考えると、何故か心臓がドクンとしたような気がした。

『あれ?ちょっと……なんだろう。具合が悪い、かも?』


「フュリーちゃん、お兄ちゃんを殴るならタイミングは今かも?」

腕組みをした翠がそう言うと、フェリシアは真顔で頷いた。

「そう思うんですけど。ほんと腹立ちますよね。でも、エメに免じてここは」

ハハッと翠が小さく笑う。

「オレら気が合うね。オレも、エトワスが実は生きてて、突然久し振りに目の前に現れた時は殴りそうになったんだけど、フレッドに止められたからね」

「殴って良かったのに。フレイク先輩も、すごく怒ったんじゃありませんか?」

フェリシアは冷めた調子で言う。本当に殴っていいと思っているようだった。

「いや、それがさ。オレもそう予想してたんだけど、ディー君は今のエメちゃんと全く同じ状態でね。お兄ちゃん、嬉しそうにニマニマしてたよ」

「うっわ腹立つ!」

吐き捨てる公爵令嬢に、翠はもう一度笑った。


「聞いていいのか分からないですけど。先輩達は、ここで何してるんですか?」

改めてフェリシアは気になっていた事を尋ねた。

「ああ、オレらも任務でさ」

あっさり答える翠を、フェリシアは驚きの表情で見る。

「え、でも……」

ヴィクトール直属のI・Kが、誰の命令で動いているのだろう?そう思っていた。

「フュリーちゃん達は、さっきチラッと言ってたけど、任務でここにいるって事なら遺跡調査に来てる人達の護衛と現地の警備で派遣されてるんだよね?その人達がヴィドール人だって知ってる?」

フェリシア達がランタナにいる理由はまだ説明していないはずなのに翠に言い当てられたため、少し驚きながらフェリシアは頷いた。

「え?あ、はい、もちろん」

翠は、フェリシアの答えを聞きエトワスの方を見る。エメは落ち着いてきたようで、今はエトワスから離れ目元を手で拭っている。

「す、すみません!失礼しました!わたし、あんまり嬉しくて……」

「大丈夫。気にしなくていいよ」

焦って頬を真っ赤に染めているエメに、エトワスは笑顔を向けている。


「エトワス、フュリーちゃん達、ここに任務で来てるらしいけど」

翠がエトワスにそう声を掛けると、傍観していたオースティンはハッとして、エトワスとディートハルトの顔を見て慌てて敬礼する。

「ファセリア帝国学院騎士科4年に在籍してます、オースティン・ケイドです」

「同じく、ジャック・カーヴェルです」

ジャックも同じように、名乗って敬礼した。

「エトワス・J・ラグルスだ」

「ご無事で何よりです、ウルセオリナ卿!」

オースティンがそう言うと、ジャックも大きく頷いた。

「本当に、お元気そうで良かったッス!」

「ありがとう」

エトワスが笑って礼を言うと、男子学生2人は今度はディートハルトに注目した。そのため、他人事のように見ていたディートハルトも状況に気付いて名乗った。

「……あ。おれは、ディートハルト・フレイク」

名乗ったディートハルトをジッと覗き込むようにして、ジャックが尋ねる。

「先輩、ッスか?」

「え?エトワス達とは同級生だけど」

「え、マジっすか?めっちゃ可愛いから年下かと思っちゃって」

ジャックは悪気なくそう言って、テヘッと笑った。

「ジャック君、歳幾つ?」

「あ、オレは19っス」

翠に尋ねられジャックが答える。

「じゃ、ディー君の方が年下だよ」

「やっぱそうなんスね!いやぁ、マジで可愛いッス。癒されました」

「おい、先輩に失礼だぞ」

オースティンが眉を顰めたため、ジャックはキョトンとした顔で言った。

「何で?心の底から本気で褒めてるのに」

「それで、先輩達は私達に聞きたい事があるんじゃないんですか?」

フェリシアが話を戻し、翠に尋ねた。

「ああ、それね……」

「大丈夫です。ここにいる全員、信用できますから。何でも聞いてください!きっと先輩達の力になれます」

少し躊躇った素振りを見せた翠に、フェリシアがそう言った。

「もちろん、ウルセオリナ卿とI・Kの先輩方に全力でご協力します」

オースティンも真面目な顔でそう言うと、他の後輩達も頷いて見せた。

「それは助かるし、信用してるんだけど……」

翠が、チラリとエトワスの方を見る。

「アーヴィング殿下の命令でここに派遣されてるんだろ?だとしたら、俺達とは関わらない方がいい」

「だよね。オレらI・Kだし、協力したって知られたら目を付けられちゃうかもしれないから」

翠がフェリシアに聞こうと思って躊躇った理由はそこにあった。

「全然問題ありません。お役に立てるなら」

フェリシアがすぐにそう言った。

「俺もッス」

と、ジャックが手を上げて言った。

「軽く見えるでしょうが、こいつも俺も元々I・K志望ですし、先輩方の仲間とみなされても本望です」

オースティンがジャックをチラリと見て言う。

「わたしも、エトワス先輩のお役に立ちたいです!」

エメがそう言うと、ニコールも「あたしも、問題ありません」とすぐに言った。

「……」

少し思案し、エトワスは翠に頷いてみせた。

「じゃ、話せる範囲で構わないから教えて貰える?遺跡調査に来てるヴィドール人について、それから遺跡内がどうなってるかを知りたいんだ」

「それなら、詳しくお話できますけど、今此処でお話します?」

「あ、今すぐじゃなくて少し時間を頂ければ、遺跡内の見取り図も用意できますが」

フェリシアに続き、オースティンが何やら張り切った様子でそう言った。

「え、それは滅茶苦茶助かる。な?」

と、翠がエトワスを見る。

「ああ。それじゃあ、頼んでもいいか?」

エトワスに言われ、オースティンは大きく頷いた。

「はい!お任せください!」

「そうだな……。今から何処か行くところだったんだろ?それなら、今日の19時頃、教会に来てくれないか?そこで、改めて話を聞かせて欲しい。出来れば、その時に見取り図も貰えると助かる」

「はい、問題ありません!」

「分かった。19時ね」

オースティンとフェリシアは、同時に頷いた。



 ひとまず学生達と別れたディートハルト達4人は、その場で落ち合う約束をしていたリカルドとロイを待つことにした。

医師のローマンと予想外に再会した後、そのまま先輩I・K達の宿泊している宿に向かったのだが、入れ違いで2人が既に出掛けてしまっていたため、ディートハルトとエトワス、翠とフレッド、リカルドとロイの3組に分かて情報収集しながら先輩I・K達を捜し、その後またこの場所で合流する事になっていた。


「あ、来た」

フレッドが、歩いて来るリカルドとロイに気付いて軽く手を上げる。

「どうだった?」

「大した話は聞けなかった」

リカルドが首を振る。リカルドとロイが商店街で聞けた話は、ヴィドール人達は朝10時頃から夕方17時頃まで遺跡に滞在しているという事と、ランタナに来たばかりの頃は学生も使って地面を掘り、見付けた発掘品を宿に持ち帰っているようだったが、最近は特に何も見付かっていないらしいという事、食事はいつも宿泊している宿で取っているようだという事だけだった。

「それで、そっちは何か分かったのか?」

リカルドに尋ねられて、フレッドが首を振る。

「俺達が聞いたのは世間話みたいな内容だった。長い黒髪の男が……って、キサラギが言うにはランクAのルシフェルって奴の事らしいけど、そいつが、何か怖い雰囲気だけど男前だったとか。あと、綺麗なお姉さんもいたとか」

「こっちも、似たようなものだ。だけど、偶然ここに派遣されてる学生達に会ったお陰で、詳しい話を聞かせて貰える事になった。遺跡内の地図も用意してくれるらしい」

そう話したエトワスの言葉に、リカルドが眉間に皺を寄せる。

「学生?信用できるのか?アーヴィング殿下の命令で来てるんだろ?」

「信用はできると思う。知ってる顔ぶれだったから」

「偶然、エトワスの妹達が来てたんだよ」

翠が経緯を説明した。

「フェリシア嬢が?それなら信頼できるだろうが、いいのか?巻き込む事になるんじゃないか?」

リカルドが、そう眉を顰める。リカルドもフェリシアとは面識があった。

「そう言ったんだけど、本人達が協力したいって事だったから」

「そうか。それなら、先に先輩方に会って情報を共有しよう。この時間なら宿の方で食事を取ってるかもしれない。合流できるかもしれないぞ」

リカルドがそう言って腕時計に視線を落とした。時計の針は正午の3分前を指していた。

「あ、それじゃ、おれは教会に戻るよ」

ディートハルトが言う。午後13時にアカツキと教会で会う事になっているからだ。

「その方がいいな。俺も一緒に行こう」

先輩達との合流は翠達I・Kに任せ、エトワスはディートハルトと共に教会に戻る事にした。


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