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安楽椅子ニート 番外編7  作者: お赤飯
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安楽椅子ニート 番外編7

「なあ三島、お前、大人が本気で泣いてるの、見た事あるか?」

「いえ。なんですか、突然。」

「瀬能さんが、号泣してた。本気で泣いてた。あまりに酷いから声、かけられなかった。」

「いったい何があったんですか。・・・全財産賭けたゲームに負けたとか?結婚詐欺に遭ったとか?オークションサイトで詐欺にあったとか?」

「お前、そんな簡単な話じゃないんだよ。泣き止むのを待って聞いたんだ。・・・なんでも、好きなアイドルが辞めちゃったらしい。」

「は?」

「は?だろ。俺も、は?って思ったよ。でも、あの人、本気だったぞ。鼻水流して嗚咽しながら泣いてたから相当、ショックだんたんだろうなぁ。」

「ええ。まあ。そうですね。・・・僕はそういうの理解できないんで申し訳ないんですが、アイドルが辞めたくらいで、そんなに泣くもんなんですか?」

「泣くなんてもんじゃねぇよ。泣き叫ぶだよ!救急車か何か呼んだ方がいいかなって思ったくらいだよ。お前どうするよ、そんな場面に遭遇したら。」

「間違いなく警察案件ですよ、手が付けられないんでしょう?」

「手が付けられなかった。俺やお前にとっては、アイドルくらいってもんだよ?でも本人にとっちゃあ、違うんだろうなぁ。そのアイドル、他のアイドルと出来てたらしくって、それも相当ショックだったらしい。」

「ああ。アイドル同士の熱愛スキャンダルですか?ああ、余計、僕、今のアイドル、分からないから声のかけようがないですね。知ってた所でどうにもできませんが。」

「だよなぁ。お前、地下アイドルって知ってる?」

「え?瀬能さんが言ってるアイドルって地下アイドルだったんですか?」

「なんだお前、地下アイドル、知ってるの?」

「地下アイドルって言葉は知ってますけど、今のアイドルは、星の数ほどいますから誰が誰だか見当つきませんよ?それにほら、昔と違って、テレビで活躍するアイドルの方が少ないですから。動画配信やら専用劇場、フェス、地下アイドルから半地下アイドル、放課後アイドル、部活アイドルっていうのもいますからね。有象無象ですよ。」

「そうなってんだ、アイドルも大変だな。」

「芸能事務所がチカラを持っていた時代じゃないですからね。近年話題の大手男性アイドル事務所の不祥事で、アイドル業界も氷河期って話、よくネット記事に書いてありますよ。」

「三島、お前、そういう三流ゴシップ記事好きだよなぁ。」

「大手男性アイドル事務所の件なんてBBC、NHKで特集組まれましたからね。不祥事じゃなくて事件ですよ。そんなに僕は、芸能人に興味がある訳じゃないので、そこまで詳しくないですけど、社会問題に発展しましたし。反対に瀬能さんは凄いですよ。地下でもなんでもアイドルにそれだけ肩入れできるなんて。そういうヘビーなファンがいてくれるから秋元康もご飯が食べられる訳でしょうね?」

「俺なんかだいぶ秋元康に貢いだぜ?ココだろ、リボンだろ、クレアだろ、花島だろ。だいたい乙女塾、テレビでずっと見てたかんな!昼はテレビ、夜はラジオで。」

「・・・乙女?」

「乙女塾!俺、大野幹代と佐藤愛子が好きでさぁ。」

「だから、僕、詳しくないんで分かりませんて。」

「お前、乙女塾は義務教育だぞ?」

「・・・木崎さんの趣味に合わせて、学習指導要領を変えられても困りますよ。文科大臣は秋元康になっちゃうじゃないですか?」

「それはそれで俺は賛成だけどな。俺は、大野幹代、佐藤愛子特区に進学するぜ!」

「・・・大分、偏差値が偏りそうですけど。」

「大分偏ってるのは瀬能さんの方だ。瀬能さんの話を要約すると、他の女アイドルに、好きな男アイドルを寝取られたのが悔しくてたまらない。その上、その男性アイドルが引退って事になったから、人生終わった、この世の終わりだ、地球なんか滅べばいいって喚いてたな。」

「・・・喚いてましたか。」

「ああ。喚いてた。」

「瀬能さんに限らず、年頃の女性って皆、好きなアイドルとか芸能人に、本気になりますよね?そこら辺の情熱が凄いというか、」

「瀬能さんは常軌を逸しているがな。」

「まあ、そうでしょうね。嗚咽するくらい泣くくらいでしょうから。」

「まあ、元々、この男のアイドル、別の女の子と噂になっていたらしい。」

「え?二股ですか。」

「今回、スキャンダルになった子と同じアイドルグループの子だそうだ。」

「二股の上、同じグループの子に、ちょっかい出してたんですか?いやぁ、男性アイドルって顔がいいのは分かりますけど、やりたい放題ですね。正直、羨ましいです。」

「羨ましいか?お前、アイドルを分かっちゃいねぇよ。その男性アイドル、二回のスキャンダルが出たんだぞ。それが命取りになって芸能界引退だろ?羨ましいとかなんとか言ってらんねぇよ。復帰は難しいだろうなぁ。」

「木崎さんこそ今の芸能界を分かってないですよ?今の芸能界は売れたもん勝ちの超競争社会。売れている上澄み以下のタレントは、アルバイト感覚で、ファンや他のタレントを食い散らかして、バレたら引退してドロン!ですよ。かわいい女の子と一発やってそのまま逃げちゃうんだから、勝ち逃げみたいなもんですよ。所属事務所はいい迷惑どころじゃないでしょう。一生懸命、お金かけて育てて、売れる時になったらスキャンダル。」

「そういうのバレたら賠償金とか、うるさいんだろ?」

「払う訳ないじゃないですか、バレたら雲隠れ。やり逃げもいい所ですよ。ちょっと前にバイトテロってあったじゃないですか?あれと一緒ですよ。一部の芸能事務所は、素行が悪いタレントを知っていて使って、トラブルが起きたら、そのタレントに賠償とか全部背負わせて会社は関係ないってスタンス取るみたいですから、どっちもどっちみたいな所はあるみたいですけどね。」

「酷っどい話だな、こりゃ。」

「誰も責任取らないんだから、酷い話ですよ。そんなタレントを起用したテレビ局、広告企業が泣き寝入りするだけ。泣くに泣けないですよ、お金を出している方は。それにファンも冷ややかな目で見るから、余計、売れるものも売れないですよね。芸能の世界は百鬼夜行。」

「瀬能さんが泣きたくなる気持ちも、まあ、なんとなくは分かってきたわ。あ、そうだ、これ、三島、お前にもやるわ。」

「なんですか?これ。」

「最初にスキャンダルになった女性アイドルのグッズだそうだ。」

「え?なんで女の子の方のグッズを持っているんですか?ヘアバンドもある。」

「・・・腹いせに、嫌がらせで、販促グッズを買い占めたらしい。」

「よく分からないんですけど。」

「いや、俺もよく分からない。」

「段ボールいっぱい・・・。これが好きなアイドルだったり、オークションで高値がつくアイテムだったら貰って嬉しいんですけど、知らないアイドルのを貰ってもゴミにしかならないんですよ、正直言って。」

「まあそう言うな。俺もそうだ。貰っても確かに困る。事のいきさつを話してやろう、暇だから。」

「暇じゃないですよ。仕事中ですよ、もっか、真っ最中、木崎さん以外。」

「瀬能さんの話によると、事の始まりは半年前に遡る。」

「いや、だからですね木崎さん。僕、仕事中。」

「お前も、アイドルのスキャンダル、興味あるだろ?」

「・・・そんなにないですけど?」

「まあ聞け!半年前、男性アイドルと人気女性アイドルグループの一人、A子が、熱愛スキャンダルされた。

だが、二人の熱愛スキャンダルのはずなのに、男アイドルの方はそれほど叩かれなかったが、何故か女性アイドルA子ばかりがバッシングを受けたそうだ。」

「所属事務所の力関係とか、スキャンダル後の対応で、ファンが一気にアンチに寝返るなんて事もありますからね。」

「たぶんな。A子の主なファンである男性ファンが離れ、相手側のファン、主に女が、A子叩きをはじめたのは容易に想像がついたそうだ。A子は程なくして芸能界を引退。それでこの話は一件落着したはずだった。」

「・・・してませんけどね。一人、芸能人辞めてますからね。」

「この話はそれで終わらなかった。またしても男アイドルが問題を起こしたからだ。その男アイドル、相当な遊び好きらしく、A子だけじゃなく、同じグループのB子にも手を出していたんだ。でも今度は、そのスキャンダルが命取りになり、男アイドルは芸能界を引退させられるハメになった。あっちこっち女遊びが過ぎたみたいだな、この男アイドルは。」

「女性アイドルグループのファンにとったら自業自得ですよ。応援していたのに、スキャンダルで辞めさせられちゃったら、怒りの矛先は熱愛相手にしか向かないですもの。女性アイドルは処女じゃなきゃいけないなんて妄信、信じている人達も、未だに一定数いるって聞きますし。」

「ある程度の年齢の女が処女な訳ないじゃん!頭おかしいだろ?そいつら。」

「いやいやいやいやいやいやいや。アイドルオタクなんてそんなもんですって。」

「大野幹代ちゃんと佐藤愛子ちゃんは処女だけどな。」

「・・・ああ。そうですよね。」

「でな。瀬能さんが、熱心に応援していたその男アイドル。今時、珍しい中性顔の童顔で、いかにも男性アイドルっていう感じだったらしい。甘い顔立ちで、生意気な言動が、母性本能をくすぐるんだと。弟みないな感じとか言ってたな。瀬能さんはこの男アイドルに、CD、グッズだけに飽き足らず、動画配信で課金して、数十万、数百万、つぎ込んだって言ってたぞ。」

「えぇぇぇぇ!ホストクラブならまだ理解できますが、いくらアイドルとは言え、画面の向こうの人に百万円も課金するなんて、やっぱり、凄い人ですね、瀬能さん。」

「その界隈では有名で、あしながオバサンと言われていたそうだ。・・・金に物言わせて課金していくからな。

それで、女性アイドルグループのA子は、しっかり者タイプで、グループ内ではまとめ役、回し役、委員長キャラで通っていたらしい。見た目は女の子、女の子した感じで、男のファンも多いが、女のファンも同じくらい多かったそうだ。

B子は元気ハツラツで物怖じしないタイプだったらしい。歌はそれほどだったけどダンスが得意で、憎めない感じがかなり男のファンに受けていたようだ。

グループ内で、A子B子はツートップで人気を博しファンを取り合っていたって話だ。ツートップでライバル関係っていうのは、ウリだったみたいだな。

ココで例えるなら、瀬能あづさと羽田恵理香だな。」

「わかりませんって。あのぉ、貰ったグッズはA子ちゃんのですか?」

「A子のだ。とにかく男アイドルと熱愛になった事が許せなくて、瀬能さんは、A子のグッズを買い占めて、本当のA子のファンが買えない様に嫌がらせをしたらしい。いや、したんだ。その執念が凄いと思わないか?瀬能さんのそのパワー、日常生活に活かしてもらいたいもんだよな?なぁ?」

「瀬能さんが怖いです。お金をかけて嫌がらせをするって、僕の知り合いにいて欲しくないタイプです。

・・・訳は聞きたくなかったですけど、それで段ボールで山ほど、A子ちゃんのグッズがあるんですね。

それにしても、その男の子のアイドルも、二回目は、世間から許して貰えなかったんですね。」

「二回目のスキャンダルで潮目が変わったんだろう?なんでも、他のアイドルグループの子達にもちょっかい出してたって噂もあるって話だ。」

「子達って事はまだまだ関係を持った子がいたって事ですか?・・・相当の女好きっていうか、クズって言うか。」

「B子の妊娠が発覚したのが、決め手らしいけどな。」

「え?妊娠させちゃったんですか?それはちょっと色々な方面から問題が発生しますね。・・・反対に彼の事が心配になっちゃいますよ?」

「どうしてだよ?」

「タレントって言えば芸能プロダクションの商品ですよ。商品に傷をつければ多額の賠償金を要求されますよ?しかもA子ちゃんは引退して、B子ちゃんだって引退させられかねませんよね?妊娠が本当でも嘘でも、そういう噂を立てられた時点で、商品価値が無くなりますから。しかもですよ、他のアイドルにも手を出しているんでしょ?他の芸能プロダクションからも同様の被害で訴えられますよ。もう、一人で弁済ができる金額じゃない額を請求されます。もう、彼、終わりですよ。・・・かわいそうに。」

「ま、他人事だけど、自業自得だとは思うよな。」

「よく瀬能さんは、そんな種馬みたいな男を、嗚咽するくらい泣いて、応援していたんですか?瀬能さんの気も知れませんけど。」

「そこは、乙女なんだろ?瀬能さんも。瀬能さんは男アイドルの事は悪くは言わないわな。・・・みんな女アイドルが悪いって。」

「事実を知らない我々が言えた義理じゃないですけど、こうやって聞いても、男のアイドル君が元凶だと思いますが?」

「そりゃ、元を辿ればどう考えても、二股、三股、四股する男アイドルが悪い。俺もそう思う。男が紳士であれば、こんな大事にはなってなかったんだろう。

瀬能さんが泣いて訴えるには、真相は違うらしい。瀬能さんが言うには、B子が悪だって言うんだ。」

「B子ちゃん?・・・妊娠させられちゃったのに?」

「三島、お前、ピュアなボーイだなぁ?ピュアピュアリンだよ。セックスするだけで妊娠すると思うか?」

「え、え、え、どういう事ですか?木崎さん、そんな悪い顔しちゃって。」

「B子の確信犯だってよ。B子は男アイドルが逃げられないようにする為、わざと妊娠したんだ。」

「え?え?えーっ!」

「お前、ちゃんと保健体育習った?性教育勉強した?お前、鼻くそほじって校庭でポートボールで遊んでたクチだろ?だから言ったろ?乙女塾は義務教育だって。

ただ単純にセックスするだけじゃ、妊娠する確率は少ない。ゼロとは言わない。ただ、少ない。

女には、受精できる期間が決まっている。反対に、排卵して卵子が体にない時は、どうやったって受精できない。卵子がないからな、物理的に。

それ以前に、男の方の精子が弱かったり、壊れていたり、機能不全を起こしている奴は、卵子にたどり着けないから、受精できない。普通の精子だって、膣内の強力な酸に焼き殺されて卵子に辿り着ける奴なんてほとんどいないけどな。

妊娠って結構な確率で、低いものなんだよ。大抵は。

そうそう。今みたいにセックスが科学的に研究されなかった頃、三国志とか封神演義の時代から、避妊の技術っていうのはあってな、日本で言う吉原みたいな所の女は、まずそういうのを覚えて、何年も客を取れるようにやっていたそうだぞ。妊娠しちまったら食っていけないからな。」

「・・・この話をどう聞けばいいのか、頭の理解が追いつきません。」

「やろうと思えば、女は、妊娠をコントロールできるって話だ。怖いだろ?

B子はお腹の子供を盾に、男アイドルに、交際だか結婚だか分からないが、責任を取るように迫った。」

「恐ろしいです。」

「そりゃそうだ。男は、B子の他にも、他の女アイドル達に手を出しているからな。男は、他の女アイドル同様、B子も遊びだったんだ。でも、B子は違った。B子は本気だった。B子は本気で男の事が好きだった。どうにかして男を手に入れたかった。アイドルなんか辞めたって良い。ヤリ捨てで良い。男アイドルを手に入れる為だったら何だってする!っていう気持ちで動いたんだろうなぁ。」

「・・・まさか、B子ちゃんの方が?」

「それが面白くないはA子だ。」

「なぜにA子ちゃんが?もしやA子ちゃんも男アイドル君の事を本気で?」

「バカちがうよ!A子が好きだったのは、B子だよ!」

「え?ま、ちょ!」

「ここに三角関係が成り立つ。男アイドルはA子が好き、A子はB子が好き、B子は男アイドルが好き。」

「もう分からないです。時代が分からないです。僕は何を信じたらいいか分からないです。」

「A子は男アイドルが女好きっていうのは知っていたんだそうだ。・・・あくまで瀬能さんの話だぞ?

A子はB子の事が好きだ。A子の性格からしてB子に気持ちを伝えてあり、交際しているかは分からないが、同じグループっていう事もあり、普段からB子の世話を焼いていたという話だ。ところが、男アイドルがB子にちょっかいを出してきた。もちろん男の方は遊びだ。でも、B子が男アイドルに本気になってしまったんだ。

面白くないのはA子だ。そうだろう?B子の事が好きで好きで世話を焼いているB子が他の男にコロって行ってしまったんだ。女のプライドもあったんだろう。男に寝取られて余計に女のプライドが傷ついた訳だ。

男アイドルは次のターゲットをA子にする。明らかにB子よりA子の方がタイプだった。A子は男アイドルが自分にアプローチしてきた時、チャンスだと思った。

B子の目を覚まさせるチャンスが来たと。この男は、どんな女にも見境が無いクズで、B子は遊ばれているだけだ、と。

いくらA子が説得しても、A子の気持ちはB子には届かない。B子はA子の事が煩わしかった。B子が好きだったのは女ではなく、男だったからだ。

A子と男アイドルのスキャンダルを、流したのはB子。

瞬く間に、A子は芸能界を引退。邪魔者は消えた。」

「・・・A子ちゃん、悪くないじゃないですか!」

「B子にとって邪魔なA子が消えた。後はゆっくり男アイドルを堕とすだけ。本当に妊娠したかどうかはB子本人しか知りえないが、妊娠したと伝え、男アイドルに関係の清算を求めた訳だ。」

「でも、どうして、B子ちゃんとのスキャンダルで、男アイドル君は芸能界を引退させられるハメになったんですか?」

「A子だよ。B子の逆だ。B子との関係を売って、男アイドルが芸能界にいられないようにしたんだ。男アイドルは他の女アイドルを食い散らかしているから、ネタには困らない。所属事務所だって素行の悪い奴を置いておいても何のメリットもないしな。直ちに引退させた方が事務所としてもダメージが少ない。男アイドルは所属事務所からも、芸能界からも消されたんだ。

A子は本気で、男アイドルとB子を別れさせたいし、B子と一緒にいたい、何ならよりを戻したいと思っている。

B子はB子で、本気で男アイドルと一緒になりたいと考えている。芸能界にも未練が無い。

こうなってくると、本当の被害者は、男アイドルかも知れないって考えられなくもないか?」

「・・・。そうですね。女同士の愛憎劇に、翻弄された哀れな男、という見方も出来なくはない、気もします。」

「哀れなチンポだよ。・・・女の方が何倍も怖い。恐ろしい。恐ろしい。

瀬能さんが、泣いていた理由を、少しは理解できたか?」

「ええ。若干。裏でいくら女癖が悪くても、女遊びが過ぎても、表舞台でアイドルとして満点だったらそれが我々が知る全てですし。しかも、大好きなアイドルが、悪い女の陰湿さによって、アイドル人生を絶たれてしまったら、泣くしかないですよ。彼、そんなに悪くないですよ。」

「百合地獄。」

「・・・よく分からないですけど、百合地獄って言うんですか?これ。」

「A子にとったら、宿敵である男アイドルを芸能界引退で道連れ。死ねばもろともだ、一緒に地獄に行くっていう。」

「B子ちゃんどうするんでしょうね。やっぱり辞めちゃうんでしょうか?」

「どうだろうな。

瀬能さん、A子B子がいる芸能事務所から、株主優待券みたいな特別待遇の権利をもらったって言ってたな。」

「あれだけ買えば。そうでしょうね。」

「それもそうなんだけど。A子のスキャンダルの時、瀬能さん、A子のグッズやら何やら買い占めたって言ったよな。A子ファンの嫌がらせに。A子の芸能事務所にしてみれば、落ち目になったアイドルのグッズを買い漁ってくれた神に見えたんだと思う。財力にもの言わせた嫌がらせが、天の助けになろうとはな、皮肉なもんだぜ。瀬能さんのおかげで、A子バッシングは収束し、グループへの被害は最小限で留まった。世の中、どこに災いするか分からないもんだよな。」

「十分、瀬能さんも怖いですけどね。A子ちゃんB子ちゃんと違うベクトルで。」

「A子のグッズを転売しようとしたらしいんだが、値段が全くつかなくて、踏んだり蹴ったりだってよ。だから、瀬能さん、色々感情が追いつかなくて、泣いていたみたいだな。」

「同情できない自分がいますが。」

「三島、俺、男アイドルが見境なしに、女のアイドルやら芸能人を食い散らかしていたって言ったよな?」

「・・・女なら誰でも良いって言う男もいるのは事実ですし。」

「それが若干、違っていたんだなぁ。これが。これ、男アイドルが、自分のファンに向けたグッズ。女のファンはこれを被ってコンサートに行くらしい。これを被っている事が男アイドルのファンの証なんだそうだ。」

「ああ、そうなんですか。このヘアバンド。これ、A子ちゃんのグッズじゃなかったんですね。段ボールに入っていたからA子ちゃんグッズかと。」

「男アイドルが引退しちゃったから、用が無いから捨てるんだと。

この男アイドル、ヘアバンドをした女に並々ならない執着があったらしい。A子がスキャンダルで撮られた写真がこれ。B子がこれ。な?」

「・・・。二人ともヘアバンドしてます。」

「偶然じゃなかったんだ、これ。そういう性癖なんだよ、こいつの。ヘアバンドをしている女じゃないと萌えないってな。女のファンにも強要してたし、食った女タレントにも強要してた。ま、B子は逆手に取って、ノリノリでしていたんだろうけどな。

あしながオバサンも例に漏れず幾つもヘアバンドを所持していたし、多額の課金もしていた、そうなれば嫌でも男アイドルの注目を浴びていたんだろうなぁ。」

「それってもしかして」

「ファンにも手を出すんだろ?

男アイドルは芸能界を辞めちゃったんだ。どこで会おうと自由だろ?もう一般人だし。

ただ、あしながオバサンが好きなのはアイドルとしての男なのか、それとも、ただの人になった男なのか、どっちなんだろうな?」


※本作品は全編会話劇です。ご了承下さい。

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