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ご都合主義です。設定もふわっとしてますのでそれでも良い方のみで

「セリーナ愛してる…」

「アーロン殿下!わ、わたくしも…」


それはお慕いしている婚約者様が我が家に来ていると知り、完成したばかりの刺繍入りハンカチを届けに行った時に目に入った光景。

我が家の庭で男女が抱き合っている。私の婚約者の王太子殿下アーロン様と姉であるセリーナが愛の言葉を囁きながらお互いを確かめ合っていた。二人の口付けを見た瞬間、ああ私は邪魔者だったのだと理解した。





私はリーオル王国の公爵令嬢三女のシャノン・アーウィン。リーオル王国は気候も良く国民も穏やかで隣国との揉め事もなく平和な国。そんな国の貴族令嬢である私はとても穏やかに過ごしていた。

そして私には大好きな婚約者がいるこの国の王太子であるアーロン様だ。アーロン様は私と同じ歳である17歳。年齢が近いと言うことで選ばれた私だがとても幸せだ。初めて会った時に一目惚れしてお慕い続けている。

あれはまだお互い8歳のときアーロン様の婚約者探しのためのお茶会が開かれた時に歳が近く高位の貴族であった私も招待された。


「初めまして、アーロンだ。わたしはこの国のために尽くしたい。そんなわたしに寄り添ってくれる方を探している」


私と同じ歳とは思えないほどしっかりした受け答えに胸がときめいた。ご尊顔を拝すると漆黒の髪にブルーサファイヤの様に深い青色の瞳。鼻筋が通っていて鼻が高くまつ毛も長く全体的な均衡が取れている。一目で恋に落ちた。


「あ、あの私はシャノン・アーウィンと申します…」

「あらあら照れているの?先程まで元気にお茶菓子をいただいていたのに」

「お、お母様!!」

「あはは。お菓子は美味しかったか?」


先程まで令嬢の作法を何処かに投げ捨てていたことを母に暴露されて焦る。なんてことを言うんだと睨む私をよそにお母様はこれからはいつ見られても大丈夫な立ち振る舞いをしなさいと耳打ちされた。



それから礼儀作法を必死に学び勉学にも取り組み2年後にアーロン王太子殿下の婚約者の座を掴んだ。嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。それからアーロン様と敬称を外した呼び方を許されて…私はずっと舞い上がっていた。

それから一ヶ月に2、3回我が家か王宮でのお茶会でアーロン様と交流をした。もちろんそれ以外の日は王妃教育に勤しんだ。


私達が15歳のある日、アーウィン公爵家の庭でお茶会をしていた。私はアーロン様に日頃の感謝を込めて刺した刺繍入りのハンカチを取りに行った。お茶会の時に持って行こうとして忘れてしまったのだ。自分のうっかりにため息を吐きながらハンカチを持って戻ってくるとアーウィン公爵家の次女で姉であるセリーナと談笑していた。

セリーナ姉様はとても美しくプラチナブロンドに新緑の色の瞳。ぱっちりしていてまつ毛も長く儚げな印象をも持つ。ちなみに私はこの国によくいる茶色の髪にヘーゼル色の瞳だ。特に瞳も大きいわけでもなく普通である。家族からは愛嬌があって可愛いと言われるがそれまでだ。確かに悪くないが姉と比べると劣るなと言う印象が拭えない。もう一つ言うと長女も美しい。なぜ私だけ冴えないのか謎だが生まれ持った物なので受け入れることにしている。

それはそれとして話を戻すと次女であるセリーナとアーロン様がお話ししている姿は絵になる。しばらく眺めていると二人は私の存在に気付きすぐに私の場所を開けてセリーナ姉様は退席した。


「お姉様とても美しいでしょう?自慢の姉です」

「ああ。そうだな…」

「そうそう!これアーロン様に日頃の感謝をと思いながら刺しましたの。よかったら受け取ってもらえませんか?」

「ハンカチかありがとう」


私の差し出したハンカチを笑顔で受け取り刺繍を褒めてくださる。嬉しくて嬉しくて私はその時のアーロン様の目線に気付かなかった。

アーロン様がセリーナ姉様が去っていった方をずっと眺めていたことに。


その日から度々セリーナ姉様もお話しに混ざる様になった。大好きな婚約者と大好きな姉と3人で楽しくおしゃべり出来ることが純粋に嬉しかった。


「シャノン様いいんですか?」

「え、何が?」


私がお化粧直しにと席を立って戻ろうとした先にアーロン様の護衛騎士であるルイス・ウィルソン子爵令息が話しかけてきた。


「無礼なのは承知でお話しいたしますが…自分の婚約者と他の女性が話しているという状況のことです」

「え?でも女性と言ってもセリーナ姉様よ?」

「それでも!!アーロン殿下にとってはただの女性です」

「大丈夫よ!二人のことはよく分かってるわ」


そう笑うとルイスは下を向いてボソボソと何かを呟いた。


「オレは…オレは貴女に悲しい思いはしてほしくないのに…」

「?」

「な、なんでもないです!行きましょう…」


この時のルイスの忠告をしっかり聞いていたら結末は違ったのだろうか…。




そして17歳のある日アーロン様が来ている侍女から聞いて刺繍入りハンカチを持ってアーロン様の待つ庭へと向かう。しかし見当たらず辺りを見回していると同様に困ったように周辺を伺うルイスを見つけた。


「ルイス…アーロン様は?」

「あ、シャノン様!それが見失ってしまって…騎士失格です…」

「ふふっ。この家に危険はないから大丈夫よ。一緒に探しましょう?」

「はい!」



そうして二人でアーロン様を探していると薔薇がたくさん植えてある場所に辿り着いた。そこに私が探していた大好きな人の後ろ姿が見える。声をかけようとしたその時もう一人奥に人がいることに気付いた。セリーナ姉様だ。二人で何してるのだろうと思いつつも再び声をかけようとしたその時…



「セリーナ愛してる…」

「アーロン殿下!わ、わたくしも…」



二人は惹かれ合うように抱き合った。見つめ合い口付けも交わしている。


「で、でもアーロン様はシャノンの婚約者です…今日で最後にしなくては…」

「…私は…私は…セリーナ…お前が…」

「だめです!!私たちは…」



ああ、私は二人の恋路を邪魔する存在なんだなと瞬時に理解した。

私は…私は…。

このまま見なかったことにして去るべきか…と足を後ろに向けようとした時カサッと足音を立ててしまった。

その音に二人がこちらを向いて私とルイスの存在を認識する。二人は驚愕した表情をするが驚愕しているのはこちらも同じ…。もう一人のアーロン様の護衛は気まずそうな顔をしている。今私は…私がするべきことは…。


「これはどう…」


ルイスが怒気の孕んだ声で二人に詰めかけようとするがそれを手で制す。


「お二人は愛し合っているのですか?」


私の問いに二人は一瞬下を向くがすぐにアーロン様は顔を上げて私に言う。


「ああ。私はセリーナを愛してる。ただ一人セリーナを…」

「アーロン様っ!!」


先ほども思ったがいつの間にセリーナ姉様はアーロン様を敬称抜きで呼んでいたんだろう。私といる時は殿下と呼んでいた。ああ、これが答えか。



「そうですか…私とセリーナ姉様は姉妹。姉と妹が変わるくらいきっと王家側にも我が家側にも大した問題はないでしょう。ですので私婚約者の座から降ります」

「シャノン様!?」


私の言葉に驚いた声を上げたルイスに首を横に振り黙らせる。


「やはり愛し合う二人を引き離すのは私も嫌ですので」

「シャノンは…良いのか?」


アーロン様は私を心配気に見るが気遣ってくれる心が少しでもあるならいい。私はそれだけで大丈夫…だからもう少しの我慢。


「はい!私は大丈夫です。お気になさらず…私殿下の婚約者でいられたことを誇りに思います。それではお父様方に婚約者変更を申し出て来ますので…」


そう言って私はその場を離れた。ルイスが付いてきている気がする。貴方は殿下の護衛なんだから付いてきてはダメでしょう?でも誰かが追いかけてきてくれるのが少し嬉しくてありがたかった。





「そうか…セリーナと殿下がか」

「はい…ですのでお二人を…」

「シャノンはそれでいいのか?」


お父様とお母様は私の報告を聞いてやはりと言う顔をしていた。知らなかったのは私だけだったようだ。


「はい。もう決めましたし二人にこうするよう言いましたので…」

「…」


お父様は苦しそうな顔をして分かったと了承してくれた。

お母様は私を抱きしめてくれたが私は泣くわけにはいかない。二人には私がアーロン様を本気でお慕いしていたことはばれているだろうが少しでも悲しんでいることを悟らせないように…。


「それではお二人に報告しに行きますね」

「それはこちらでしておくから部屋へ戻りなさい」

「…はい」


今日はもう二人に会いたくなかったのでありがたかったのでお父様の言葉に従った。

お父様の執務室から出るとルイスが私を迎えてくれた。貴方殿下の護衛でしょうに…。


「シャノン様…」

「へ、部屋に戻るの…」

「そうですか…送ります」

「いいわ。侍女を呼ぶもの…」


私はルイスに適当な相槌を打って部屋へと向かう。その間もルイスは付いてくる。

部屋にたどり着く前にルイスが私の手を引いた。


「シャノン様…このまま全部飲み込むつもりですか?ダメですよ。そんなのシャノン様が壊れちゃいます。だから…」


そう言ってルイスは私の手を引いてこの屋敷に住んでる私でもあまり来ない様な裏庭に連れてきた。そこは大きな木が生えていて気持ちの良い木漏れ日が差し込んでいる。こんな場所あったのか…そしてなぜ彼は知っているのだろう。


「殿下とシャノン様がお茶会している間に探検して見つけたんです。綺麗な場所だなって」


もちろん殿下にも公爵家の方にも許可を取りましたし護衛も人数の余裕のある時に!と付け加える。


「ここは公爵家の方達もあまり来ないそうなんです。シャノン様…ですから溜め込まないでください…」


ルイスが私にそっと触れる。後ろ向いてますから…そう言って背中を貸してくれた。今優しくされたら…せっかく我慢したのが全部台無しじゃない…でも涙が溢れてきて私は泣きじゃくった。


「私…私も!!好きだったに…ずっと頑張ったのに…うぅうっ…」



ルイスは私が泣き止むまでそばに居てくれた。

久々の投稿です

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