第3羽
「……ぴ?」
耳元で聞こえた愛らしい声に私はハッとした。
そうだった。
私の肩にはかわいいかわいいぴーちゃんが乗っているんだった。白くて丸っこくてもっふもふのぴーちゃん。前世の世界にいた〝雪の妖精〟シマエナガにちょっとだけ似ているかわいいかわいい小鳥のぴーちゃん。そんなぴーちゃんを肩に乗せてる私は最強なので闇落ちなんてする必要はない。
フフン! と胸を張り、再び理不尽な世界の権化のようなクソ社長とクソお局様に向き合う。
報告しても連絡しても相談しても何してもムダのムダムダ。反論しようにも都合の悪い部分は大声でかき消してくる。聞く耳なし。問答無用で問題の全責任を私に押し付けようとしてくる連中しかこの会社にはいないのだ。
ムダなことに時間を割くのはやめてとっとと問題を解決し、とっととこんなクソ会社とクソ社長とクソお局様とおさらばした方がいい。私の精神衛生的にもとってもいい。
「イベント一週間前には頼んでたチラシが届いててぇ、街頭で可愛い着ぐるみに配ってもらう予定だったのにさぁ」
「着ぐるみの手配なんて聞いてませんが?」
「それなのに着ぐるみの手配をしていないどころかチラシもないなんてさぁ、どーするんだよぉーーー」
「どうにかしなさいよ、パトリシアさーーーん」
「……」
「……ぴ」
イラッとすることこの上ないけれどここは我慢だ。かわいいかわいいぴーちゃんを肩に乗せてる私は最強。闇落ちなんてする必要なし。舌打ちと退職届アタックはぶちこむつもりだけどそれは今、この場ですることじゃない。
だって――。
「チラシ、間に合わないの?」
「私たちがバザーをやること、誰も知らないっていうこと?」
子供たちが私たち大人を不安げな表情で見上げているから。